25話目

「嫌がってるだろ」

「ちっ」

僕に伸ばされた手を掴んだのは、夜玻ではなかった。

「ありがと雪野ゆきの君。助かったわ」

助けてくれたのはクラスの中でもリーダー的存在の雪野君だった。

夜玻よりは細身だけど、すごく頼れる。現に腕をつかまれた男は、つかまれた箇所をさすってる。

「たまたま見かけたから」

「ありがと。そういうことだから、他をあたってくれない?」

「分かった分かった。ほか当たるぞ」

雪野君のおかげで、どうにか帰って行った。

「雪野!すまん助かった」

ヒーローは遅れてやってくるっていうけど、事が終わった後に来ても意味がないよ……。でも来てくれただけでうれしい。

「近くにいるだろうから見てたけど、来ないからつい手を出したんだ」

「ウォータスライダーの列に並んでたら、ああなってな。大丈夫だったか二人とも」

「私は大丈夫よ」

僕もうなずく。

「そうか、よかった」

「夜玻聞いていいか?」

「なんだ?」

「その女の子誰なんだ?いつも一緒にいる沙奈の姿も見えないようだし」

あ、どうしよ。いま、夜玻のくれた帽子で顔が見えないから、まだバレてないみたいだけど。何も言わないと、バレるのも時間の問題かも

「この子、俺の親戚の子なんだ。夏休みの間こっちいることになってな。連れていたんだ」

「沙奈はこの人込みだからこれなかったのよ。知ってるでしょ」

「なるほど」

僕はとっさに恋伽の後ろに隠れる。

「隠れちゃったわね。あまり人見知りしないはずなんだけど」

恋伽フォローありがと。そういう設定にしてお願い。今はまだ、バレたくないから。

「さっき腕をつかまれそうになったんだから、仕方ないよ」

「すまん、また会った時にでもちゃんと紹介する」

「わかった。それじゃ、またね」

手を振ったらちゃんと振り返してくれた。ごめんね、雪野君。ちゃんと後で言うから、待ってってほしい。

「どうする、今日は帰るか?時間に余裕あるから、帰り道に、どこか寄れるぞ」

「なら、アイス食べたいわね」

「暑いからちょうどいいね」

「じゃあ、そうするか」

帰りにアイスを食べることが決まり、予定より早く屋内プールを後にした。

「でどこで食べるんだ?アイス食べるって決めたはいいものの」

「コンビニで食べるのでもいいわよ。この三人で食べるのがいいんだから」

「うん」

コンビニで皆で食べるほうがいい。美味しい所で食べるより美味しく感じる。

「じゃ、そうするか。コンビニにレッツゴー」

「「おー」」

家にほど近いコンビニに寄った。

「何にすっかな。季節限定のソフトクリームもあるんだよな」

「夜玻は食べれるの限られてるもんね」

「ほんと損してるわよね。こんなに美味しいものを食べられないなんて」

「仕方ねぇだろ。苦手なんだから。でもこのソフトクリームなら食べれる気がする」

「本当なの?前みたいに残しても、食べる人いないんだからね?」

「残ったら僕が食べたらいいんじゃないの?」

前にも夜玻が残したことがあって。その時は僕が代わりに残ったの食べたんだけど。

「今、沙奈女の子でしょ?」

「うん」

「間接キスになるからダメなのよ。いくら沙奈が気にしないからって、私がいる内はダメ。わかった?」

「何となく?」

「私がいないときがすごく心配になる返事だったけど。この際良しとしましょう。早く食べたいから」

恋伽が言ってた間接キス?って駄目なのかな?よくわかんないけど。帰ったら姉さんに聞いてみよ。

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