楽あれば苦あり

勝利だギューちゃん

第1話

夏休みも終わりにさしかかったある日、

俺は、クラスメイトの女の子に電話した。

あいちゃんという。

それなりに、仲はいい。


電話の理由は、告白でもデートのお誘いでもない。


宿題を写させてもらおうと思ったのだ。

持つべきものは、友達だ。


電話をする。

彼女が出た。


「あなた、それ、誰に向かって言ってるの?」

切られた。


こんな冷たい子ではなかったのに・・・

人間は、わずかな間で変わるのか?

世も末だ・・・


電話がなる。

さっきの彼女からだ。


「反省した?」

「しました」

「これからは、自分でする?」

「やります」

「素敵なあいちゃんお願しますは?」

「素敵なあいちゃん、お願します」

電話の向こうで、彼女がほくそ笑んでいるのがわかった・・・


「しょうがない。写させてあげるわ」

そうこなくっちゃ・・・


「でも・・・」

「でも、何ですか?」

「ただとは言わせないわよ」

「もちろん、謝礼はいたします」

「よろしい。じゃ説明ね」

「はい」

説明が始まる。

これが長い。


「1教科なら、ミジンココース

 2教科なら、メダカコース

 3教科なら、トビウオコース

 4教科なら、マグロコース

 5教科なら、イルカコース

どれにいたしますか?お客様」

「イルカコースでお願いします」

「かしこまりました」


こうして俺は、あいちゃんに5教科全部写させてもらった。

間に合ってよかった・・・


でも、楽あれば苦ありで、謝礼をしないといけない。


お金?タブー。

体?犯罪者にはなりたくない。

(て、そんな仲ではないし・・・)


「さあ、働いてもらうわよ」

「何をいためしましょう。お嬢様」

「いたしましょう。無理やりボケないように」

へいへい


謝礼とは、いわゆるパシリ。

あいちゃんの家の家事を3日間やらされる。


ミジンココースなら、部屋の掃除

メダカコースなら、+トイレとお風呂掃除

トビウオコースなら、+ゴミ出し

マグロコースなら、+買いだし

イルカコースなら、+料理


それを、3日間全てやらされる。

こりてはいるが、なぜだか、クラスのみんなが頼む。

男女問わず・・・


人徳か・・・


「さあ、後藤真一くん、がんばろうね」

こうして、あいちゃんとの生活が始まった。


居候ではない。

9時から17時まで・・・


あいちゃんは、寝ているわけではなく、いろいろとサポートしてくれる。

また、お願いしよう。


「でも、宿題は自分でやらないと、自分のためにならないよ。

今回は、特別だからね」

怒られた・・・


楽あれば苦あり

パシリも彼女なりの、優しさかもしれない。

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楽あれば苦あり 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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