第2話 リアル:某神社境内

「ふな子さんから相談事っていうのはまた、珍しいですね。けど、僕でお役に立てるかどうか解りませんよ? あまり文学や小説といったものも詳しくはないので。」

 彼をよく知る者が見たなら目を丸くするに違いない物腰の柔らかさで、この神社の神職青年は穏やかな笑顔を相手に向けた。


 対面に居るのは始終俯きがちな小柄の女性で、年齢も微妙なところに差し掛かっているだろうに子供じみた服装をして、ただもじもじと立っていた。彼女は手にした大判の封書を青年に渡すか渡すまいかで未だ悩んでいる風だった。


「それ、書き上げた原稿ですか? 読んでいいんですか?」

「ぜ、ぜひ。」


 勢いに乗って、彼女は封筒を青年に押しつけた。

「あ、ちょっと!」

 後は脱兎の勢いで駆け戻っていく。途中、何もないところで蹴躓き、倒れかけつつなんとか持ちこたえ、そうして鳥居を抜けた角を曲がると姿を消した。


 相談事自体の話はどこへ行ったものか、原稿を手に、しばし青年は途方に暮れた。

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