23話目

僕が落ち着いたころ、プールに入ることになった。何種類かあるみたいで、ウォータスライダーに流れるプール。普通の大きなプールもあるみたい。とりあえず流れるプールに入ることにした。


「浮き輪につかまってればいいんだね」

「まあ、流れるプールだからな」

「楽しいかわからないわね。自分で泳がなくていいから楽そうだけど」

ぐるぐると回ってるのを見てると、なんだか目が回りそう。浮き輪の穴に体を入れて、プールに入る。

自分で泳がない分、周りの景色が楽しめて意外と楽しいかも。夜玻も恋伽の楽しそう。夜玻は浮き輪を使わないで浮いててすごい。仰向けに浮いて空を見るのってなんだか憧れたりする。こうして、浮き輪につかまって周り見てるだけでも楽しいし。

前を見ると、浮き輪の穴にお尻を入れて流れている人がいた。

バランス感覚がよくないとできなさそう。ひっくり返ったら、危なさそうだし。

三周くらいすると、ふと夜玻と恋伽の声が聞こえないことに気が付いた。

少し前まで声が聞こえてたと思うんだけど。周りを見てもそれらしい姿は見当たらない。はぐれちゃった、一回プールから上がらないと。

縁まで寄ってプールから上がって、もう一度周りを見てみる。やっぱり二人の姿は見えない。

僕がはぐれたのか夜玻たちがはぐれたのか、わからないけど合流しないと。

さっき休んだとこでお昼食べようって話をしたから、さっきの所まで戻りたいけど。

どっちに行けばいいんだろ。これって迷子?

迷子の時は、下手に動かないほうがいいっていうけど。ここにいるとちょっと不安だから移動したい。

周りをきょろきょろしていると、あまり人がいない場所があった。

あのトイレの近く、あまり人いないしいいかもしれない。

トイレ脇の隅、日陰になっている所に座り込む。

二人とも、心配してるよね。急にいなくなちゃったわけだし。僕もさみしいな……。

二人がいないと、心細い。いつも、どこかに行くときは二人がいてくれて。

普通に考えて性別変わったら、それはもう前の僕じゃなくて。今までの僕じゃないから。

僕から離れていってもおかしくないのに、二人はそばに居てくれて。同じような考えばかりが頭の中をぐるぐる回ってる。

二人は変わらずに僕と一緒にいてくれて。でも……クラスのみんなはどうなんだろう。夏休みが終わって、学校に行って。

皆はどう反応するんだろう。他の人はわからない、二人ほど長くいたわけじゃないから。

受け入れてくれると嬉しいけど……。

少し落ち着いて前を見ると、見知った顔が見えた。

たしか名前思い出せないけど、クラスの子なのは分かる。今ここで声をかけたら分かるのかな、どんな反応をするのか。

声をかけに一歩足を踏み出すと、僕の名前を呼ぶ、夜玻と恋伽に腕を掴まれた


「「紗奈!」大丈夫だったか?」

「二人とも……ごめんなさい」

「いいんだ、紗奈が無事なら。な、恋伽」

「私達も紗奈のこと見失ったから。紗奈だけが悪いわけないのよ」

「うん……」


さっき見かけた、クラスの子はどこかに行ってしまった。


「帰るか?」

僕は首を横に振った

「まだお昼食べてないし、ウォータースライダーも乗ってみたい」

「紗奈が大丈夫ならいいけど」

「とりあえず、戻ろうぜ。腹減った」

「うん」


二人がいれば、夏休みが終わっても怖くないかな。

そんなことを考えながら、恋伽に手を引かれてサンドイッチを食べに。休んだところまで戻った。

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