第21話 作中:閑話休題

 背筋をシャンと伸ばしてイザベラは出ていった。次の証人が来る前に、ホワイ警部とクリスティーヌは少し時間を取った。二人で相談事だ。

「どうかな、クリスティーヌ。さっきの三人に痕跡はなかったか?」

「気になったのは先ほどのイザベラさんですね。若干、魔力の影響を感じました。けれどそれは販売職の方にありがちなものだと思います。」

「ふむ。苦情処理に関わる可能性のある者には、ストレス軽減とリテラシー遵守の為の魔法を掛けると聞くな。術者の特定は……難しいか。」

 クリスティーヌの表情が沈みこむと、ホワイ警部は残念そうに言った。

「すいません、警部。それから、あのご婦人は相当に強いストレスを溜め込んでいるようでした。あそこまであからさまに被害者を非難して憚らないというのも珍しいと思いますわ。」

「いやいや、現場で聞き込みをすると結構居るものだよ。洗いざらいの本音をぶちまけても魔法のせいで言い逃れができるからかな、我々だけで他の関係者には聞かれないこともあるんだろう、安心してすべて話してくれる方がこちらも有り難いさ。」

「そうなんですの? やっぱり聞いているより厳しい職場なのですわね、捜査員ともなれば。少しでもお役に立てればと思いましたのですけど、お邪魔になっていません?」

「いやいや、本当に君には感謝しているよ、派遣されてくる査問官を待っていたのでは埒が明かないところだった。」


 コンコン、とノックの音が間近に響いた。部下の一人が呆れ顔で立っていた。

「警部、次の証人をお呼びしても構いませんか?」

「む。そうだな、呼んでくれ。」

 慌てて二人は距離を離した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る