第4話 美少女怪盗・In the Show time

「天野さん、この噂は聞いたことある?」

「噂…ですか?」

「魔法少女の間で噂になっているという情報よ。近頃、怪盗のような格好をした魔法少女が夜にだけ現れるらしいわ。」

「夜に現れる…怪盗!?」

今日に呼び出されて知ったことだから何が何だかさっぱりだけど、怪盗が現れるってどういうことなんだろ…

「怪盗っていってもフリをしてるだけで別に何か盗んだりとかそういうのはないみたいね。」

「もしかして先輩、私達が実際に確かめるとかそんな感じ…」

「えぇ、もちろん確かめるわ。」

決断が早っ!!

「怪盗のような身なりでも魔法少女であることには変わりないわ。魔獣が現れるところに行って調べるだけよ。」

そして結局、魔法少女チームと共同で行くハメになった…まぁ確かに気になることは気になるんだけど…


ーその夜ー


「魔獣が出現したわ。」

「ま、まだ私戦闘慣れしてないんですけど…」

「戦いに慣れろとは言わない。慣れすぎると「彼女」みたいになりかねないから。」

彼女って…マリル・ディーゼのことなのかな?

「さぁ、行きましょう。」


ー大通りー


「ブモォォォォーーー!!!」

「今度は牛…の魔獣?」

前に見たトカゲの魔獣より不気味ではないが、明らかに凶暴そうな見た目に唸り声を上げている。

「「「ダイヤブレイク!!」」」

『アクア…!!』

『ルナ…!!』

『ミスト…!!』

「わ、私も…!」

ガチャン!

「ダイヤブレイク!!」

『ダイヤブレーイク!!ブレイズ…!!』

私もすかさず魔法少女に変身して魔獣に立ち向かう。先輩方は慣れているのかこの戦闘はすぐに片付きそうだった。

「はぁ!」

ザシュッ!

「ブルモォォォォ!!!」

「うわっ!」

斬れば当然の如く暴れだす。それに巻き込まれないように動くのが精一杯だ。


「お困りのようかな?」


「誰!?」

声のする方を見ると、ビルの上に女の子が立っている!まさか本当にこの子が怪盗…!?

「私が来たからには安心して!」

ガチャン!

「ダイヤブレイク!!」

『ダイヤブレーイク!!マスカレイド…!!』

「ああっ!本当に怪盗だった!」

「とうっ!」

シュタッ。

「美少女怪盗、ただいま参上!!」

「そこ自分で言うんだ…」

確かに怪盗っぽい格好だけど…魔法少女ってことでいいんだよね?

「諸君、後は私に任せて!イッツ・ショータイム!!」

何か決め台詞みたいなこと言うと彼女は一目散に魔獣の方に向かっていった。あれ大丈夫…かな?

ガキンッ!!

「……あれ?」

「ブモォォォ!!」

ブンッ!!

「うぎゃっ!」

全然大丈夫じゃなかった……

「はぁ…もう見てられないわ…後は私達に任せて頂戴。」

「あ、はい…」

そして彼女はどこか悲しげな表情をしながら退散していった…何だか可哀想…

「天野さん、あなたの能力は何?」

「えっと、体とか武器に火を纏わせるとかそんな感じです。」

「ならこの魔獣を焼き肉にしてあげましょうか。」

焼き肉…そういうことか!

「分かりました!」

ボウッ!

武器の薙刀に炎を纏わせ、魔獣の頭を狙って切り刻む!

「たぁーーー!!」

ザシュザシュザシュッ!!

「ブモォォォ…!ォォォ……」

ドスン!!

「ふぅ…」

何とか私がトドメを刺して終わった…

「ありがとう。今日はあなたのお手柄ね。」

「いえ…先輩達が先に戦っててくれたおかげです。」

「それにしてもあの子…何だったんだろうねー?出てくるだけ出て帰った感じでちょっと残念だなー」

「彼女には可哀想だけど、被害を出さないためには帰ってもらうしかなかったのよ。」

じゃあさっきのは先輩なりの判断だったってことなんだ…

「今日はお疲れ様でした。では、また明日。」

とりあえず今日のところはこれで解散。また明日も学校あるしね。


ー翌日、放課後ー


マリルに襲われて以降、帰り道が少し怖いけど今のところは大丈夫みたい。

「天野…英里華よね…?」

一瞬ビクッとはなったが振り向くと眼鏡をかけた女の子が立っていた。

「えっと…そうだけど…」

「やっぱり!昨日の魔獣を倒した魔法少女だったよね!私はあの怪盗の魔法少女!」

この子が…昨日の!?

「私は「雨宮千秋(あまみやちあき)」っていうんだ。よろしくね!」

「よ、よろしく…」

「とりあえずどっか公園でも行って話そうよ!」


ー公園ー


ベンチに腰かけて話す。それにしてもこの子は何故ハイテンションなんだ…学校は違うみたいだけど…

「…それで、何故魔法少女なのに怪盗を名乗ってるんだって顔してるね。」

「そ、そうかな?」

「私ね、あるテレビゲームをやった時にさ、「主人公の怪盗」に憧れちゃったんだよね。」

「主人公の…怪盗?」

「そう。その主人公は悪い政治家に襲われそうな女の人を助けたんだけど、その政治家に暴力の罪を着せられちゃって「前歴持ちの高校生」として暮らすことになるんだ。」

何か、凄い重そうなストーリーだなぁ…

「でも主人公はそんなことにめげず、世を乱す悪い大人達を怪盗として成敗していくっていうゲームなんだけど、この主人公が凄いかっこよくて!」

「それで…マジックダイヤを使って夜な夜な街に現れるってこと?」

「そう!このゲームの主人公みたいに私も人々を助けられたらいいなって…」

そうか、千秋ちゃんも私達と同じで人々を助けたいと思ってるんだ…

「でも私には身体能力が上がるだけしか能力がない…現実は上手くいかないんだ。」

「それでも…!千秋ちゃんの憧れっていうのは凄いよ。私…ゲームとかあんまり得意じゃないけど…「誰かに憧れてやる」ってのは凄いことだよ!」

「英里華…ちゃん…」

今はこれぐらいしか励ます言葉がない。だけど、これで千秋ちゃんの心が動かせるなら!

「ありがとう…!私、もっと特訓して本当に人々を助けたい!私…頑張るから!」

「うん!頑張ってね!」

私は千秋ちゃんを見送った。送った時、彼女の口からは英語での歌声が少し聞こえた。

「So you know that we're out there…♪」




「……あっ!…」

ドンッ。

「す、すみません!」

私はその帰り道、よそ見をして男性の人とぶつかってしまった。

「あ、いや…こちらこそすまない…」

男性の人もそれほど気にはなってなかったようだ。私はそのまま何も気付かずに帰った…だけど、後々「ある物」が無いことに気付くことになるのは、そう遠くはない話…

「……………」

ピッ。

「ラルス、予定通り回収した。彼女には悪いが…」

「すまないな…お前にこんなことをさせて。」

「俺も気は進まないが、彼女のためだ。」

「あぁ、こっちもまだ調査がある。お前は今取ったやつの解析を頼んだ。」

「了解した。」

ピッ。



「これが…今回の異変の「火種」になっている物なのか…?」



続く。



次回予告

「あれ!?私のマジックダイヤが無い!」


「どこかに落としてしまったのでは?」

「そんなことは無いはずなんだけど…」


「結局…私は何も出来ない人間に…」

次回「覚悟」


「あなたは…確か…!」

「俺はドメイク。ドメイク・アバロスタだ。」

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