22話目

屋内プールに行くその日、僕は家の前で二人を待っていた。

気温が三十度を超えるとテレビで言っていたので、帽子と日焼け止めクリームも、持った。屋内プールについたら、恋伽に塗ってもらうんだ。

隣町までは自転車で二十分くらいかかる。麦茶とお昼に食べるサンドイッチは持ったけど、足りるかな。夜玻よく食べるし。足らなかったら売店あるだろうし、そこで買ってもらえばいいかな。

そんなことを考えているうちに、夜玻と恋伽が来た。


「すまん、ちょっと遅れた」

「夜玻が忘れ物するからいけないんでしょ!」

「取りに戻らないわけにもいかないだろ」

「二人とも元気いいわね、おはよう」


姉さんが二階から降りてきた。ちなみに現在時刻は、十時だったりする。


「「綾音さん、おはようございます」」

「沙奈のことよろしくね」

「「はい!」」


二人とも息ぴったり。さっきまで言い争いしてたのに。


「沙奈も気を付けるのよ?ああいう所はナンパしてくる悪い虫が湧いてくるんだから。ほんと面倒なのよね」

「姉さん、いったことあるの?」

「高校生だったころ、あなたたちみたいに行ったのよ。女三人で行ったからしつこいのなんのって。まあ、夜玻君いるから、沙奈や恋伽ちゃんには寄っては来ないと思うけど」

「夜玻、ボディーガードよろしくね?」

「任された」


夜玻スポーツやってるから、体大きいしすごく頼りになる。


「私も守りなさいよ?」

「わぁってるよ」

「沙奈の時と反応がちがうのが気に食わないわね」

「二人とも行かないの?」

もう十分たってる。


「そうだな、行くか。沙奈、荷物貸せ持ってくからよ」

「飲み物は言ってるから重いよ?」

「それなら余計にもたせらんねぇよ。ほら」

「わかったお願い」

「じゃあ私のもお願いね」

「すでに自転車籠に入れてんの、知ってるからな?」

「なんだ、じゃあ言わなくてよかったわね」

「おまえな……」

恋伽はこういうところちゃっかりしてる。


「着いたー」

「さすがに混んでるな」

十時三十分。予定ぴったりについた屋内プールは、混みに混んでいた。

「すごい人混み」

「沙奈、大丈夫?」

「ちょっと座りたい」

予想してたより、人が多い。人酔いしそう……

「わかった、隅のほう行こうか。これかぶっておけ、少しは楽になるかもしれないからよ」

夜玻が持ってたつばの長い帽子をかぶせてくれた。帽子のつばが、影になって周りの顔が見えずらくなって少し楽になった。

恋伽と夜玻に手を引かれて、隅のほうに移動した。

「ごめん、泳ぎに来たのに」

「気にするな、落ち着くまでここにいよう」

「そうよ。沙奈だけ仲間外れなんて許さないんだから」

二人とも優しいな、最近は二人に迷惑しかかけてない。僕にできることなんてお昼のサンドイッチ作ったりするくらい。

「言っとくけど、迷惑なんて思ってないからな?」

「まだ何も言ってないのに」

「顔に出てんだよ」

「沙奈はこうしてお昼のサンドイッチ、作ってくれるじゃない」

「俺にはできないことだし、恋伽にだってできないんだぜ」

「で、できるわよ!目玉焼き焼いたりとか」

「他は?」

「えっと、野菜炒めとかスクランブルエッグ」

全部炒めてる。

「それくらい俺でもできる。焼く以外でないのか?」

「に、煮るとか?」

「なに作れるんだ?」

「ゆで卵」

「まあ、恋伽が俺と同じレベルなのが分かっただろ?」

「うん」

「ちょっと!」

調理実習で一緒になる時はちゃんと教えてあげないと。

「少しはマシな顔になったな」

「ありがとう、夜玻」

「感謝なら恋伽にしとけ。恋伽が料理できないからできた話だしな」

「いつまで話を引っ張りつもりよ!」

「もっと料理できるようになるまでだな」

一人で上手になるのは難しいんじゃないかな。そうだ

「恋伽、料理教えようか?」

「本当に!お願い、夜玻を見返してやるわ!」

「じゃあ俺も教えてもらうか、料理できる男子はモテるらしいからな」

「夜玻は動機が不純よ!」



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