Love medicine. 2

 駅前近くにあるケーキクラブハウス、『PEACH BROWNIE』は女子中高生達の間で人気のお店の一つ。連日店内は彼女達で占められるが今月は十二月。折しもクリスマスが近いこともあってカップルの数は一際多かった。

 店内の賑わいは恵達に任せ、厨房では他のブラウニーが悪戦苦闘していた。


「祐介君、メレンゲまだ?」

「今やってるよ、聖美さん」

「祐介君、あのー……メレンゲ」

「知見さん、もうちょっと」

「まだかなまだかな~。祐介君」

「美香さんまで……。せかさないで下さいよ」

「おせーぞ! 何やってんだ祐介」

「……サボってる亜矢さんにだけは言われたくないです」


 みんなが注目する中、祐介はボールと泡立て器をひしと持って泡立てていた。

 砂糖を入れるタイミングが悪いため、失敗ばかりして作業が中断していた。

 みんなに急かされながら頑張る彼を見ながら、神名と弥生は小さく笑う。


「久しぶりにみんなを見るとなんか楽しいですね」

「そうね。このところ勉強漬けで肩こっちゃって疲れてるから。こういう雰囲気、何となくいいのよね」


 神名と弥生は出来たケーキをそっと箱に詰めながらそんな話をする。

 そんな二人を見ながら陽一は、彼女達を呼んで正解だったと思った。

 三人共無事大学に合格出来たし、弥生の笑う顔も久しぶりに見られたし。

 それにしても……と陽一は横目で隣のテーブルを見た。


「あー、また失敗した!」 

「砂糖入れるのが遅かったみたいですね」

「こんなぼそぼそしてたら使えない」

「はい祐介、もう一回やり直し!」

「……は~い」


 祐介はまた卵白の泡立てから始めた。


「うまくいかなかったみたいですね」


 鈴は笑いながら直人の方を見た。

 鈴は直人のような職人になりたいと思い、彼の元で手伝いをしている。

 ケーキ作りという仕事は見た目よりも大変だ。

 けど出来たときの喜びは苦労しただけあって嬉しい。


「楽しくていいじゃないか。私達はケーキを作って売っているのではない。食べてくれる人達が幸せになる手助け、その手伝いをしているに過ぎないんだよ。だから一生懸命思いを込めてケーキを作るのさ」


 直人は綺麗にデコレーションする。

 毎日、思いを込めてケーキを作る彼の姿勢に鈴は、いつしか憧れを抱くようになっていた。

 けど本人以外その事は知らない。


「……そ、そういえば唯さんは何処に行ったんですか?」

「唯かい? あいつなら家の方で霞さんと話をしてるはずだ。確か君のところの蘭さんも一緒だと思ったが……」

「母さんも? 何してるんだろう」


 鈴は驚き、天井を見上げた。


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