第3話 初めての仲間!?

 目の前の意味不明な大きな魚?を前に2人で棒立ち状態になっていた。 なぜこうなってしまったんだろう。


「どうする? 」


「どうするって言っても胴体は魚だし多分食べれるよね? 」


「私に言われても……」


 確かに……とりあえず倒そう。


 そこら辺に落ちてる小石を持ち上げて魚の頭めがけて投げた。 小石は魚の頭へとめり込んだ。


「おっ命中したな」


「避けることすらしなかったね」


「知能はあんまりないのかな? 」


 倒れ込んだ魚に近づいてみる。 どう見ても魚だ……足があることを除けば。

 とりあえず足を引っこ抜いてみる。 やっぱりどう見ても普通の魚だ。


「じゃあとりあえず拾ってきた物と合わせて何か作ってみるね? 」


「ありがとう、お願いするね」


 そういうとスズカはたき火の方へと歩いて行った。


 スズカはかなり料理好きらしい。 料理の他にも家事はなんでもできるそうだ。


(良い奥さんになりそうだ……色白で綺麗だしクールに見えても人当たりがいい)


「モテるんだろうなぁ、俺なんかとは不釣り合いだ」


 自分で言って悲しくなる、でも事実だ。

 身だしなみなんてあんまり気にしたことがない。 真っ黒な髪だって目にかかるのが嫌って理由で短くしてる。


「そもそも俺の身長とスズカの身長同じくらいだもんなぁ

 」


 俺だってそこそこ背は高い方だかスズカも背が高くスタイルが良い。

 胸だって大きすぎず、小さすぎず……


(って、俺は何を考えているんだ! )



 俺だって健全な男だ。

 こんな森の中、美少女と2人きりになれば気になる。

 だか、今はモンスターの出る森に2人きりなんだ。

 スズカだって不安に違いない。 俺が守らないと!



 スズカを待つ間、少し離れた所で枯葉を集めた。 床にひけば簡単な寝床にはなるだろう。

 辺りはだいぶ暗くなり、かなり冷え込んできた。



「とりあえずご飯出来たよ」


「早いね」


 女の子の手料理なんて初めてだ。 ましてや今日は動き回ってお腹が空いてる。

 しかし、さっきの魚かと思うと微妙な気持ちになる。


「とりあえず魚は焼いてみたけど……もちろんソラからだよね? 」


「そこは公平にジャンケン……」


「ソラからだよねっ? 」


 スズカが笑顔でこちらを睨みつける。 笑っているはずなのに怖い。

 こんなの拒否出来るわけがない。


「なら同時に食べようよ」


「しょうがないなぁ」


 有難い。正直1人じゃちょっと食べる気になれない。


「じゃあいくよ? せーの! 」


 目の前の1匹の魚に2人でかぶりつく。

 あれ? 普通に美味しい!

 白身だから味はすっかりしているけど、少し甘みがある。

 塩とか醤油が欲しいけど、贅沢は言えない。 それに空腹が何よりの調味料となっている。


「これ、美味しいね!」


「確かに普通に美味しい……」


 正直びっくりした。

 あれがこんなに美味いとは……


(明日は釣り頑張ってみるか)


 他にも果物や草なんかを食べてみる。

 斧を使った時に気づいたけれど、この世界では一度使ったものの情報が頭の中に流れるみたいだ。

 一度食べれば何なのかわかるかもしれない。


「じゃあ今度こそジャンケンをしよう。買った方から好きなのを食べていく」


「わかったよ」


 先ずはスズカから果物を手に取った。


「りんごの味がする、体力を回復するって! 」


「それは良いね! じゃ次は俺だね」


 とりあえず無難そうな果物を手に取り、かじった瞬間にガキンという音がした。


「固い! これは食べれないな……でも水につけると食べれるって!」


 それにしても固すぎる。 歯がかけていないか触って確認してみる。


「歯、大丈夫?」


「大丈夫! それよりこの果物、解毒効果アリだって! 」


 食べられ上に、回復効果まであるのか。

 なかなか幸先が良い!


「じゃ次は私だね。」


 そういうとスズカは最後の果物を手に取る。


「これは少し辛いね……後は体が熱くなってきたかな……」


 どうやら保温効果があるようだ。 肌寒くなってきたしこれは有難い。


「熱い……」


 スズカはそういうと羽織っている上着を脱いだ。

 目の前のスズカはノースリーブで、胸の谷間まで見える。

 ゆらゆらと揺れる炎のせいでよく見えない。 なんてもどかしいんだ!


「ど、こ、を、見てるのかな? 」


 スズカは怒っているようだ。

 当たり前だ。


「つっ、次行ってみよう! 」


 話題をそらしつつ残りの食べ物を2人で食べた。

 お腹が空いていたことも相まって山盛りにあった食べ物はあっという間になくなってしまった。


「結構色々な効果があるっぽいな……」


「そうだね……君が食べた雑草以外は」


 まさかただの雑草があるとは思わなかった。

 確かにゲームではたまにあるけど……



 おなかも膨れたし、今日は早めに寝ようか?

 罠があるけど一応見張りは必要かな?


「一応俺が見張るから先に寝てて良いよ」


「わかった。なら途中で交代ね」


 そういうとスズカは俺が作った簡易の寝床で横になる。 夜は冷えるから上着をかけてあげる。

 するとスズカはあっという間に眠ってしまった。


(やっぱり無理をしていたんだな)


 1日中歩き回ったあげく、料理までしてくれたんだ。 疲れていないわけがない。


(ありがとう、スズカ)



 スズカが寝てからしばらくした後、じはらくして睡魔が襲ってきた。 なるべく耐えたがもう限界だ。

 スズカと交代してもらおうと、声を出そうとした瞬間、後ろの方でものすごい音がした。


「何!? 」


 スズカがびっくりして飛び起きた。

 どうやらさっき設置した罠が起動したようだ。


「罠にかかったみたいだ。様子を見てくるから少し待ってて」


 たき火から枝に火を移し、松明を作った。

 罠を仕掛けて方向を照らしてみる。 案の定罠は起動していた。

 罠の様子を見ると、そこにはゴブリンが2体石の山に潰されていた。


「昼間の仲間かな……てことはまだまだいそうだな」


 とりあえずスズカの元に戻り、報告した。


「罠があって良かったね」


「うん、でも油断はできないからこのまま朝まで起きてるよ」


「なら一緒に起きてる」


 そこからはまた2人で話し出した。


 仲のいい友達のこと、お互いひとりっ子であること、犬派か猫派どっちか、本当に他愛の無い話が続いた。



 ふと会話が途切れた。 スズカの方を見ると眠ってしまっていた。

 スズカの顔を覗き込む。 まるで人形のように整った顔がとても綺麗だ。 つい見つめてしまう。


「これからずっとスズカと生活しないといけないんだよな」


 パートナーからは離れられない。

 それが神様が言っていたルールだ。


「先ずは信頼してもらえるように頑張らないと……不安にさせないようにしよう! 」


 スズカの横顔を覗き込みながら静かに決意した。



 木々の隙間から陽の光が差し込む。 心地よい風と葉っぱがなびく音で目がさめる。

 すぐさま寝むってしまった事にに気づき、すぐ体を起こそうとするが起きれない。


 体が重い……昨日の疲れなのか。 いや、違う、何か体にのってるんだ。


 嫌な予感がしたが予感通りだった。暖かな感触、良い香り、間違いなくスズカが抱きついている!


 これはまずい、色々とまずい!

 何とか起こさないようにしなくては。


 先ずはゆっくりと向きを変えてみる。

 スズカを起こさないようそっと…しかしスズカに引き寄せられ阻止される。


 起きてないよな……ふとスズカをみたその瞬間、目の前には2つの山があった。山はとても柔らかそうで少し動くたびにプルプル震えていた。

 さらにまずい、なるべく見ないように向きを変えてみる。 本当は見たいけど……


 本当は見たいけど!


 すると今度はさらにまずい状況が見えた。

 昨日の夜に罠にかかったゴブリンの死体を狼のようなものが食べている。

 しかも1匹だけではなく3匹もいる。


(こっちもやばい、気づかれる前に何とかしないと! )


 後ろにはスズカ、前には狼がいる。

 天国と地獄みたいな状況だが、俺はテンパりまくっていた。 考えがまとまらない。


(落ち着け! スズカを守るんだ)


 スズカを守ると心に決めると、自然と頭の中が鮮明になってきた。

 一度深呼吸をしてさらに心を落ち着かせる。


(よし、先ずは何か使えないか探そう)


 周りには昨日作った罠、魚の食いかけ、斧、ロープがある。


 先ずは食いかけの魚にロープに結ぶ。 ロープを軽く振り回してからそして罠の真下へめがけて投げつける。


 魚が地面に落ちた音に気付き、狼たちは魚の方へとやってきた。


(そのまま、こっちに来るんだ! )


 狼が魚に噛み付こうとした時、思いっきり魚を引っ張る。 魚はうまく罠を起動し、狼たちを岩の下じきとなった。


「よしやった!」


「何!? 何の音? 」


 スズカが飛び起きると同時に自分の衣服が乱れていることに気づき、すぐに戻した。

 スズカはジッとこちらを睨みながら、顔を赤くしている。


「変なことしてないよね? 」


「大変だった」


「してないよね? 」


 本当に大変だった。しかし俺は頑張った。

 心の中で自分を褒め称えつつも、まだ修羅場は続いていた。


(とりあえずスズカに弁明するか……)



「その狼は?」


 やっと信じてくれたスズカだが、頬が痛い。

 まぁビンタ一発で信じてもらえたんだ。 何も悪いことしてないけどね。


「昨日のゴブリンの死体を食ってたんだ」


「危なかったんだね……起きなくてごめんね」


 むしろ起きなくて助かった。

 起きてたらもっとやばかったかもしれない。


「それよりもお願いがあるんだけどいい?」


「何?」


 昨日と今日モンスターを倒して気づいたことがある。


 モンスターを倒すとどうやら経験値が入るみたいだ。 しかしスズカには入っていないみたいだった。


 仮説として戦闘に参加すれば貰えるのか、それとも倒した人だけが貰えるのか知りたい。


「スズカにあの狼にトドメをさしてほしいんだ」


「あの子に? 」


 スズカは一瞬、悲しそうな顔で悩んだが頷いてくれた。

 本当に優しい子なんだな……だけどこれからここで生きてく限りは通らなければならない道だ。


「狼さんごめんね……」


 スズカもわかっているみたいだ。 躊躇いつつも斧へと手を伸ばした。


 スズカは手に持った斧を振り下ろしトドメをさした。


 狼はか細い声と共に動くのをやめた。

 スズカが小さな声でごめんねと言ったその瞬間、狼の死体が急に輝きだした。


「なんだ!? 」


 眩しい光のせいでなにも見えなかった。 突如起きた現象に戸惑う。

 次第に光がおさまってくる。 死体があった場所に目をやるとそこには驚くべきものがあった。

 なんとタマゴがおちていたのだ。


「これってさっきの子のタマゴかな?」


「多分そうだと思う」


 スズカがタマゴを持ち上げようとした瞬間、タマゴにヒビが入った。


「どうしよう! 割れちゃった……」


「いや、産まれるみたい! 」


 パリン! という音と共に、タマゴが割れた。 中からは小さな狼の子供が出てきた。

 見た目は全体的に銀色の毛皮にところどころ青色が混じっている。

 毛並みはとても綺麗でモフモフしていた。


「か……かわいい……」


 スズカは生まれたばかりの狼に見惚れていた。

 恐る恐るスズカが手を伸ばすと狼の赤ちゃんはスズカの手を舐め出した。


「スズカのことお母さんだと思ってるんじゃない? 」


「この子本当にかわいい……」


 はたから見ると女の子と子犬が戯れてるようだ。 何というか1つの完成された絵のようだった。


「一応モンスターなんだよね? 」


「うん、シルバーウルフだって! 」


 スズカに聞いてみた所、頭の中にモンスターの情報が流れ込むように分かるみたいだ。

 俺にも同じように流れてくる。 これはパートナー同士だからかもしれない。


「せっかく懐いてるしこのまま一緒に連れてく? 」


「うん! 」


 今のスズカにクールな印象は微塵も感じない。 むしろ純真無垢な幼い子供のようだ。

 笑顔でスズカを見つめていると、こちらの様子に気づいたようだ。 頬を赤くしていつものクールな顔に戻ってしまった。



「じゃあ名前をつけないとね」


「この子の名前はピート! 」


「ピートか……いい名前だね! 」


 ピートも喜んで見えるよ。

 2人から1匹仲間が増え、本当にRPGみたいだ。


「よし! 色々あったけどまずは朝ごはんにしようか! 」


「お腹すいた! 」

「お腹すいた! 」


 んっ? スズカ以外の声が聞こえた気がする。

 スズカにも聞こえたらしくあたりを見渡すが誰もいない。


「今の声ってもしかして?」


「もしかする?」


 スズカと同じタイミングで足元に視線を落とす。

 足元には元気に尻尾を振っているモフモフがいる。


「ピートお腹すいた!」


 ピートがしゃべってる!

 正確には声が頭に響いてる感じだか、はっきりと分かる。


「ピート! あなた喋れるの? 」


 スズカが倒したからなのか、ピートは人の言葉を伝えることが出来るみたいだ。

 狼と話せるなんて夢のようだ。 この世界に来たこと事態、夢のような話だが……


「うん! ご主人様の声分かるよ! 」


 神様が言っていたことを色々思い出した。


 こんな感じで仲間を増やして行けば良いのか?

 それともモンスターをたくさん倒して強くなるのか。

 それとも色々な所を冒険するべきか。


 これからスズカとピートと3人でどうするか決めていかなければならない。


(まずは目標を決めよう。 一つ一つこなしていけばやれることは増えるはずだ)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る