第6話 いざ、冒険へ!

 タイチからダンジョンについて詳しく聞いてみる。


 ここに来るまでの道中で、洞窟があったらしい。

 その中を進むと扉があり中にはレンガでできた通路が見えたらしい。


「中には入らなかったのか? 」


「さすがに俺もそこまで馬鹿じゃないよ」


 確かに中がどれだけ広いかも分からない状態だ。 なんの準備をせずに挑めば間違いなく死ぬだろう。

 いくら不死身と言われても痛いのは嫌だし、死ぬのは怖い。


「食料もあるし武器もある。それに強そうな仲間もいるしな。 それで今ならダンジョンに挑めると思ったんだ! 」


「確かに興味はある。 でも畑もあるし全員ってわけにはいかないよ」


 ダンジョンに行くとしても誰を連れて行こうか……

 ふとスズカ達を見ると、ダンジョンと聞いてワクワクしているようだ。


「ボクもソラ達と一緒なら安心できる!」


「ソラ、私も行きたい」


 こうなると選択肢はない。 普段クールなスズカが興奮するくらいだ。 やっぱりダンジョンの魅力はすごい。


「それじゃガイル、留守番を頼めるか?」


「お任せください!」


 やっぱりガイルは頼りになる。 畑はガイルに任せるとして早速準備を始めよう。

 何から始めようか……気になるとすればタイチ達の装備か。


「ダンジョンに行くとしてチエは何か武器が必要?」


「グローブとスパイクブーツみたいなの欲しい! これでも格闘技やってたから!」


 確かにチエの体は引き締まっているように見える。脚なんかすらっとしていてとても魅力的だ。


「ソラ、どこ見てるの」


 脚に見惚れ過ぎた。 チエがこっちを睨んでいる。

 チエの拳が飛んでくる前になんとかしよう。


「わかった。それならすぐに作れそうだからその間に食料とか用意してもらってもいいかな?」


 各々ダンジョンに行くための準備を始める。食料だったり武器だったり必要なものをカバンに詰め込む。



「フウカ!こっちこっち!」


「待ってよぉ……ピート」


 ふと川の方を見るとピートとフウカが遊んでいる。

 2人はだいぶ仲良くなったようで無邪気に遊んでいる。


(こうやってみると、本当に子供だなぁ)


 一瞬この子達を本当にダンジョンに連れて行っていいか迷った。 しかし、彼らから一緒に行きたいと言ってきたんだ。ピートだけでなくフウカもご主人と離れたくないと言ってくれた。


 この子達は大切な仲間だ。まだまだ小さいし絶対に守ろう。

 ピート達を見守りながら心に誓った。



「さて、みんな準備はできたかな?」


「バッチリ!」


「私も」


「俺も大丈夫だ!」


 準備万端のようだ。見た目は貧弱だができるだけの準備はしたつもりだ。


「それじゃあガイル、行って来ます! 」


「お気をつけて! 」


 ガイルに挨拶して、タイチの道案内のもと洞窟へと向かう。 道中は特にモンスターにも会わず、順調に進んでいた。


 道中ではタイチやチエと色々話した。

 ここに来てからのこと、ここに来る前のこと、2人もゲーマーであること、意外と共通点が多かった。


(やっぱりある程度RPGの知識がある人が選ばれたのか? )



 そうこうしている間に洞窟へとたどり着いた。


「ここだよ。少し暗いから気をつけてね」


「今こそ出番だな! ゴクウ頼む!」


「わかったよ! ご主人様!」


 ゴクウの手から火の玉が出て、辺りを照らす。 レベルの低いゴクウを連れてきたのは正解だったみたいだ。

 洞窟と聞いて、まず心配したのは視界が確保できるかだ。 奥へ進めば暗闇になるだろう。

 その点はゴクウのおかげで問題は解消された。


「これで心配は無しだな!」


「ありがとね、ゴクウ!」


 タイチとチエとゴクウをみると本当に家族みたいだ。 これをいうとまた喧嘩が始まるだろうと思い、からかうのをやめた。


「こうしてみると家族みたいだね」


 スズカさん!? それは今言ってはいけない!

 案の定タイチ達の口論が始まってしまった。


「スズカ、まさかわざと?」


「緊張がほぐれるかと思って」


 確かにみんなどこか緊張して力が入っていた。スズカは冷静にみんなを見ている。


「スズカはすごいね」


「ソラもね」


「そんなことないよ」


「あるよ。 いつもモンスターが出た時は率先して前に出てくれるし」


「そうかな? 結構怖いんだけど?」


「それでも私やピート達のために勇気を出して戦ってくれてる」


 改めて言われるとなんだか照れる。 確かにみんなを守らなきゃとては思っている。


「まぁ、たまに私のことエッチな目で見るのは許さないけどね」


「いや、そんなことは……気をつけます」


 ふとタイチ達を見るとこっちを見てニヤニヤしている。

 俺は2人を無視して先へと進み出す。



「この扉だ! 」


 洞窟を進むと急に立派な扉が見えた。 確かにどこから見てもダンジョンへの入り口のように見える。


「それじゃあ行こうか! 」


「行こう! 」


 全員で扉を開けると先にはレンガでできた一本道が現れた。 通路は思っていたよりも明るかった。


「本当にダンジョンみたい……」


 スズカは見惚れているようだった。 自分も見惚れていた。確かに今までモンスターと戦ったりして別の世界に来ている実感はあった。


 しかしダンジョンとなればまた話は変わってくる。

 中にはどんなモンスターがいるのか、どんな罠があるのか、そしてどんなアイテムが落ちているのか。

 全員がそんなワクワクした気持ちをしているのが分かっているようだった。


「とにかく一本道だし進んでみようか」



 一本道を進んでいくと、だんだんと周りが明るくなってきた。 どうやらダンジョンの壁自体が光っているようだった。

 この壁のレンガを使えば夜でも明るくなるかも。 そう考えると壁を削り粉を集めておいた。



 一本道を進むと扉が左右に一つずつ見えた。


「どっちに進む?」


「左でしょ」


「いや、普通右でしょ」


「とりあえず両方開けてみて中を見てから決めれば? 」


 スズカの一言でとりあえずそっと扉を開けることにした。こんな時冷静なスズカは頼りになる。

 右の部屋には狼の姿をした人狼のようなモンスターが一体いた。 明らかに強そうだが奥の方に何か落ちているのが見えた。


 左にはスライムのようなモンスターが大量にいてその先に階段のようなものが見えた。


「さてどうする?」


「右! 」


 全員が同時に言った。強そうなモンスターよりも奥にあるアイテムが気になるのか、それともこの階層全てを探索してから次に進みたいのか。

 俺の場合は後者の方だ。


(やはりダンジョン探索は個性が出るよね)


 満場一致で右の人狼のモンスターへと挑む。

 体は俺たちよりも大きく、爪も鋭い。 今の装備だと一撃でも食らえば致命傷だろう。



 全員が装備を確認し深呼吸して扉の前に立つ。

 初めてのダンジョン、初めてのモンスター、何が手に入るのか期待を胸にいざモンスターへと挑む。

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