第6話 廃墟にて
槙田先生の運転するピックアップは郊外へと向かう。川沿いの道を山間部へ向かって走っていく。
何処へ行くのだろう?
一抹の不安がよぎるのだけど、それはすぐに消えてしまった。先生と一緒の方が安心できる。怪しいのは黒剣の方なんだ。理由は分からないけど、僕の心の中で彼女は物凄く腹黒い感じがしていた。
山間部に入り、何か病院後の様な建物に到着した。
古い病院跡。
精神病院だったと聞いたことがある。地元の怪奇スポットだと有名な場所だ。一時期、深夜に肝試しするのが流行っていたと聞く。
僕たちは車から降りて、その建物の中へと入っていく。荷台に積んであった白い石膏像のようなものも、ふわりと宙に浮かんで僕の後を付いてきている。
単なる石膏像なのに高性能だなと思った。
ん?
この白いのは何だったっけ?
知っていたと思うのだけど、思い出せなくなっていた。
僕たちは建物の奥へと向かった。
中は埃だらけで、木の葉も積もっていた。もう何年も手入れされていないのは明らかだった。
最奥の病室らしき部屋へと入った。
「鳴田君。そのベッドで横になってくれ」
先生の言葉に従い、僕はベッドに腰かけ、その上で仰向けになる。
二体の石膏像は部屋の入口で立ちすくんでいた。そのうちの一体がコトリと音を立てて揺れたのだが、傍には何もいなかった。
あれは生きてるみたいだなとか妙な感想を持ったところで、先生が僕の両手両足をベッドのパイプへ括りつけた。
何で僕を縛るんだろうか。
一抹の不安が頭をよぎるのだが、すぐに気にならなくなった。先生は僕の事を調べるって言ってた。だから縛るんだ。そう考えると何故か心が落ち着いた。
「鳴田君。少し待っていてくれ」
そう言って先生は部屋から出て行った。
その途端、僕の思考が活性化した。
しまった。先生に嵌められたんだ。手足を縛られているじゃないか。
これじゃ逃げられない。もう手遅れだと思った。これまでの記憶はある。何故か先生の言う事を信じてついてきてしまった。何か不思議な力で思考を操作されていたのかもしれない。
しばらくして先生が戻って来た。手には三脚をビデオカメラを抱えている。それをベッドの脇に固定して撮影を開始したみたいだ。
「これで良し。じゃあ君の事、調べさせてもらうよ」
そう言って手に取ったのは大きな裁断鋏だった。先生は微笑みを浮かべながらそれを僕の方へ向ける。
「大丈夫。痛い事はしないから。大丈夫だよ」
僕は止めてと叫んだつもりだったけど声は出なかった。何か不思議な力で体の自由を奪われているみたいだった。
先生はその大きなハサミを使って僕の服を切り取っていく。そしてその切れ端は部屋の隅の方へと投げ捨てていった。上着、ズボン、ベルト、全部切られて体から剥がされていった。靴下だけはそのまま脱がされた。そして下着にも手が伸びて切り裂かれ、剥ぎ取られていった。
そして僕は一糸まとわぬ全裸となっていた。
「ククク。素晴らしい。全く非の打ち所がない」
そんなに褒められるような裸なのか。先生は顔を近づけ、僕の裸を間近で観察する。息が吹きかかってくすぐったいし、それにクンカクンカと匂いまで嗅いでいる。
まさか、先生は変態だった!?
僕は羞恥と恐怖にさいなまれた。でも、体は動かないし助けを呼ぼうにも声も出なかった。
「ふふふ。男性器の形も良いですねぇ。ああ、黒剣も連れてきてちゃんと性交できるかどうかも確認したかったですねぇ」
なんて馬鹿な事言ってるんだ。とても教員とは思えない変質的なセリフに鳥肌が立つ。
その時、窓ガラスが割れて中に何かが飛び込んできた。
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