第8話
先生は更に話を続ける。
「サモン・チルドレンも、人材として欲しいというオファーが来ている。しかも貴方は早生大学卒の新卒で賢くて優秀だから、向こうも人材として喉から手が出るほど欲しがってる。」
商社ではなく、卒業後の進路が国家公務員になるということか。商社での内定を受諾しようと思っていたが、国家公務員という進路なら、奨学金の返済もよっぽどのことをしない限り心配ないだろう。
「ちなみに、月収は幾らくらい貰えるのでしょうか。」
「貴方は40万円、私は50万円スタートね。研究職員という扱い。しかも、無料の寮つきで食堂もある。至れり尽くせりね。」
「そんなに貰えるんですか!!!」
これは断らない手は無いだろう。奨学金なんてあっと言う間に返せる。
「それよりも、貴方に気をつけて欲しいことは…」
そういうと、先生は真剣な顔をして、僕を覗き込んで言った。顔を近づけられると、どきりとしてしまう。
「万が一、君の能力に気づいた悪人に、その能力を悪用されたら大変なことになることは、解るかしら。」
その通りだ。対価を支払うとは言え、人を自由に殺せるなど、とんでもない能力である。しかも、証拠が出てこないから、警察に捕まる、ということは無い。
僕は、父を殺した後は、この力を一度たりとも使っていないが、もしこの力を面白がって使うような人間だとしたら、国家の要人を暗殺したりすることも容易い。世界を1人の手で混乱させる力を自分が持っていると考えると末恐ろしくなる。
「だから、貴方は私と今後行動した方が良いし、国家機関に所属していれば、命を狙われる危険性も薄くなる。私はサモン・チルドレンのことも研究しているから、貴方のフォローは私しかできない。そして、貴方はまだ自分の能力に関して、未開花な部分もたくさんあるから、卒業までの半年の間、よく自分の能力を研究しておきなさい。それが貴方のためになるから。」
先生の念押しに対して、うんと、僕は首を縦に振った。
随分と長い間で、その間面食らうような信じられない話ばかりだったが、先生はやっぱり素敵な人だった。
数日経過し、僕は商社から貰った内定を断り、大学卒業後は防衛省に就職する決意を固めた。
だが、その決定は、これから訪れる数多くの奇想天外な出来事のほんの最初に過ぎなかった…
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