第13話 作中:魔法世界ー査問官ー

 ホワイ警部が視線を向けた先に、クリスティーヌも目を向けた。豪華な応接室のソファには、事件当時に居合わせた六人の客が心地悪そうに座っていた。

 女主人ローザが変死したその日、館には五人の客が泊まっており、翌日には姪のミスティとその保護者ダンカンが訪れた。そうして、死体の発見に至る。


「ところで警部。査問官の姿が見当たらないようですけど、遅れていらっしゃるの?」

「その通りですよ、意地が悪いな。」

 警部は肩をすくめてみせた。魔法による公正な証言の聞き取りを行う者が査問官で、ホワイ警部にはなかなかバディを組もうという相手が現れなかった。警部が魔法を一切使えなかったからだ。

「いつ、ご到着になりますの?」

「さあ? 明日か、明後日か、それよりもっと先か……」

 ソファに陣取る人々の表情が揃って暗くなるのを見て、警部はもごもごと言葉を濁した。


 クリスティーヌは悪戯っぽく含み笑いを漏らして言った。

「私、これでも魔導査問官の卵ですわよ。どうせ後で全員の調書を取るのだったら、私がやっても変わりないと思いますわ。間違った記憶が混じれば、それだけ事件解決が遠のくのですもの、余計な寄り道をせずに済むと思うのだけど。」

「ではお願いしますかね。」

 以前にも似たようなシチュエーションがあり、その時も結局は彼女の力を借りた警部だ、今回はすんなりと捜査協力を仰ぐことにしたようだった。


「言の葉の精霊よ、我が口をもちい、我が目に映りし真実のみをここに告げよ。」


 とたん、クリスティーヌの身体が淡い光に包まれた。毎度ながらでも警部は感心したようで、何度となく頷いた。

 自白の魔法。以前からあったバージョンとは違い、受ける側の負担はほとんど無くなった。以前はそれこそ犯人扱いのような心地を与えてしまったが、今作は法廷での宣誓程度の負荷しか与えない。

 これが近年魔法院によって開発されたことで、ずいぶん現場の捜査も楽になったのだ。勘違いのない正しい証言を得るには、気苦労も多いものだった。


 クリスティーヌはまず手始めとして、自身に証言のための魔法を掛けたのだ。ゆっくりと息を吐き、彼女は静かに話し始める。


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