第26話 作中:リンダの証言

 警部さんは私たちの母娘のうちの誰かが怪しいと思ってらっしゃるでしょうけど、

私はあの姪だとかいうあの子がやったと思ってますわ。ガーベラはちょっとまた意見が違うようですけど……。

 今どき、委託殺人を請け負う暗殺者なんてピンキリですもの、大金を積めばそれこそ証拠も残さず相手を殺してくれるという話じゃないですか。


 え? あの子とその叔父は貧乏なの? それ本当、ガーベラ?


 ああ、ごめんなさい、警部。あの子が急に横やりでチャチャを入れてきたんですわ、ほんと何でも突然なんだもの、時と場所は弁えてほしいわ。ええと、何でしたっけ? ああ、そうだわ、ローザについてでしたっけ。あの厚化粧のオバサン。


 例の魔法薬でしょう? もちろん知ってますわよ、お母さんはすっごい勢いで私たちにも勧めてくるけど、使うはずないじゃないですか、あんなもの。

 厚化粧の代名詞になってて、オバサン用化粧品なんて揶揄されているんですよ? まだまだ私たちには必要ありませんって。あんなもの。中年になってお肌がヨレヨレになったら考えますけどね。


 こうやって魔法ですぐにゲロってしまう世の中ですよ? 魔法で誤魔化したところで、そんなのバレバレじゃないですか、委託殺人にしたってよほどの大金を掛けないことにはロクな暗殺者に頼めやしないんだし、割に合わないくらい誰だって知ってると思うわ。そうでしょう?


 あっ、だけどそうなると、あのミスティとかいう子が貧乏で上等な暗殺者を雇えないんだったら、雇えるのはうちのお母さんだけってことになるのかしら?


 ……いえ、違うわ。そうよ、違うわ、警部さん。それも無理。だってうちのおサイフはお父さんがしっかり握っているはずだもの。そうよねぇ、ガーベラ。

 私たちだってそれが嫌で早く独立したくらいなんだもん、誤魔化してヘソクリを隠しておくのも無理ね。お父さんはお金に細かいから。やだ、こんなこと言ってるってお父さんにバレたら大変だわ、絶対に怒られちゃう。世間体とかすっごい気にするから、うちのお父さん。


 ちょ、仕方ないでしょ、ガーベラ。この魔法はそういう魔法なのっ。あんただって後で解るわよ、嘘とか誤魔化しなんてぜんぜん出来ないんだからねっ。

 あんたが実はローザにこっそり近付いてて、上手いこと言ってお金せびってることだってぜんぶ暴露しちゃうんだから。せっかくお母さんたちに内緒にしてあげるからって、口止め料もらってたのに、これでパーよ。


 ね、警部さん。あの子、死んだローザに取り入ってたから、表面的には仲が悪いみたいに装ってたけど、ほんとはローザはガーベラには心を許してたのよ、実は。


 ごめんってば、ガーベラ! ペラペラ喋っちゃうのよ! ああもう!


 

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