29話目
「沙奈辛くなったらちゃんと言うのよ?」
「うん」
汗でぬれた服を着替えて姉さんの車で向かったのは、姉さんの知り合いの病院。
てっきり普通の病院に行くのかと思ったら、個人でやってる病院だった。でも個人の病院にしては大きい。
「ここが姉さんの知り合いの病院?」
「そうよ、待ってるはずだから行きましょ」
病院に入ると受付の奥にいる女医さんと目が合った気がした。受付の人はどうしたんだろう?
「綾音こっちよ」
「
「医者に元気?なんて野暮なことは聞かないでよね。それよりその子が妹?」
朱鳥さんは、さっき目があった女医さんだった。
「沙奈って言います。よろしくお願いいたします」
「私は朱鳥よ。とりあえず診察室に行きましょう」
朱鳥さんに連れられて診察室に来たけど、受付とかしなくてよかったのかな?ちょっと心配。
「単純に風邪ね。薬出しておくからちゃんと飲むこと、わかった?」
「はい」
「心配しなくてもちゃんと私が飲ませるわ。それでどう?医者から見て沙奈の躰は」
「詳しい検査も何もしてないからわからないけど、女の子ね。それで検査するの?そのために私を頼ったんだろうし」
「沙奈、いいかしら?」
「うん、怖いけどでも必要なことなんでしょ?」
「沙奈の身に何が起きてるのか知るには必要なことね」
「じゃあ検査する。ちゃんと知りたいし」
「取り合えず綾音は白衣来て来なさい。手伝ってもらうから。ここ出て左、突き当りの右側の部屋にあるわ」
「わかったわ、沙奈すこし待っててね」
「うん」
部屋に朱鳥さんと僕だけになった。気まずいというか、何話したらいいかわからない。
「気になる?」
「えっと……」
「私と綾音の関係」
「なります」
「私も綾音も同じ大学なのよ、医学部で一緒だった。私は親のやっていたこの病院を継ぐために、綾音はあなたのために」
「僕の……ため」
「医者になれば普通に働くよりお金が手に入る。不自由ない生活をさせてあげられるって」
「じゃあ、姉さんはお医者さんなんですか?」
「医師免許は持ってるは、だから医者とよべる。けど」
「着替えてきたわよ朱鳥」
朱鳥さんは何かを言いかけていたようだけど、その前に姉さんが帰ってきた。
「それじゃあ採血から始めましょう。体調悪いだろうから手早くすませるわ」
検査が終わるころには辺りは夜になっていた。
「風邪ということを除いても、結果は女の子の平均数値ね。これ以上の検査は此処ではできないわ。でもやったとしても結果は変わらないでしょうね」
「何にもわからないとは思わなかったわ。何か手掛かりがつかめるかと思ったのに」
「病気じゃないってことなの?」
「それもわからない。風邪が治ったらまた来て。こっちも一応調べてはおくから」
「その時はお願いするわね、朱鳥」
「ありがとうございました」
「診察料は次に来たとに払って」
姉さんの車で帰る途中、僕は聞いてみた。
「僕病気なのかな……」
「お姉ちゃんの知る限り、そんな病気はないわ。でも確実に原因があるはずよ。それに、沙奈の躰は特に異常なかったわ。女の子としてだけど」
「戻れるのかな。元に」
「お姉ちゃんがもとに戻れるように、頑張るわ。安心して」
「うん」
お姉ちゃんを信じてる。
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