43話目

 授業と授業の間の時間。皆は次の授業の準備とかをしたり、友達のところに行って話に花を咲かせてた。

 僕も僕で、夜玻と恋伽と話したり一緒にいる。夏休みが終わっても夏が終わったわけじゃないから、窓際にいる僕は日光が直接当たって暑い。カーテンを閉めたりもするけど、それでも暑いのは変わらなくて汗ばんでくる。

 前と違って女の子になってからは少し汗をかきやすくなった気がする。

 今も汗で背中にワイシャツがくっついて気持ち悪い。


「暑い」

「紗奈は暑いのにめっぽう弱いからな。ほら、少しは涼しいか」


 夜玻が教科書で扇いでくれて、風が少し顔にあたって涼しい。下敷きじゃないから大変だと思うのに。


「ありがとう」

「気にすんな」

「それにしても朝のあれ、酷かったわね。一部変な視線もあったから睨んでおいたけど」


 視線。女の子になってからはどこを見られてるかとか、何となくわかるようになってた。前は分からなかったのに、女の子の本能なのかな。

 朝に夜玻の後ろに隠れて教室まで来る時、色んな視線を感じた。そのほとんどが、僕の体を見てて、偶に強い視線を胸とかお尻とかに感じで少し怖かったのもある。だからずっと夜玻にくっ付いて歩いてたんだけど、歩きにくくなかったかな。


「お尻とか胸とか体みんな見てた。でも夜玻はずっと僕の顔ばっかり見てるの。なんで?」


 恋伽とクラスにいる女子の目付きが鋭くなって、背後にゴゴゴゴゴって擬音がつきそうなくらい怖い。

 でも直接的に怖いんじゃなくて、近ずきにくい怖いだった。

 多分怒りみたいなのが僕に向けられてないからだと思うんだけど。

 クラスの男子はスって距離を取ってた。触らぬ神に祟りなし。近ずいたら危ないって思ったのかな。

 目の前にいる夜玻は苦笑いしながらも楽しそうだった。


「なんでって聞かれても、話す時とか相手の顔見ないとダメだろ」

「そっか確かにそうだよね」

「友達なんだから普通じゃない。もし見てたら軽蔑するわ」

「別に夜玻になら見られても気持ち悪くないんだけど。ちょっとに気になる程度で」

「ちょっと夜玻あんた見てたの!」

「誤解だって、あれだよ多分ブール行った時だって。なっ紗奈」


 えっと、多分そうかな?あんまり覚えてないけど。


「たぶん。いつも顔とか首とか見られてるから」

「ほらな」

「首も首でどうなのよ、うなじフェチな訳」

「そんな趣味ないわ!」

「うなじフェチってなに?」

「さ、紗奈は知らなくていいのよ。ね、夜玻!」

「おう、知らなくていい事だから忘れとけ」

「わかった」


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