第17話 作中:屋敷内のゴーレム
ミスティの証言が終わると同時に、全員の目が一方へと向けられた。それはむろん、話にあった重要な存在、鋼鉄の騎士たちへ向けられたものだった。
豪華なシャンデリアのぶら下がる応接室は、ソファセットよりも余剰の空間の方が広々としており、申し訳のように彫像や大きな花瓶などが点々と配置されている。典型的な金持ちの豪邸で、その中に件のゴーレム二体も控えていた。
彫像の中に混じって、素知らぬ風に突っ立っている人型の魔道具は無骨な姿ですぐにそれと解るものの、知らぬ者が見たなら――そんな者が今どき居るならばの話だが――驚き、思わず怯んでしまうに違いなかった。
二メートルを優に越す体躯が、魔法の浮力を用いて、床スレスレに立っている。正規の重量は一トンに近いから、まともに置けば床板が抜けるだろう。腕力もさることながら、瞬間移動の魔法を駆使して敵を追い詰める優秀なハンターだ。普段は待機場所として設置される台座の上に直立不動でおり、敵が近付けば自動で動き出した。
ホワイ警部はこほん、とひとつ咳払いをして、お決まりのセリフをミスティに投げかけた。
「で、君が殺したのかね?」
「いいえ。私ではありません。」
査問官による自白魔法は、起きる犯罪の実に九割においてその効力を発揮する。関係者全員にこうして尋ねて回るだけで、大抵の事件は解決した。
ミスティはきっぱりと否定してのける。本人が何らかの手段を用いて自己洗脳の状態にでもなければ、この魔法を前に、彼女が自分の意思で嘘を吐いて言い逃れることは不可能だった。
「ふむ。解りました、では次はあなたの叔父さんを呼んでいただけますかな。」
ミスティは警官に付き添われて退出する。しばらくして、次に入ってきたのはダンカンだった。
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