第12話 作中:冒頭部ー設定・魔法世界ー
事件の報を受けるとすぐに警察官が大挙してやってきた。陣頭指揮を執る警部は、偶然にもクリスティーヌの知り合いであるホワイ警部だった。
「ダイゴ、あなたが担当なら心強いわ!」
本心からそう言った彼女に対し、警部の方では苦い笑みを浮かべただけだった。いわゆる異世界転移でこの世界へ来てしまったのが彼で、以来、丸々二十年が経過している。来た当時まだ十代だった真面目な青年は、堅物な中年となり、地道な努力で警部に昇進するに至ったというわけである。
屋敷内に居た関係者は全員が足止めされ、異世界方式の現場検証なども行われた。彼が唱えた捜査方法はこの世界には無かったもので、一事が万事、魔法に頼り切っていたせいで、彼に言わせると甚だ効率が悪かったのだそうだ。
魔法のある世界では簡単に物事の痕跡を消してしまうことができることから、逆算で魔力の根源を解析したり、防犯指導の際に魔法対策を練るなどといったところは発達していたが、基本的なプロファイリング技術などはまるで考えられていなかった。彼の世界で科学捜査が発達し、DNA解析などが行われていたように、こちらの世界では魔法がその代わりを果たしているのだが、彼に言わせると偏っているという話だった。動機から推測して犯人像を絞り込むといった面での捜査手順はこの世界にはなかったのである。魔法で口を割らせることなど造作もなかったからだ。
「物証を積み上げていくのが確実なのはそうだが、それより犯人にアタリを付けられるなら付けておいて、絞り込んで捜査した方が早いよ。」
今回の事件も、彼のロジックを用いないとすれば、どれほどの時間が魔力解析に充てられたものか知れなかった。
まったく痕跡がないという現象を引き起こした原因魔法を探るという状況はかなりの困難が予想されていた。
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