41話目
今日からが二学期で、まだ夏休みならよかったのにと思いつつ起きる。夏闇の終わりは毎年のことながら憂鬱な気分になるが、今年は違う。
すごく心配だ。夏休みの宿題が心配なわけじゃなくて、いや待て大丈夫だよな。
大丈夫だった。てっ、俺の宿題はこの際どうでもよくて沙奈のことだ。花火大会の帰り道、あんなことがあったせいもあって沙奈のことが気になって仕方ない。
級から学校が始まるけど、沙奈がいじめられ足りしないかと心配だ。
クラスの連中は、まだ浅い付き合いだがそれでも大丈夫なはずだ。これに関しちゃ恋伽も同意見だしな。
ただ他のクラスの連中、とくに上級生が心配だ。進学校て言われてるが、上級生にはガラの悪い生徒もいるって噂だからな。
学年ってのは思ったよりも厄介で、ガラの悪いグループに目をつけられたら抵抗のしようがない。
全くないわけじゃないが、まだ時期が悪い。せめて秋ごろにならないと難しい。
曽於嫌今何時か見てなかったと、スマホを見たら七時四十分だった。今日は沙奈の家まで、迎えに行く約束をしていてそれが八時だったはず。もうに十分しかねえ!
「母さん起こしてくれてもよくねぇか」
急いで朝ご飯を食べつつ愚痴を言う
「起きないあんたが悪いんでしょ」
「そりゃそうだけどよ。よし行ってきます!」
「気を付けるんだよ」
急いで自転車をこいで沙奈の家に向かう。ギリギリ間に合うはずだ!
「はあはあ……」
「夜玻、あんた寝坊したわね」
沙奈の家に着くと既に恋伽が待っていた。
「昨日の夜寝れなかったんだよ」
それこそ沙奈のことが心配で昨日の夜はなかなか寝付けなかったんだ。
「そう、まあ間に合ったから今回は何も言わないであげる」
「それはどうも」
なんて言ってる間に恋伽がインターフォンをおしてた。息を整えつつ、沙奈が出てくるのを待つ。
「おはよう」
扉を開けて出てきた沙奈は女の子だった。いや、少し前から女の子になったから、今女の子になったわけじゃないし。服も女物をきてたから、女の子だったんだが。
制服を着ている沙奈はすごくかわいくて。いつもかわいいけど、制服はなんか違って。
というか、スカート短くないかこれこれ。恋伽も同じような長さだし、学校の女子も大体こんなものだけど。沙奈だと短く感じるのはなんでだ?
「おはよう沙奈、似合ってるぜ。恋伽よりな」
「何よそれ! 沙奈似合ってるわよ。本当にかわいいわね、これは違う意味で心配だわ。夜玻ちゃんとするのよ」
「言われなくてもわかってるよ。ほら沙奈行こうぜ学校に」
「うん!」
恋伽よりかわいいといったことに反論がないことに少し驚いたが、まあ恋伽もそう思ってるんだろうな。
「それじゃあ、俺たちは先に教室行ってるぜ」
「またね沙奈」
「うん」
学校についてすぐに沙奈と別れた。普通になるわけがないからな、先生から紹介があるんだと。
「おはよう」
「おう、おはよう」
クラスの連中に軽く挨拶をして座る。恋伽はおしゃべりしに他の机に行った。
「夜玻君」
「ん、雪野か。プールの時はありがとな」
「たまたま、あの場所に居合わせただけだから。僕がいなくても夜玻くんがどうにかしてただろ?」
「それでも、二人に何かあったかもしれないからな」
「わかったよ。そういえば沙奈君のまだ来てないみたいだけどなにかあったの?」
「あー、沙奈は遅れてくるんだ」
「夜玻君がそういうなら、そうなんだろうね。それじゃあ」
「ああ、また」
窓の外を見つつ、本当のことを話せないことにもどかしさを感じていた。
そのうち先生がやってきて、ホームルームが始まった。
「沙奈ちゃんー。いいわよー」
「えっと失礼します」
教室に入ってきた沙奈は見るからに不安そうだった。それもそうだ教室の皆が沙奈のことを見ている。
驚いているというより状況についていけていないって感じに見える。まあ普通そうだよな。夏休み前までは男の子だったのに女の子になってるんだから。
今喋ることができないから、気持ちだけでも沙奈を応援する。
「沙奈です。女の子になちゃいましたけど。よろしくお願いします!」
気持ちが伝わったかわからないけど、沙奈は元気よく挨拶をしてお辞儀した。それがまた可愛いんだ。
そしてクラスの皆が復活した。復活した理由は簡単だなこれ。俺も思ったし、たぶんこんな感じの理由だろ。『可愛いから細かいことはいいや』ってな感じで。
事実、緊急アイコンタクトクラス会議が開かれてる。主に男子の間で。
(ファンクラブだ!)
(馬鹿野郎ここは親衛隊だろ!)
(どうでもいいわよそんなこと。とにかく変な気起こすんじゃないわよ)
あっ、恋伽が参加した
(じゃあ親衛隊だな! 隊長はよ……いや恋伽さんで)
恋伽の奴にらんでまで意見変えさせるかよ普通。
(副隊長夜玻で)
(はぁ!?俺かよ)
(やりなさいよ夜玻)
(わかったよ)
(委員長も副隊長ってことでいいな!)
(おう!)
(いいのかよ雪野)
(いいよ。誰かが守らないといけないだろうし。その力があるなら使わなくちゃね)
(助かる)
こんな会話が沙奈が頭を上げる間になされていた。沙奈の知らないうちに親衛隊まで出来上がってるし。言わない方がいいよなたぶん。
まあこれでクラスの連中は大丈夫だろう。味方にもなってくれたことだしな。
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