49話目
朝一で全校集会があったけど。授業中は特に変わったこともない何時も通りだった。
今日は恋伽も夜玻も部活がないみたいで三人で帰ることになった。ほんとは部活あったんじゃって聞いてみたけど、二人とも「部活はない」って言ってるしクラスの同じ部活の子にも聞いたら無いって言うから本当にないのかな。
「んじゃ、さっさと帰ろうぜ。寄り道するのはほとぼりが冷めてからってことでよ」
「全く、当たり前でしょ。寄り道なんてしないわよ」
また喧嘩してる。
「喧嘩は駄目だよ二人とも」
「喧嘩じゃないぜ。そう見えるかもしんないけどな」
「そうそう、喧嘩するだけ疲れるし。日常会話のうちよ」
「そう?」
ずっと一緒にいるけど、こういうのはあんまり見たことないからわかんないや。夏休みから見るようになった気がする。
両脇を二人に挟まれて、たわいもない会話をしてると。急に目の前に手のひらが出てきて、止められた。手は夜玻が出していた。そのまま僕の前に立って、前の方を見てる。
「どうしたの?」
「前見てみろよ」
言われるままに、夜玻の背中から顔を出して前を見たけどよくわからなかった。
「なに?」
「あそこに突っ立ってる人いるだろ。きょろきょろしてる」
もう一回見ると、遠くに辺りをきょろきょろしてる人がいた。
「いるわね。だから何なのよ」
「多分あれ記者だ。あんな感じの服を着てるって聞いたんだ」
「それ本当なの?」
「多分だけどな。でもなんか怪しいだろ見た感じ。待ち合わせなら、スマホなり時計見るもんだろ?」
確かに、ずっとあっちこっち見るだけで。それ以外何もしてない。
「まあ、きょろきょろしてるだけなら怪しいわね」
「ちょっと怖くなってきた」
だって、探してるのが僕かもしれないわけだし。聞いてることも僕のことで。そう考えると、ぞわって感じがして鳥肌が立つ。沢山人がいるとこも怖いけど、こういうのも怖いって思う。
鳥肌がっ立った腕をさすってると、後ろから抱きしめられた。前に夜玻がいるから、恋伽に抱きしめられた。
「大丈夫よ、夜玻が前にいるから紗奈は見えてないし。まだ距離もあるから、気づかれてないわ。でも、この道は通れそうにないわね」
恋伽に抱きしめられて、恋伽の体温を感じて少し鳥肌が収まって来た。
「しゃあない、少し戻って電車に乗るか。少し遠回りになるけど、見つかるよりは良いだろ」
「そうね、紗奈もそれでいい?」
「うん」
歩いてきた道を少し戻って、地下鉄に乗る。改札を抜けて、ホームに降りるとちょうど乗りたい電車が来た。扉が開いて、降りてくる人が居なかったから乗り込むと。結構人が乗ってて。座る場所がなさそうだった。
「まだ四時過ぎなのに混んでるな。別の車両にすればよかったか」
「乗ってから言ってもしょうがないでしょう。ほら早く壁になりなさいよ。紗奈はこっち」
恋伽に引っ張られて、壁の方に連れてこられる。それから夜玻が僕と恋伽の前に来て文字通りに壁になってくれた。
家に一番近い駅は二駅先で、その間夜玻は吊革につかまって壁になってくれた。そのおかげで、乗ってくる人にぶつかることもなかった。全く知らない人にぶつかるだけでも、いまだにパニックになることがあるから助かった。
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