第18話 作中:ダンカンの証言
私は魔法整備士という職についていて、主に動力回路の整備に携わっております。魔導具にもピンキリがありましてな、ゴーレムのようなデカ物となると一人では手に負えません。三人の整備士がそれぞれ担当をもって管理しているのです。非常に高度な制御を必要とする導具ですから、勝手に別の担当箇所などをイジれば壊れてしまうでしょう。ですから私には他の回路がどうなっていたかは証言が出来かねます。
その前提で言うならば、異変の後に点検した時の二体はいずれも正常であったと思います。他の回路に異常があるなら警告ランプが付きますが、それもありませんでした。残る担当者二人はおいおい駆けつけるでしょうから、そちらにもお聞きください。おそらくは、同じ回答ではないかと思います。異常はありませんでした。
ゴーレムは人間やその他、生物非生物に関わらず、主人と設定された人物を守護するように作られています。この二体はむろんローザさんを主人としていました。彼女に危害を加えようとする者は排除するのです。それが偶然料理に混ざってしまった毒キノコなどの危険物であっても、です。おおよそこの世界に存在する毒物はリスト化されており、そのリストに従って、排除機構が働く仕組みです。
主の危機はすべて排除するこのゴーレムの守護がある中で、彼女を害することが出来ようとはとても考えられないのですが……。
魔導具は何でもそうですが、誤作動はありません。魔法を動力とするものには魔法を原因とする故障などはありえないのです。我々整備士が点検するのは従って、経年摩耗や部品の劣化などです。ですからそれらを原因に起きた事故などを未然に防ぐことだけは不可能です。また、守護の対象であるローザさんが自殺を、つまり自身を加害しようとした場合にそれを阻止することも、出来ません。
事件のあとすぐの点検では、故障などはなかったのではないかと考えているのですが、二人の整備士の意見を聞かねばこれは私の一存では判じかねます。
ミスティの悲鳴を聞きつけた時、私はまだ自室にいました。普段から我々用にとあてがわれている客室です。慌てて部屋を出たところで、隣の部屋から出てきたグレイさんと互いの顔を見合わせました。そこで初めて他にも来客が居るのだと知りました。
二人で、ほぼ揃って駆け出したはずです。後ろは見ていませんが、彼の奥さんが何か叫んだと思います。聞き取れませんでしたが。それからまっすぐに突き当たりにあるローザさんの部屋へ向かったのです。一直線の回廊ですから、他の人影などは見えませんでした。
ミスティは半ばパニックを起こしており、私が取り押さえました。それからグレイさんが脈を取り、ローザさんの死を告げたので、私はミスティを彼に託してゴーレムの様子を確かめに向かったのです。何者かが侵入し、彼女を殺したのなら、ゴーレムを破壊していなければおかしいので。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます