第4話
僕の父親は、最低の人間だった。
事あるごとに母親を殴り、日によって違う女を家に連れ込み、酒盛りをするような男だった。
僕は、そんな家に居るのが嫌だったし、母親からも、父親から殴られたらいけないからと、できるだけ外で過ごすように言われていた。
実際に幼少期には殴られていたし、小中高校と家に殆ど帰らず、学校で遅くまで残って勉強しているか、図書室で読書していることが多かった。
そして、父親に会わないように自室に戻り、母親が作って置いてくれた夕食を食べて寝て、翌朝また学校へ出かける…
時に早く家に帰れば母親の悲鳴と父親の怒声や食器が壊れる音が響き
夜は部屋に鍵をかけても父親の部屋からベッドの軋む音と知らない女の喘ぎ声が聞こえた。
こんな父親と母親はなぜ離婚しなかったかは今でもわからないが、
僕はそんな荒れた家庭で育った。
確か、僕の大学合格発表の数日前くらいだったと思う。
その日の夜部屋に僕の夕食が用意されていない事を不審に思い
父親がいない事を確認してリビングに降りたら、母親が床の上で冷たく横たわっていた。
心臓はもう既に止まっていた。
後で聞いた話だが、心労がたたったらしい。
その少し後父親が家に戻ってきて、リビングで横たわる母親を見て一言こう言った。
「ババアが、ようやくくたばったか。」
その言葉に、僕の中で何かが切れた。
気づいたら、右腕が父親の頬を殴っていた。
「何するんだこの野郎!」
父親は反撃で僕は腹の一撃を食らわされて、そのままうろたえた隙に両腕を掴まれ、床の上に押し倒された後、顔を殴られ続けた。
僕の顔は父親から何度も殴られ、血まみれ、アザだらけになった。そして、父親の怒りが収まり、僕が動けなくなるくらいになって、ようやく父親は殴るをやめた。
「このクソガキ、手こずらせやがって。」
そのまま、父親は自分の自室に戻っていった。僕はそのまま動けない状態で、冷たくなった母親の隣で横たわっていた。
僕の心の中には、母親を失った耐え難い悲しみと、
その原因となった人情のかけらもない父親への憎悪が渦巻いていた。
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