第19話 作中:魔法世界の犯罪事情
「この状況で、もし、殺人事件だとしたら犯人は外部からの侵入者でなければおかしいのです。査問官による尋問が必ず行われることが解っているのに、自ら手を下しておいてなお言い逃れることが出来るなどとは、誰も思わない。」
ダンカンは逆に、ホワイ警部に詰め寄った。この奇妙な死亡事件に関して、相当のストレスを感じている様子だった。
「自殺ということが一番濃厚なのでしょうが、私はそれも信じられない。資産もあり、揉めているとはいえグレイさんとの恋は今が一番の佳境でしょう。悩んでいると言いつつ、実に楽しげだったのですよ。」
自殺とするには動機がなく、他殺であるならゴーレムが不可解である。ダンカンはしきりと首をひねっていた。
魔法のあるこの世界で、特に近年になり自白魔法が開発されて後は、厄介な捜査というものはあまり見られなくなった。とは言え、犯罪と捜査手法はイタチごっこなのが、彼が居た世界においても常だった。
自白魔法という強力な手段に対抗するように暗黒面に現れてきたのが、洗脳魔法である。依頼殺人というケースはもっとも厄介となった。
ある一定時期の記憶を消し去ってしまうという方法は、やがて記憶のサルベージ技術によって破られるに至り、次いで出現したのは偽のアリバイ記憶の移植だった。魔法は痕跡が残るが、これらの手法は魔法をサブに、主には自己暗示を利用するため跡がほぼ残らず、事件捜査が困難なものとなった時期もある。
しかし、地道な捜査と裏付けによって偽のアリバイを突き崩すことがまだ可能であることから、今のところは辛うじて正義の側が勝利を続けていられる。それに応じて、捜査員の職業人的勘というものは年々重要になっていた。
「まったく……次から次へと……」
「何か言った? ダイゴ、」
呟きを聞きとがめたクリスティーヌに、警部はまたムニャムニャと口中で誤魔化した。
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