44話目

六時限目が終わって、掃除とかも終わって放課後。掃除場所から教室に帰ってきて、教科書を鞄に入れてるときだった。夜玻に声をかけられた。


「今日どっか行くか?」


夜玻の口からどこかに行こうって言葉が聞けるとは思わなかった。


「夜玻、部活ないの?」


僕は帰宅部で夜玻と恋伽は部活に入ってる。二人とも部活が忙しいみたいで、放課後に遊びに行くことはめったにないんだけど。


「今日は部活休みなんだよ」

「私も部活ないわよ」


掃除から戻ってきた恋伽がそう言って近づいてきた。


「恋伽も部活ないの?」

「夏休みの調子が抜けてないからって、来週からなのよ」

「俺の方は顧問の先生が、夏休み明けなのに出張で今週いないから部活できないんだよ」

「そうなんだ。でもどこ行くの?」

「適当にぶらつくとか」

「ぶらつくにしても、何処ぶらつくって話なのよ」

「じゃあ、帰りに寄り道して帰ろう。それなら大丈夫だろ」

「食べ歩きね、結構久しぶりじゃない?」

「夏祭りの時にしたよ」

「あれはたしかに食べ歩きだな」

「とりあえずすること決まったんだし、早く行きましょ」

「何気こういうので一番楽しそうにするのって恋伽だよな」

「たしかに」

「何してるのよ二人とも」

『今行くよ』


ぶーらりぶらぶら。帰り道に寄り道すると言っても、いつもの帰り道じゃ寄るところがない。だから少し道を変えて帰ってた。

路地裏を通るんじゃなくて、表通りを歩いた。少し遠回りだけどこっちの方がお店が多いから、食べ歩くにはちょうどいい。


「やっぱりクレープは食べ歩きできる中で最高のスイーツよね」

「アイスも一緒じゃない?」

「アイスだとすぐに溶けちゃうじゃない」

「そもそもクレープにもアイスは言ってるからな」

「つまりクレープはアイスもフルーツも楽しめて一石二鳥ってことね」

「バナナ美味しい」

「俺はいまいち腹に溜まらなくて食った気がしないけどな」

「夕飯食べれなくなるでしょ、このくらいでいいのよ。ね、沙奈」

「僕は大分満足したけど」


おっきいクレープはだったし、もともと小食だから満足。夕飯はちゃんと入るし問題もない。でも今日何にしよう、暑いしそうめんでいいかな。


「沙奈は小食だからな」

「ちゃんと夕飯食べれるから大丈夫」

「じゃ帰りましょう。他に行きたいところないわよね?」

「僕はないよ」

「俺もない」


そのまま、いつもの帰り道に戻って歩いてた、懐かしい歌が聞こえてきた。ちょうど幼稚園の近くを通った時だった。


「かーごめかごめ。かーごのなーかのとーりいは」

「これなんの歌だっけ」

「あれよ、一人を囲んでする遊びの歌」

「あれか、俺いつも外で鬼ごっことかばっかしてたな」

「僕はやったことある」

「今思えばあれって、後ろから目隠ししてだーれだってするのの亜種だよな」

「似てるといえば似てるわね。今はもうそんな遊びしなくなってゲームばっかりだけど」

「なら競争でもするか?」

「夜玻が勝つにきまってるでしょう。勝負にならないわよ。ね、沙奈」

「夜玻、前から早いから無理」

「面白いと思ったんだけどな」

「今勝負できるのは、ゲームの腕くらいよ」

「お、やるか」

「家に帰ってからにしよ。暑い……」

「そうね、沙奈が溶けちゃう前に帰って、それから遊びましょ。もちろん宿題してからよ」

「わかってるって、プリントだけだからすぐだって」

「そうやって、後回しにして学校でやることになるのよ」

「恋伽、夜玻」

「ごめんごめん、早く帰りましょ」


暑い早く帰りたい

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る