第10話 テーブルコントロール

飲み会も中盤に差し掛かり、酔っ払い始める人、お腹がいっぱいになってきた人など、色々な人が出てきた。

テーブルの上には、大皿に1つ2つだけ残されているものもいくつかあった。


「ほそし、デブ道の教えを活かす時か来た。」

太谷はそういって、テーブルを指した。

「まず、テーブルに大皿がいくつも残っている状態では、追加の注文が出来ない。これは由々しき事態だ。まだ食べたい人がいるかもしれないと考えて、テーブルコントロールを行う。」


太谷の説明はこうだ。

テーブルに追加を受け入れる余裕が無いと、料理が停滞する。停滞した料理は、どんどん冷めていき、美味しいゴールデンタイムを逃してしまう。

そこで、残っている料理は素早く食べ尽くす事で、次の料理を受け入れる余裕を持たせるのだ。

注意すべき点は、たくさん残っている状態で独り占めしないこと。

独り占めは、他の人の料理を奪うことに他ならないので、やってはいけないタブーだという。


「基本的に、いろんな種類の料理を食べたい人が多い。そこで、我々が率先して食べ切ることで、料理を回転させるんだ。」

人のことを考えながら、自分のことを優先させるこの発想は面白い。

行動原理の根本は『たくさん食べたい』であるが、表面上は『みんなを楽しませたい』という点が見える。まさにデブ道の教えそのものである。

そして、料理を残さないという事についても満たしている。シンプルな話、ただただ、食べ切ってしまえば良いだけの話なのだ。


その後も太谷は、残っている料理を食べ切り、新しい料理を注文しながらテーブルのコントロールを続けた。

そのおかげで、飲み会は食べ物に困る事なく無事に終了となった。

知っていなければ気づくことはないが、そこには確かに、コントロールによって綺麗に片付いたテーブルがあった。

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