33話目

「やっぱり始めはたこ焼きよね」

「さっきクレープって言ってた気がするんだけど」

「最初から甘いもの食べるもんじゃないって思ったんじゃないか?」

「二人ともなにちんたらとろとろしてるのよ。早く並ばないと食べれないわよ!」


恋伽にせかされるままにたこ焼きの屋台に並んだ僕たち。こうやって並ぶ時間は退屈なのかもしれないけど、待っている時間が楽しみでもある。みんなで食べるたこ焼きはどんな味なのかとっても楽しみ。


「さあ、食べましょう!」


食べながら歩くのは行儀が悪いし危ないから、人の流れから抜けて立って食べることになった。座ったら浴衣汚れちゃうしね。


「あふいけどおいひー」

「恋伽飲み込んでから喋ろよな、行儀悪いぞ。確かにうまいな、あの屋台はあたりだったな」

「ふーふー、うん美味しい。熱いけど、でも食べたくなる」

「沙奈は猫舌だからな。まあ出来立ては美味しいからな、口の中やけどしないようにな」

「さて次は何にしようかなー」


恋伽の手の上にはたこ焼きのが入ってた、空の容器しかなかった。僕まだ二個しか食べてないし、夜玻も四個しか食べてないのに。恋伽食べるの早いよ。


「次か、焼きそばでいいんじゃないか?」

「そう?ケバブもいいかなって思ったんだけど」

「沙奈は食べたいのないか?」

「お好み焼き?」

「じゃあお好み焼きを三人で分けて、そのあとに焼きそば食べてからケバブ食べましょう」

「全部食べるのか?」

「僕全部食べれないよ。そうだ夜玻と半分こする」

「それはダメよ! するなら私といい?」

「わかった」


一つのお好み焼きをみんなで分けて、恋伽と焼きそばを半分こして。次はケバブの屋台に行こうと歩いていた。辺りは暗くなってて、提灯とライトの明かりか道行く人をてらしてた


「ケバブ食べたら遊んで、甘いの食べて花火見ましょ」


夜玻の手を握って三人で歩いていると、パっと周りの明かりが消えた。提灯もライトもすべてが消えて、そして女性の悲鳴が聞こえた瞬間止まっていた時間が動くように悲鳴が伝播した。

パニックになった周りにいた人たちが波のように動いて、僕は掴んでいた夜玻の手を放してしまった。

人のの波にのまれるままに移動した僕は、道の端に突き出された。


「大変ご迷惑をおかけしました。発電機の不具合により会場の照明が消灯していました。発電機の不具合は解消され、現在照明は問題なく点灯しております。繰り返します」


「恋伽? 夜玻? どこ?」


ここ何処なの? 夜玻に恋伽は何処にいるの?人いっぱい……人……

怖い怖い!? 怖い! どこ姉さん、姉さん何処! 助けて夜玻、恋伽一人にしないで!


「大丈夫?」


嫌! 嫌!


「君、夜玻の親戚の子でしょ?」


来ないで! 来ないで!


「このままじゃ、恋伽に電話するしかないか」

「恋伽? 夜玻? どこ?」

「落ち着いた?」


夜玻と恋伽の名前が聞こえた気がした。しゃがんで縮こまっていた僕が顔を上げると、涙でぼやけてるけど知らない女の人がいた。


「私は、怪しいものじゃない。恋伽の友達なんだ。ほら二人で撮った写真もある」


女の人のスマホの画面には、女の人と恋伽が二人並んで写っていた。


「恋伽の友達?」

「そうだよ。恋伽と夜玻とははぐれたの?」

「うん……」


この人は知らない人だけど、でも恋伽の知ってる人で。友達で。怖いけど、恋伽の友達。


「恋伽? 今夜玻の親戚の子と居るんだけど。わかった」


女の人は、恋伽と話しているみたいで。スマホを僕に渡してきた。


「恋伽? 恋伽!」

「沙奈! よかった、はぐれて今探してたの。その女の人は私の友達だから、私たちがそこに行くまで一緒にいてほしいの」


恋伽の声をきいて、僕は少しだけ安心した。


「わかった……一緒にいる。早く来て……」

「すぐ行くからまってて!」


恋伽との電話はそこで切れた。

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