30話目

 夏休みもあと半分となったころ、ニュースで僕が女の子になったことと関係ある報道があった。

 姉さんの話だと、僕を含めて世界中に体に変化が起きた人がいるみたい。その特定とか、病名をつけるのに時間がかかったんだって。

 病名は突発性身体変化病。感染症じゃないから他人への感染もなく、突然変異性の病気なんじゃないかってニュースでやってた。

 そして僕は今姉さんと学校に行ってる。病名が付けられたから、学校に説明できるようになったんだって。


「教育委員会から電話きて理由は聞いてるわー。紗奈くん大丈夫ー?」


 このおっとりとした人が担任の中嶋なかしま|瑞稀《みずき》先生。ぽやんとしてるように見えて、やる気を出すと凄い先生なんだ。


「はい、女の子になりましたけど。痛みとかは無いです」

「良かったー。それで二学期からのはなしですねー?」

「そうですね。女の子として通うことにする予定です」

「こちらとしてもその方が助かります。他の生徒への説明は各ホームルームですることにしています。休み時間もなるべく私がクラスにいるようにするので、他の生徒からちょっかいはかけさせませんから安心してくださいねー」

「ありがとうございます、先生」

「教え子のためですから。気にすることはありませんよー」

「何かあったら、この番号までおねがいします。私のスマホに繋がります」

「わかりました。制服の用意とかは大丈夫ですかー?」

「この後行く予定です」

「それならよかったですー。早く注文しないと始業式に間に合わなくなっちゃいますからー」


 だいたい姉さんと先生が話して終わりだったけど。校長先生とかに話さなくてよかったのかな?


 次の日家に夜玻と恋伽が来た。


「昨日ニュースでやってたの紗奈の病気のことよね?」

「うん。昨日のうちに学校にも言ってきた」

「どうするか決めたのか?」

「女の子として行くよ。女の子の体なのに男の子の格好してたらおかしいでしょ?」

「すごくおかしい訳では無いけど、周りから変に見られそうね」

「女の子で通うとなると、接し方変えないとだめか?」

「変えて欲しくない……」


 夜玻と恋伽に接し方変えられたら僕はどうしたらいいの?別人みたいに接しられたら……


「ちょっと夜玻!紗奈泣いちゃったじゃない!」

「泣かせるつもり無かったんだよ。紗奈のかいいならこのまま接するからな?」

「変えない?」

「変えない、紗奈が女の子でも紗奈だからな」

「でも無闇矢鱈に触ってたらつねるわよ?」

「そんくらいのデリカシーはもってるよ!」

「僕は別に良いよ?」


 夜玻も恋伽も信頼してるから。


「紗奈が良くてもダメなのよ!いい?肩を組むとかそういうのダメなんだから」

「僕背低いから、夜玻と肩組めないよ?」

「そういえば肩組んだことないな」

「迂闊だったわ。何か他にいい例えはないかしら」

「普通に考えて頭に触る以外ダメじゃねぇか?手とか腕はいいかもしれねえけど」

「そうね、頭と手は触れても仕方ないわね」

「僕はどうすればいいの?」

「とりあえず男に頭と手以外触られそうになったら近くの女子に助けを求めなさい。夜玻でもいいわ、ヘタレだから」

「夜玻はヘタレ?」

「紗奈に言われるとダメージがでかいっ」

「あと男にジロジロ見られるようなら夜玻を盾にしなさい」

「こう?」


 僕は夜玻の後ろに回って服を掴んで、脇から顔を出した。


「可愛いわね」

「動きづらいな。後ろに紗奈がいるって思うと」


 あっ、そうだ恋伽に相談したいことあったんだった。姉さんに聞こうと思ったら姉さんもう出かけていなかった。


「ねぇ恋伽。最近胸が苦しいんだけどどうしたらいいの?」

「ゲホッゲホッ」

「紗奈ちょっと洗面所行きましょうね。夜玻はとりあえず座ってなさい」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る