Walkin' girl in the rain. 3

 PEACH BROWNIEの二階。

 唯達の住居スペースでは、神名と弥生、陽一は勉強をしている。

 弥生は嬉しそうな顔をしている。

 神名は見せつけられているようで嬉しくなかった。


「恵さん、大丈夫かな」

「どうしたのよ、神名? もう心配事なんて無いわよ、祐介君も元気になったみたいだし。ねぇ、陽一」


 弥生は陽一にウインクした。

 半ば神名は呆れ、これ以上話題にするのを止めた。


「神名は店のことを気にしてるのよ」


 アイスティー片手に、三人の前に現れたのは鈴だった。

 彼女はヘルメットをキッチンのテーブルに置き、長い髪を左手ではらった。


「鈴さん、何でウチでくつろいでいるんですか」


 陽一は流石に吃驚した様子だった。

 神名と弥生は気にする素振りはみせなかった。

 問題をとき終えた弥生が声を掛ける。


「いいんですか? また講義さぼって」

「弥生、〝また〟とは何よ、〝また〟とは! まるで私がサボってばかりいるみたいじゃないのよ! 大学生は夏休みが長いんだよ~」


 子供っぽく言い返す鈴。

 何だか神名はおかしかった。

 だが彼女の言うとおり、気がかりなのは店のことだ。

 自分達が辞め、聖美と知見は、部活で来られない日が増えてきている。

 手が足らないときは、亜矢と美香が手伝いにきてはいるものの、いつまでもというわけにいかない。

 このままだと、恵一人きりになってしまう。

 唯はどう考えているのだろうか……。


「ここで遊んでるのなら、鈴さんが働けばいいのでは?」

「遊んでるってなによ。神名も言うようになったね。そのことを唯さんと相談しに今日は来たんだけど」

「そうでしたか」


 余計なことを言ってしまった、と神名は下唇を噛んだ。


「ねぇ、恵の身長ってどの位なの? 高一であの背はやっぱり低いもんね」


 弥生は思いだしたように言った。

 それを聞いて神名は即答した。


「百四十四って、履歴書に書いてあったと思う」

「うそー、もう少しあるんじゃない? そんな小学生みたいな身長なわけないでしょ。せめて五十はあるでしょ」

「んー、陽一君は知らない?」


 二人は無視して勉強していた陽一の方を見つめた。

 何か関わり合わないと怖いような目をしていたので、小さくため息を付いて話に参加することにした。


「身長ねー、確か祐介があの子と電話していたときに」

「うんうん」

「百四十六っていってた」

「ほんとなの?」

「神名が履歴書を書かせたときの数字は中学の時のらしい。六月に計ったとき、二センチ伸びたと話をしていたと、祐介が教えてくれた」

「なるほど」


 二人は感心した。

 鈴は三人の会話を聞きながらこの子達、本当に大学受験をするつもりなのだろうかと半ば呆れてみていた。

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