34話目

「あ……切れちゃった……」

「走りながら電話するのは危ないから切ったんだろうね」

「あの……」

「何かあった?」

「ありがとうございます……助けてくれて」


 ちゃんとお礼しないとダメだから、怖いけどでもいい人だから。


「タイミングが良かったんだよ。明るいうちだったらできなかった」

「明るいとダメだったの?」


 少しの落ち着いてきた。


「不審がられてしまうからね。君は混乱していたし、私が何かしたと思われてしまうかもしれない」

「そうなの?」

「ああ、不審がられてしまうのは確実だと思うよ」

「そうなんだ」


 助けてくれたのに不審がられることがあるんだ。そうだ、


「どうして助けてくれたの?」


 そう、僕はこの人とあったことがないんだ。恋伽が僕のことを話すとも思えないし。


「恋伽ちゃんと一緒にいるところを見たことがあるんだ。顔は見た事がなかったけどね」

「知らないで助けてくれたの?」

「放って置けなかったから。違っていても、助けたかったからね」

「そうなんだ」


 この人とってもいい人なのかな?恋伽のことなんでも知ってる訳じゃないから、友達のことは知らないけど。

 でも、恋伽の友達だからいい人なのかなたぶん。


「紗奈!」

「恋伽!」


 僕は恋伽に抱きついた。後からきた夜玻は後ろからそれを見てた。


「ありがとう雪ちゃん」

「気にしないで恋伽。タイミングが良かったんだよ。私がたまたまここに居たから」

「俺からも礼を言わせてくれ。元はと言えば俺が手を離しちまったのが悪いから。ありがとう雪……」

「好きに呼んでいいよ」

「ありがとう雪さん」


 名前聞いてなかったけど、雪って言うんだ。なんだか、そう雪野君と名前が似てるんだ。

 プールでは雪野君に助けられたし、いま雪さんに助けて貰って。

 雪って名前が着く人に助けられる乗ってなんだか、すごい偶然だと思う。


「ありがとう雪さん」

「どういたしまして、紗奈ちゃん」

「雪ちゃん、良かったら私たちと来ない?一人で回るつもりだったでしょ?」

「そのつもりだったけど、邪魔にならない?」

「紗奈を助けてくれたし、俺は問題ない。紗奈はどうしたい?」

「一緒に行きたい」


僕はそう言って、雪さんの手を握った。すごくすべすべで、綺麗な手だった。


「わかったよ。それじゃあ、お邪魔させてもらうよ」


良かった。何もお礼できないところだったから。それに、1人よりみんなで回る方が楽しいよね?


◆◆◆


「恋伽、これあげる」

「いいの?取ったの雪ちゃんなのに」

「私には使い道がないからね」

「それなら貰っておくわ」


雪さんと一緒に回ることなって、一番初めに向かったのは射的だった。

僕も挑戦したけどガムくらいしか取れなかった。

雪さんはクマのぬいぐるみを落として、恋伽にあげてた。


「紗奈、なにか欲しいのあるか?」

「欲しいの?」


夜玻が急にそんなこと言ってきた。さっき夜玻が射的やった時全部外してたのに。

でも、欲しいの何あるかな。おっきいと夜玻にも取れないし。


「あのストラップが良い」


あんまり大きくなくて、当たれば落ちそうなストラップ。夜玻が外さなかったらたぶん落ちるかな?


「よし、任せろ」


でもどうして急に言ってきたんだろ。夜玻が言う前は、雪さんが恋伽にぬいぐるみを上げてて。

もしかして、むきになったのかな?雪さんが落としてるから、負けてたけなくて。

夜玻って負けず嫌いだし。


「よし!」


あっ、夜玻が落とした。


「ほら紗奈、やる」

「ありがとう」


嬉しい。黒猫のストラップ。にゃんにゃんにゃんこのストラップ。すごく嬉しいけど、でもいつもと違くて。なんだか嬉しくてドキドキするのは何で?

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