第8話 サトリ

      サトリ



「こいつが魔獣って奴か!」


 灰色で、体長は2mくらい。だが、俺達の世界の狼とは、大きく異なる部分がある。

 なんと、目が4つもある! 更に、口から大きくはみ出している、6本の牙!


 俺は、左腕で防御しながら、すぐさまサヤの前に踊り出る!


(この程度なら防げるでしょう。ですが、あまりにも連続で攻撃を受けると持ちませんよ! あと、そうですね、数十頭はいますから)


 げっ! そんなにも!


「サヤさん! 後ろにも気をつけてくれ! 前から来る奴は、俺が身体を張って防ぐ! ってこれは無理か?」


 左右の木陰からも数頭ずつ出て来やがった!

 後ろを振り返ると、彼女も俺に背を向けながら、腰の刀を抜き、やはり4頭の狼もどきと対峙している!

 しかし、彼女は俺と違って、落ち着いているようだ。


「あたいは陰陽の里の者っす! そして、この人は、里の客人っす! そのあたいらに、一体何の用っすかね?! あたいら、あんたらの邪魔はしていないつもりっすけどね」


 え? サヤさん、こいつらと会話ができるの?


(どうやらそのようですね。それに、この者達からは、今のところ、敵意が感じられません)


 え? そうなんだ?

 確かにこいつら、完全に俺達を取り囲んだにも関わらず、特に襲ってくるそぶりはない。

 俺が呆気に取られていると、前方の茂みから、一際大きな奴が姿を現す。


 4mはあるか? 銀色に輝く美しい毛並み。

 こいつが群れのリーダーか?


 そいつは、俺の前に進み出て来た。

 他の奴は、牙をむき出しながら、俺達の周囲を用心深く、ぐるぐる周っている。


「陰陽の者よ、確かにそなた達とは、古よりの契約により、お互いに不干渉。しかし、先程その契約は破られたでの! 我らが一頭が、人の手によって屠られたわ!」


 なんと、喋りやがった!

 少ししゃがれた、老婆って感じの声だ。

 まあ、異世界だし、こいうのもアリという事か。


 だが、これで少しだが、こいつらと人間との関係は理解できた。

 しかし、こいつのこの言い方じゃ、いつ襲われてもおかしくない!


「灰狼族の長とお見受けするっす。そ、それは失礼したっす。でも、やったのはあたいらじゃないっす! アラタさんもやってないっすよね?」

「当然だ! こんな四ツ目狼、生まれて初めて見たぞ!」

「そんな事はどうでもよい。問題は、このままでは我らの気が済まない、ということでの」

「そ、それは当然っすよね。でも、今までそういった場合、里の者が協力して、犯人が特定できたら、あんたらに引き渡すしきたりっすけど」


 ふむ、国同士の、犯罪人引渡条約のようなものか?

 こいつら、しゃべる事といい、契約するとか、かなり知能の高い連中のようだ。

 ふむ、魔獣とは、そういう種族なのか。


(いえ、この者達は、もはや魔獣とは呼べませんね。そしてこの気配は?)


 ん? なんか引っかかるが、今はそれどころじゃなかろう。

 長と呼ばれた銀狼が返事をした。


「だが、それで今までに、全ての犯人が引き渡されてはおらぬよな。なので、我も考えたでの。そう、最初に見た人間を無条件に殺す! これならお互い、無駄な時間と労力を割かずに済むのではないか? 当然そなたらも、もし我らが同様の過ちを犯せば、遠慮なく我らが一頭を殺せばよかろう」


 げ!

 これ、ひょっとしてかなり不味いのでは?

 俺の世界なら、戦争の一歩手前?


「で、あたいらが、その生贄って事っすか? 納得できないっすね! 里に帰って、里長と話をさせて欲しいっす! あんたらの気持ちも分かるっすから、あんたも里長と話せばいいっす!」


 うん、まずは話し合いだ!


「だから、それが無駄な時間と労力と言っておるのよ! さあ、選べ! その禍禍しい気を纏いし者よ、そなたに決めさてやろう。さあ、その女と貴様、どちらが我らの贄となる?」


 ぬお?

 ふむ、禍禍しい気ってのは、多分俺の左腕の事だろう。

 なら、俺が決めろってか?


(アラタ、これはこの娘の里の事情です! 貴方は関係ありません!)


 それは、そうなんですが……。


「なら、俺を殺せ! できれば、痛くないように殺して欲しいかな」


 うん、当然の選択だ。

 俺は死ねないからな。

 だが、思った通り、サヤに拒否される!


「それも聞けないっすね! これは、あたいら里の人間の問題っす! アラタさんは里の者じゃないっす!」

「じゃあ、サヤさん、貴女がその命をこいつらにくれてやるのか? 貴女はそれでいいのか?」

「そ、そら、あたいも死にたくはないっす。でも、今の状況、分かっているっすか?! ここでこいつらとやり合っても、絶対に負けるっす! アラタさんがどれだけ強いのか知らないっすけど、この数じゃ、逃げる事さえ不可能っす!」


 そこで、俺の目の前の銀狼が口を挟む。


「そうよの。だから、さっさと観念して、どちらか選ぶがよい!」

「だから、俺だって言っている! ところで、そうなった場合、彼女は見逃がしてくれるのか?」

「当然よの。我らも約束は守るでの。その人間が攻撃せぬ限り、我らも絶対に手は出さぬ」

「なら問題ないな。逃げろって言っても、聞いてくれそうにないしな」


 俺は振り返り、一瞬戸惑うサヤの肩を、左手で軽く叩く。


「ぶぎゃっ!」


 彼女はその場に崩れ落ちた。


「先生、大丈夫ですよね?」

(ええ、丁度良い加減でしょう。気を失っただけです)


 ほっ。


「じゃあ、始めるか。見ての通り、彼女はもう無力だ。俺に加勢する事はありえない。なので、やるなら俺だけにしてくれ。もっとも、当然、簡単にやられる気はない! 無実の罪はもう沢山だ! なので、そっちがその気なら、お前等全員、何度死んででも、狩り尽くすつもりだがな!」


 俺は両手で鉈を握りしめ、巨大な銀狼を睨みつける!


(その覚悟、いいでしょう! ですが、やはりこれは…?)


 ん? 奈月先生は少し迷っているようだ。

 だが、こうなったら、やるしかあるまい!



「ま、待て! 我らはそなたを見極めたかっただけじゃ! そして、それはもう済んだ! 我らも、不要な争いは望まぬ!」


 その巨大な銀狼は、俺の目の前で、いきなり伏せた!

 周囲の四ツ目狼も、それを見て、一斉に伏せる。


「ん? どういうこと?」


 目的は俺を見極める?

 俺とこいつは初対面のはずだが?


(私も面識はありませんね)


「そうよの。先ずは我らが非礼を詫びねばならぬかの」


 銀狼はそう言うなり、いきなり腹を上にして転がった!

 他の狼共も、一斉にそれに倣う!


 ふむ、犬のごめんなさいポーズか?

 かなり焦ったが、数十頭が同時にやると、かなり壮観だな。


「あ、あの、何が何やら分からないんだけど、どうやら俺を殺す気も無いようだし、むしろ謝ってくれているようだ。なので、もういいよ。それより見極めるって何?」


 すると、全ての狼が、一斉に起き上がり、また伏せる。

 う~ん、やはり壮観だ! 一糸乱れぬとはこの事だな。

 下手なアイドルグループよりできるな。って、関係無いか。


 そして、銀狼が話し出す。


「やはりセイメイ様の言った通りだったの! 『人の心を持った魔王がこの地に降臨する』、正に為ったの! あ、済まぬの。先ず、我の名はサトリ。これはセイメイ様より頂いた、ありがたい名での。我も気に入っておる」


 ん~? 未ださっぱりなんですが?

 しかし、セイメイって名前、聞いたことがあるような?


(その娘も言っていましたね。伝説のセイメイ様と)


 俺は、今までの会話を思い出す。

 オンミョウシキ、フジュツ、セイメイ……。


「ひょっとして、セイメイ様って、かの大陰陽師と言われた、安倍晴明あべのせいめいっ?!」

(間違いないでしょう。私も、今思い出しました。この世界を統治する為に赴いた、神々の一柱です)

「ほほ~、そなたも存じておったか。流石は清明様じゃの。しかし、あのお方は600年前に、我らと人間に多大な恩恵をもたらした後、先の予言だけを残し、お隠れになられた。今は何処におられるのやら」


 しかし、神々の一柱って?

 歴史上の、実在した人物のはずでは?


 そして、この四ツ目狼、それが本当なら600年以上生きているのか?

 正しく化物だな。


(あの方は、アラタの居た、あの世界にも関わらず、陰陽術ということわりをもって、人間の精神波動を操る事、分かり易く言えば、魔法を極められました。結果、死後、神々の末席に名を連ねたのです)


 ふむ、良く分らんが、とにかく凄い人だったようだ。

 そして、なんとなくだが理解できた。

 要は、600年前に新米神様だった清明さんは、このごみ捨て場とやらを統治しに来たと。

 道理で日本語が通じる訳だ。


(言い方はあれですが、その解釈で間違ってはいないでしょう。そして、我々にも、この世界に降りてからの、あの方の消息は不明なのです)


 ふむ、納得だ。

 そういや、閻魔大王も、アベちゃんとか言ってた気がする。


「それは分からないらしい。なので本題だ。あ、俺は近衛新このえ・あらた。アラタでいいよ。それで、貴方達は俺を見極めるとか? そもそも、さっきのあれは何? あれじゃ下手したら……」

「だから謝っておる! 我にはあの手段しか、そなたを見極める方法を思いつかなんだでの。そして、その結果、そなたには人の心があると証明されたでの。邪悪な『魔王』ならば、あの場では、その人間を見捨てるか、問答無用に戦闘になっていたか、何れかだったはず。しかし、アラタ殿はその人間を庇い、自らの命を犠牲にしようとした。我にとっては、それで充分での」


 う~ん、魔王ってのは解らないが、どうやら俺は合格のようらしい。

 だが、こいつは一つ勘違いしているな。

 俺の命は軽い! サヤのように、たった一つでは無い!


(アラタ! そこまで己を卑下する必要はありません! 貴方は今まで通り、その命、一つ一つを大事に生きなさい! そして魔王とは、アラタとは似て非なる者です。魔王は『人』ではありません。『人』として生まれましたが、人を超えてしまった者です。彼等は『人』を殺す事に抵抗がありません)


 おわ! また説教を喰らってしまった。しかし、自分では、俺が死ねば輪廻が早まっていいとか言ってた気がするが?


(それは、貴方はこの世界でも未だ修行の身です。なので、自ら己の命を粗末にするのには感心しません。しかし、己の身を犠牲にして他人を守るというのは、立派な行いです)


 ふむ、そこは納得だが、これだけでは不十分だ。

 似て非なるとは? 確かに俺は既に人殺しだ。だが、人を殺して平気では無い、と、自分では思うのだが?


 そこまで脳内で会話していると、銀狼が割って来た。


「ふむ、背後の者か。我も気付いておる。清明様と少し似た気配かの? 良ければ名乗って欲しいの」


 げ! 先生の存在までばれていると。


「私の存在に気付けるとは、相当な魔力のようですね。流石は清明さんと所縁があるといったところでしょうか? そして、私の名は奈月先生。今はそれだけです。そして、サトリ、まだ私のアラタへの、『魔王』の説明が済んでいません。続けてもいいですか?」


 まあ、ばれているのなら隠す必要はないか。

 俺も、直接声に出してくれるほうが、違和感が無くていいしな。


「それは失礼したの。奈月先生とやら、続けられよ。我も助かるでの」

「では。アラタ、貴方は肉を食べますよね」

「はい、好きだと思います」

「では、その肉の元となる命を奪う事に、躊躇いはありますか?」

「そ、それは、あまりないかもです。もっとも、食事は常に感謝しながらしろと教わってきましたが」


「ええ、『人』はそれで良いのです。己が生きる為に、他の命を奪う。恵みへの感謝の念を忘れてはいけませんが、これは仕方のない事なのですから。そして、『魔王』はその感覚で人間を見ています。彼等にとって、『人』とは、もはや違うことわりなのです。そういった意味では神々もそうなのですが、神々とは対極の者です。彼等はどこまでも邪悪で身勝手です。なので、『人』を殺す時に、そもそも感情等発生しません。当たり前のように殺すのです」


「ぐはっ! 正に、正真正銘の悪魔だな!」

「ええ、その解釈でいいでしょう。そして、そう思える貴方は『魔王』ではありません」

「そうよの。そして、それこそが、清明様が予言に託された存在よ。アラタ殿の一部には、以前我が出会うた、『魔王』と全く同じ、邪悪な塊を感じるからの」


 あ~、やっぱり俺の左腕が原因な訳ね。


「はい、アラタの左腕には、魔王と同じ、数多の『人』の怨念が取り憑いています。ところで、アラタ、『魔王』とは、元々人間だった者です。ここで気付きませんか?」


 ん?

 元々は人間。なのに、人を殺しても何とも思わない……。

 そういう人とは……?


「分かりました、先生!」


 俺は思わず、勢いよく手を挙げてしまった!

 う~ん、やっぱ俺にとっては先生だな。


「はい、アラタ君! って、私はその先生ではありません!」


 ぐはっ! その割には先生も乗っていた気がするが。


「答えは、独裁者! 違いますか?」


 うん、これくらいなら俺でも分かる。

 過去、それこそ何人もの独裁者が居た。

 そして、彼等の中には、大量虐殺を犯した奴も多い。誰だったか忘れたが、酷いのは数千万とかだっけ?

 正に、息をするように人を殺したのだろう。そいつらに、人を殺す時、躊躇いがあったとは思えない!


「そう、彼等の前世は、大半が一身に権力を握った者です。彼等には、それこそ数えきれない程の怨念が取り憑きました。しかし、もはや、彼等は完全に人の枠を超えてしまった存在。そのような魂、当然輪廻させることも不可能ですし、地獄でも引き取れません。もはや、『人』ではないのですから。結果、これを言っていいのか分かりませんが、神々は、この世界に彼等の魂を、その取り憑いた恨みごと転移させたのです!」


 ぶはっ!

 絵に描いたような厄介払いだな。

 うん、閻魔大王の言っていた、『ゴミ捨て場』ってのが、これで完全に理解できた。

 そして、今までの先生の言葉にも納得だ!


 そう、さっき殺した連中は、その『魔王』とやらの、一歩手前だったと!


「ええ、その通りです。なので、彼等には、貴方のその左腕も、それ程効果が無かったのです。魔王は『人』では無いので、当然、『人』の恨み等、効果がありません」

「なんか、凄い話ですね。それで先生、そこに俺がどう関わるのですか? 確かに俺の左腕は、見方によっては、その魔王とやらと同じですが?」

「そ、それは私にも分かりません。これも、今思い出しただけですし。私の主な目的は、アラタを再び輪廻させることだけだったと思いますし。サトリ、貴方は清明さんより、何か聞いていますか?」


 なるほど、奈月先生も少しは記憶が戻ったと。


「ふむ、奈月先生とやら、やはりそなたも特別な存在のようだの。しかし、我も今の話は初耳での。ふむ、清明様より聞きし魔王とは、邪悪なだけの存在かと思っておったが、そのような者であったか。しかし、清明様は、我に予言を託されたのみ。正直、我も予言の者を見つけた後の事は、全く考えておらなんだのよ。ただ、アラタ殿は、絶対に失ってはならぬ存在、という意味だと我は想像するがの」

「ええ、私もそんな気がしてきました。依然として、神々の真意ははかりかねますが」

「どうやら分からない事だらけのようだけど、サトリ、良ければその、清明様との事から教えてくれないかな? それと、人間との契約とかも。あ、後、今までのサトリの口振りでは、『魔王』に会った事があるよね。そういった事も話してくれれば、何か分かるかもしれない」


「そうよのう……」


 サトリは丁寧に説明してくれた。


 600年ほど前、安倍晴明が降臨した時、この地はまだまだ未開の地。

 様々な種族の獣と魔獣が勢力争いを繰り広げていて、そこにようやく人間が参加し始めた。


 当時、まだ非力だった灰狼族のサトリは、人間と争っても、お互い得にならないと気付き、単身、人間の里に行き、交渉を持ち掛けようとした。


 そこに居たのが、清明とのことだ。


 まだ人間の言葉を理解できなかったサトリだが、すぐに清明はサトリの真意を理解し、快諾してくれたそうだ。

 そして、その時に清明より名前を授かり、更に、人間の言葉を喋れるようにしてくれたとのことだ。


「なるほど。まさに理想の神様って感じだな~。そして、サトリも凄いな。たった一人で交渉しようだなんて」

「そうよの。後で考えれば、無謀以外の何物でも無かったがの。しかし、おかげで我ら灰狼族は、人間とは争わずに済み、今の栄華を誇れた訳よ。今やこの近辺で、我らと渡り合える種族はそれ程無いでの」


 サトリは頭を起こし、胸を張る。


「それで、清明さんのその後は?」

「問題はそれよの。清明様は、暫く我らとも過ごした後、先の予言を残され、お隠れになられたのよ。我らも必死に探したが、その足取りは掴めなんだ。それは、里の人間も同じようだったがの」


 ふむ、人と話せるサトリなら、人間にも聞いて回ったのだろう。

 しかし、これじゃ手詰まりだな。俺は、もしかしたら、サヤの里の人ならばと、一瞬思ったのだが。

 まあ、相手は神様だしな。ひょっとしたら、今、すぐ側でこの話を聞いている、なんてのもありそうだが。


 そして、サトリは更に続ける。

 そう、以前、サトリが出会ったという、『魔王』の話だ。


 それによると、安倍晴明がサトリ達の前から姿を消したので、サトリはその、『予言の者』をひたすら待ち続けた。

 そして数百年後、ついに清明の言っていた、邪悪な存在、即ち『魔王』を見かけたと言うのだ。


 そこで、いきなりサトリの話し方が、今までの冷静な口調から一転した!


「偶々、西の地へ行った時での。最初見た時は、我も、我が目を疑うたわ! 全部で数千人くらいかの? だが、問題はその数では無いでの! 何せ、里の者が住むような、家そのものが道を進んでおったからの! そしてあれは、おそらくは人間の言う、奴隷よの。百人程の人間が、その家を支えながら歩かされておったわ! 遠くからでも分かる、邪悪な気配と共にの! 流石の我も、あの者達に近づく気にはなれなんだ。そう! あの時我は確信したわ! あの中に居た者こそ、清明様の言っておられた、『魔王』よ!」


 ぐはっ!

 そら確かに、『人では無い』、と言われて当然だ!


 サトリも直接は見ていないようだが、その家に住んでいた奴に、人の心があるかどうか等、確かめる必要は無かっただろう。


「うん、ありがとう。おかげで、魔王って奴の事はかなり理解できたよ。だけど、清明さんが何故俺の事を予言したのかは、さっぱりだな。でも、何らかの意味はありそうだ。俺としては、この左腕の呪いを手っ取り早く解く、何かヒントみたいなのを期待したんだけど」

「そんな方法があれば、最初からアラタはここには居ません! 何故こうなっているか、少しは理解しなさい!」


 ぶはっ! 

 また叱られてしまった。


「ふむ、アラタ殿の身体は興味深いのう。その身体の一部、あ奴と同じ、邪悪な気配を纏っておるのに、アラタ殿自身は邪悪では無い。何故そのような?」


 ふむ、サトリなら、サヤと違って理解してくれるだろう。

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