第16話 作中:ミスティの証言

 私は三日に一度ほどの割合で伯母の屋敷を訪ねるようにしています。資産家の家へ後妻として入った伯母は、以前から居心地の悪さを覚えていたらしくて、ご主人が亡くなると不仲だった者もそうでない者も次々と辞めさせてしまったんです。一人暮らしになってしまった伯母が心配で、時間が空く限りは訪ねるようになったのです。


 伯母が使用人をすべて辞めさせたのは、そこに居るグレイさんとのことも原因のひとつでした。被害妄想に近かったかも知れません、時にはこの私のことさえ疑っていましたから。陰口が聞こえると言って、生きた人間が館に居ることを嫌がるようになったのです。


 伯母は見栄を張るところがあって、使用人はすべて辞めさせたのに相変わらずパーティなどの集まりには行っていました。防犯の為というより自慢のタネにと、そこに居るゴーレムも作らせたのです。鋼鉄の騎士は無駄口も叩かないし裏表もないと言って。この魔導機械の整備をしていたのが、私が今いっしょに暮らしている叔父のダンカンです。今日はちょうど整備の日と重なったのでいっしょに訪ねたのです。


 屋敷には前日から来客があったようです。私は知らず、まっすぐに伯母の部屋へと向かいました。鍵が掛かってはいなかったので、おかしいと思いつつも失礼して中へ入ったのです。そこで、床に倒れたまま動かない伯母を見つけました。

 私の悲鳴を聞きつけて真っ先に駆けつけたのは、グレイさんです。ほぼ同時に叔父のダンカン、続けてグレイさんの奥さんと娘さん二人も。


 伯母は、まるで眠っているようにしか見えなかったので、私は最初は気付かず、床に跪いて揺り起こそうと手を掛けました。そこで冷たくなっていることに気がついたのです。見た目だけはまるで生きているようでした。伯母が愛用している化粧品のせいだと思うのです、最新の魔法薬で、どんな肌の衰えもきれいに隠してくれるものだから、死んでいることさえ覆い隠してしまったのでしょう。


 グレイさんが脈を取り、死が確定されました。外傷も見当たらなくて、恐らくは毒物ではないかと仰いました。叔父がすぐさまゴーレムたちの様子を見に行きました。ゴーレムは、殺意を持つ者の精神に反応するので動いたかどうかを確かめに行ったのです。……ゴーレム二体は、動いてはいなかったそうです。

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