38話目

「雪良かったの?」

「何が?」

「紗奈と夜玻ともう少し話さなくてよかったのってことよ」


 花火大会が終わった帰り道、途中で紗奈と夜玻と別れた私は雪ちゃんと一緒に帰っていた。

 花火大会の屋台を見て回ってる最中に、会場の電気が消えちゃって。

 紗奈がいなくなっちゃった時は、心臓が止まるかと思ったけど。

 運良く雪ちゃんがいてくれて本当に良かったわ。

 本当は今日一緒に行かないって誘ってたんだけど断られたから。

 来ていてほんとうにびっくりしたのよ。


「うん、後でちゃんと話そうと思ってるよ。いつでも会えるわけだからね」

「そう、雪ちゃんがそれでいいならいいけど。それにしても来てたなら教えてくれたら良かったのに」

「邪魔したら悪いと思ってね、連絡しなかったんだよ」

「邪魔だなんてそんなことないわよ。雪ちゃんは私の」

「友達との時間を邪魔したくなかったんだよ。私とはいつでも会えるでしょ?」

「そうだけど……」


 雪ちゃんとは、昔から家同士の仲が良くて。紗奈達と会うより、もっと前からかなが良かった幼馴染なの。

 小さい頃から、一緒になって遊んでたし。家の行き来も頻繁にしてたわ。

 だから雪ちゃんの言う通り、会おうと思えばいつでも会えるけど。


「それでも、私が雪ちゃんに会いたいって思うことくらいはいいでしょ?」

「まったく、恋伽は私の心を揺らめかせるのが上手なんだから。わかったよ、でも出来れば紗奈ちゃん達の方を優先して欲しいな。これからもっと大変になっていくでしょ?」

「それは雪ちゃんも」

「私は大丈夫だよ。今までとあんまり変わらないんだから。それは恋伽が一番よく知ってるでしょ?」


 確かに、明日の始業式から紗奈はとっても大変になると思うわよ。

 クラスの連中のことは心配してないわ。何かと気のいい連中だもの。

 すぐなれると思うわ、何なら紗奈が可愛いから構い倒して来るかもしれないわね。

 そうなると少し見張らないとだめかしら。

 

 それでも雪ちゃんのこと心配だし。大事な人だからこんなにも心配してるのにもぉ。どうして雪ちゃんには伝わらないのよ!


「それでも心配なものは心配なの!それくらいわかってよ……」

「恋伽……」

「確かに紗奈も夜玻も大切な親友よ。でとそれ以上にゆきちゃんの方が大切で大事なのよ。助けたいの力になりたいの……雪ちゃんのバカ!」


 バカって言っちゃった……

 つい、気持ちが昂って。思ってもいないこと言っちゃった。

 本当はバカなんて思ってないのに。でも言っちゃったことは変えれない……


「ごめん、恋伽。わかってあげれなくて。だからこれは私からのお願い。紗奈ちゃんのそばにいてあげて。私は大丈夫だからね?」

「無理してない? 本当に大丈夫なの?」

「大丈夫たから、それに何かあったら助けてくれるんでしょ?」

「そ、それは! うん、助ける。雪ちゃんが大変な時は助けるわよ」

「それじゃ大丈夫だね」

「もお、調子狂うじゃない。ん?ねぇ雪ちゃんその服どこかで見た記憶あるんだけど気の所為?」


 雪ちゃんが来ていた服。その服がどうしても見覚えがあるような気がしてならなのよね。

 なんだかサイズも少し合ってなさそうだし。

 ピチピチってほどでもないけど、服に余裕があまりないというか。


「ああ、これ?恋伽のお母さんがくれたんだよ。「恋伽が昔来てたのだけど良かったら着てみて」って」


 そうよ! これ私が昔来てた服!

 どうりで見覚えがあるはずよ。ていうかお母さんも相談もなしにあげないでよね!?

 せめて私に相談するとかしてくれてもいいじゃない。

 雪ちゃんにあげるならもっといいのあるのに!

 いやというか私が来ていたのを雪ちゃんが着てるなんて、恥ずかしいのに!


「似合ってるのが悔しい! でも少し小さいじゃない。今度ちゃんとしたの買いに行きましょうよ」

「それは嬉しいね、今度の休みにでも行こうか」

「約束よ?」


 明日から大変だけど、これはこれでいいかもしれないわね。前より楽しいし。

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