運勢一位
キム
第1話 運勢一位
『今日いちばん運勢がいいのは、さそり座のあなた! 好きな人とステキな一日が過ごせそうです!』
「やった! 今日一位じゃん!」
学校に行く前に、テレビで朝の星座占いを見ていた。占いの結果をそんなに信じているわけではないけれど、あなたは運がいいなんて言われて悪い気はしない。
『そして今日いちばん運勢が悪いのは……ごめんなさい! かに座のあなた。何をやってもうまくいかないかもしれません。今日は仲の良い人と一緒に過ごすと良いでしょう』
「あちゃー、絵理は運勢最悪かー」
いつも一緒に通学している親友の絵理は、どうやら今日の運勢は最下位のようだ。絵理とは幼稚園からの仲だが、あんまり占いを気にする子ではなかったはず。わざわざこんな結果を伝える必要もないので、胸の内にしまっておこう。
家を出る準備をしていると、弟の翔太が眠そうな眼を擦りながら起きてきた。
「ん、由香ねーちゃんおはよー」
「翔太おはよう。お姉ちゃん、もう出るね」
「ふぁぁ、いってらっひゃーい」
カバンを手に取り玄関に向かおうとしたとき、翔太がテレビのチャンネルを変えていた。
『おめでとう! 今日の一位はかに座! 思いがけない接近があるかも!?』
あれ、さっきの番組だとかに座はビリだったけだ、この番組だと一位なんだ。適当すぎる。やっばり星座占いは当てにならないな。
でも、そっか。絵理の運勢も一位なんだ。
* * *
「絵理おはよーっ」
「もー、由香おそーい」
「ごめんごめん、朝の占い見ててさ」
「えー、何占いなんて信じてるのー?」
「いやいや、それがさ聞いてよ。今日はね、絵理のかに座と、私のさそり座が一位なんだよ!」
「は? そんなことなくない? 一位ってどれか一つだけでしょ」
「ううん、今日は二人とも一位なんだって! やったね!」
そう言って私は絵理に飛びつく。
占いの信じ方は人それぞれだ。だったら、こんな解釈をしてもいいだろう。
今日、私と絵理は、世界で一番運がいいんだ。
運勢一位 キム @kimutime
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