47話目

 次の日、早速クレープを言い出した子が試作品を持ってきた。と言っても皮のなんだけど。タッパーに三つくらい入って来た。


「これがホットケーキミックスで。これ小麦粉の水っぽいの、こっちが濃いのなんだけど」

「ホットケーキにそれっぽいのになんかよくわかんないのか」

「できそうだろ」

「できそうだね」


 こうして、クレープが屋台で出来るめどが立ち。文化祭でクレープと焼き鳥の屋台をすることになったのでした。

 すんなり決まったけどこれって、


「あれ、もうやることない感じかな」


 一緒にいた雪野君に聞いてみた。


「そうだね、やることは決まったから。実際に忙しくなるのは文化祭の近くだと思うよ」

「えっと今が八月だから三ヶ月後?」

「そうなるね。学期末だから」

「長いなー」


 そうして、案外早く終わった文化祭の決め事。放課後に残らないといけないかもって思ってたけど、そういうこともなさそうで。いつも通り、夜玻と恋伽と帰れると思ったんだけど。夜玻に止められた。



「帰らないの?」

「いや、帰りてぇんだけどな。記者っぽいのが学校に来たとか、学校の近くで取材してるって聞いてな」

「それどこからの情報よ」

「最初のは中嶋先生、二つ目が帰ってるクラスの奴からの連絡。ちなみにクラスの奴が聞かれたのは、「の人を知らないか」だそうだ」

「それって」

「考えたくはないけど、紗奈のこと嗅ぎまわってんじゃないか」

「だってあんなにテレビニュースになった後よ。今更どうして」

「中嶋先生は、学校の誰かが話を売ったんじゃないかって」

「はぁ?」


 わっ、恋伽怒ってる。怒気がすごい。クラスもみんなの顔が引きつってる。


「わかんねえけどな。単純に記者が自分でかぎつけたかもしんねぇし」

「結局その記者にのとこまで紗奈の情報が行ったってことは、誰かが話したってことなのよ。もしかしたら面白半分に学校の誰かが、ネットに情報を流したかもしれないでしょ」

「いや、まあ、そうかもだけどよ」

「それで、今その記者はいるの」

「クラスの奴が足止めしてるらしいぞ。だから今のうちに行けって」

「それを早く言いなさい、この馬鹿っ!」

「あでっ!」


 恋伽も夜玻を鞄で殴ることないんじゃないかな。恋伽のカバンいつも教科書入ってるから痛いと思うんだけど。


「紗奈も、行くわよ」

「あっ、うん」

「馬鹿もサッサッとする」

「俺の名前は馬鹿じゃねぇ」

「足止めの時間も限られてるの。ほら行くわよ」


 恋伽に手を引かれて、後ろには腕をさする夜はと一緒に。家まで帰った。家まで三人でかえって、家についてからも、二人はリビングにいた。そして今、姉さんもいる。


「学校は今頃大慌てでしょうね」

「なんで?」

「簡単な話よ。生徒の個人情報が外部に漏れたから。そもそも話は教育委員会から来てるんだもの。確実に生徒だったときは停学か退学になるでしょうね。まあ、その記者の記者よ。会見で、患者へのインタビューなどはしないようにメディアに釘刺したのに嗅ぎまわってるんだから」

「えっと僕はどうすればいいの?」


 僕にはいまいち話が分からないというか。


「とりあえず一人で出歩かないことね。その記者につかまれば面倒だし。インターフォンなってだちゃだめよ。夜玻君と恋伽ちゃんも来るときは紗奈に連絡して、家に付いたらまた連絡しなさい。紗奈はくれぐれも連絡がない時はインターフォンに出ないこと。わかったわね?」

「うん」

「学校に行くときは、二人のどちらかと行くといいわ。私がついていくと怪しいからね。だから二人には申し訳ないけど、朝練とか被らないようにお願いしていいかしら。この件が収まったら、焼き肉おごるから。ね?」

「もちろんです」

「任せてください!」


 夜玻が元気なのは、お肉につられたからかな。


「ありがと。私の方からも、どうにかできないかやってみるわ。昔のコネがあるからね」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る