1番近くて遠い。

さんせっと

第1話 朝と夜

これは、近くて遠い2人の20年のもどかしい軌跡の物語。



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思えば意識し始めたのって、5歳くらいの時だろうか。当時、私達の親は共働きで忙しく、おばあちゃんの家でよく親の帰りを待っていました。

おばあちゃんの家はとても大きく、2階の奥の普段は使われてない服がたくさん置いてある部屋が、私達の秘密基地でした。

秘密基地では、2人だけの秘密の空間。カーテンの隙間から光が差し込む中、いつもごっこ遊びをしていました。


ごっこ遊びはいつも朝の場面から始まる。


「朝ごはんできたよ!起きて〜」

服の上で寝ている悠太を起こし、おもちゃの食器がたくさん並んでいるところまで引っ張った。

悠太は眠そうに目をこする。

「まだ寝てたいよ」

「だめでしょ!仕事に遅れちゃうじゃん!早く食べて!」

遥は、自分の母を真似たような口調で悠太を急かす。ご飯が食べ終わると、悠太は立ち上がる。

同時に、遥はたくさんの棚の中からおじいちゃんのスーツを引っ張り出して悠太に着せた。

おじいちゃんは180cmの大柄なので悠太が着るとぶかぶかだ。

スーツを引きずらせながら、ドアに手をかける。すると、悠太がもじもじしながらこっちを向いた。

「いってきます」

すると私は、決まって悠太の柔らかい唇にキスをする。

「いってらっしゃい!!」

悠太が廊下に出るまで、手を振るのがいつものごっこ遊びの流れだ。


私達はちょっとませていて、テレビでやっている恋愛映画を見てそれを参考にしていた。


だから、夜の場面ではこんな事もしていた。


部屋の隅にあるシングルベットに並んで仰向けになり、布団を全てかぶる。

まず悠太が私の上に乗り抱きしめる。2人の鼓動がゆっくり聞こえるくらい抱きしめる。

落ち着いてきたら、順番に互いのズボンを下ろし、触っていく。

恋愛映画ではここの部分は具体的にどうするのか映っていなかったから、ただ触れ合う。

私は、この行為がよくわからなく、キスをしている方が好きだったが、悠太はこっちの方が好きらしい。


私は朝が好きで、悠太は夜が好きだった。


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