第11話 作中:冒頭部ー舞台紹介ー

 賑わう港町を眼下に置くひらけた高台の別荘地……事件が起きたのは、風光明媚なその土地の一角だった。

 金持ちにしか所有資格が認められていない地域で、豪邸と呼んでいい館が広い区画に点在している。個々の敷地面積が大きく、従って一軒一軒の間の距離も相応に離れている。さらに高い塀や檻のような柵が張り巡らされていたり、魔法による厳重な防護陣が仕掛けてあったりして、一軒一軒はそのまま防犯性の高い、言い換えるなら空間でもあった。


 そういう環境の中、地域でも有数の魔法防護を誇る屋敷の一室で、女主人が変死を遂げていた。発見したのは当日に屋敷を訪ねた姪のミスティで、彼女は三日おきくらいに伯母を見舞っていたが、前回訪れた際には、伯母の元気な姿を見ている。


「伯母は最近、疑心暗鬼が酷くって、古くから居た使用人をほとんど解雇してしまったの。」

「まぁ。」

「生活自体は不自由がなかったらしいのだけど。ほら、最近は魔法の便利グッズが色々とあるじゃないの。人間と違って魔法は裏表がないからって、伯母は信用しきっていたわ。」


 たった一人の血縁者を失って、ミスティは悲観していた。亡くなった女主人のローザと親しかったクリスティーヌが、傍で慰めていた。

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