第14話 作中:クリスティーヌの証言

 私は館の女主人ローザとは親友でした。知り合ったのはずいぶん昔で、かれこれ十年来の付き合いです。彼女は富豪に見初められて結婚し、ご主人が亡くなってその財産を受け継いだのでした。たしか、妹さんが一人いらっしゃって、家族といえばその方の娘さんと二人だけだとよく聞かされました。


 事件の前日です、私がこの館を訪れたのは。その時にはすでに先客がいらっしゃって、ローザが現在付き合っているグレイという男性の奥さんと双子の娘さんの三人がいらっしゃいました。

 おそらくは来たばかりなのだと感じました。ローザとその三名はかなり苛々している様子で、放っておくとすぐに口論になりました。私はたびたび四人を宥め、落ち着かせなければなりませんでした。ローザも勝ち気な女性だったのです。


 どうしたものかと思案していたところへ、また一人来訪者が増えました。件のグレイさん本人が、奥さんと娘さんたちを追って訪ねてきたのです。荷物らしき荷物などは夫妻も娘さんたちも持ちません、手ぶらの状態です。とりもなおさず来たといった状況に感じました。私はローザから事情を幾らかは聞いています、たびたび奥さんや娘さんたちが訪問するので参っていると、そう言っていました。


 グレイさんのことは本気で愛しているようでしたが、そういう状況なので諦めようかと迷ってもいるようで……私が今回ここを訪れたのも、彼女から折り入って相談があると招待されたからです。その相談事がなんだったのかは残念ながら聞かず仕舞いになりました。

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