45話目

 朝ぁ暑い。

 湿気が多いじめっとした朝。僕が嫌いな夏。

 夜にかいた汗でブラジャーとかが湿ってて気持ち悪い。あと体も。男の子の時はそうじゃなかったのに、女の子になってから違うことがあって戸惑う。胸の下が蒸れるなんて聞いてないよ。あせもになる前にシャワー浴びよ。


 シャワーを浴びてすっきりした僕は、今日も姉さんを起こしに行く。


「姉さん」


 ちゃんとノックをしたけど返事がなったからそのまま中に入る。返事がないからそうなんだろうなって思ってたけど。姉さんは寝てた。それもかけてたタオルケットを蹴飛ばして、手と足がベットから落ちてるひどい寝相で。よほど暑かったのかお腹も出てる。

 仕事してたり、僕以外の誰かがいればかっこいいのにな。家にいて僕だけしかいないと途端にだらしなくなる。

 せめてお腹くらは隠して欲しい。


「姉さん朝だよ」

「紗奈ーーあつーーい」

「僕も暑い」

「起こしてーー」

「もう、仕方ないな」


 なんだかんだで、僕も姉さんに甘いからだらしないくらいがちょうどいいのかもしれない。

 ベットに登って、姉さんの手を掴んで引っ張る。身長差と体重差でどうやっても起こせないんだけど、引っ張れば起きてくれる。

 時もある。


「紗奈の手冷たーーい」


 なんて言いながら逆に引っ張られて、そのまま姉さんの上にダイブ。だらしないクッションで痛くはないけど。なんでこうなったの。


「紗奈冷たい、なんでなんで」

「シャワー浴びたからじゃない」

「そっか、じゃあ浴びてこよ」


 そのまま部屋を出ていった姉さん。


「なんで僕は抱っこされてるの」

「どうせなら紗奈と洗いっこしようかなって」

「さっき入ったって言ったよ」

「いいじゃない、いいじゃない。減るもんじゃないし。昔はよく洗いっこしたでしょ」

「それだいぶ昔の話。入るなら一人で入ってよ。ご飯作らないといけないんだから」

「じゃあ夜ね。はい」

「夜も一人ではいる」

「じゃあ勝手にはいるからーー」

「姉さんまっ」


 て、って言い終わる前に脱衣所に消えていった。夜は姉さんにバレないように入ろう。うん。

 夏だから簡単に朝はお茶漬けにした。昨日の鮭の切り身を解して、海苔とか入れて、あとは温かい麦茶を注ぐ。

 お茶漬けの元があればよかったんだけどなかったから手作りになっちゃった。多分姉さんがお昼とかに食べてるんだと思う。面倒くさがって作らないから。


「あーさっぱりした。おはよう紗奈」

「おはよう姉さん」

「あっ、お茶漬け。元きれてるから買ってきてちょうだい」

「梅、鮭?」

「梅の気分かな」

「わかった」

「あとこれ」

「何?」


 どこから出したのか分からないけど、ボディーシートがテーブルの上に置かれた。


「汗かいた時に拭かないと汗疹になるから。持って行きなさい」

「姉さんこれ、使ったでしょ」


 明らかにボディーシートは口が空いたあとがあって量も少なかった。


「姉さんは買ってきた新しいの使うから、途中のだけどあげる」

「普通逆じゃない?」

「肌に合わないかもしれないんだから、新しいのよりそっちの方がいいでしょ。ダメだったら新しい方と交換、ね?」

「そういうことなら、わかった」


 言いくるめられた気もするけど、姉さんの優しさが伝わってきたから納得することにする。ちょうど今日体育だったし。

 ジャージをカバンに入れて、ボディーシートも入れて。日焼け止めも塗って、日傘をさして家を出た。

 なるべく日焼けはしなくないから、日傘は必須なのだ。



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