第2話

もしお金があれば、ここで僕が大学院へ行くこともできただろう。だけれども、僕は大学を卒業したら、まずお金を稼がないといけない…


「貴方がご両親がもう亡くなられて、一人で奨学金を借りて卒業しようとしてることは知ってるわ。それは、大学に入るときのプロフィールシートで確認してる。だから、私は貴方に推薦したい仕事があるの。その仕事は月収は新卒で入った場合の平均の2倍以上貰える。それに…」


月収2倍以上、そんなうまい話があるのだろうか、と僕は一瞬頭を傾げた。


「…私もいずれ、その仕事に転職しようと思ってるの。貴方が卒業すると同時くらいに、私もその仕事に転職するつもりでいるの。だから、来年の4月から、貴方と一緒に働くことになる。」


一体全体、どんな仕事なのだろう、ということが頭の中をよぎった。だけれども、それ以上に、松井先生と、4月に一緒に働ける、ということが、僕にとっては嬉しかった。


「せ、先生と一緒に働けるなんて、嬉しいです!それは一体、どんな仕事なんですか?」


「その話をする前に、卒業するまでに、私の手伝いをして欲しいということと、私が今の仕事から、転職する意思であることは黙っていて欲しい…ということと…」


その後、笑顔だった松井先生の顔が急に真剣な面持ちになり、僕に一言言った。


「あと、貴方の誰にも聞かれたくない秘密のことを聞かないといけない。」


その言葉に、僕はどきりとした。


「貴方、昔人を殺したでしょ。それも貴方のお父さんを。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る