19話
「スイカ美味しかったわね」
「海で食べると家で食べるより美味しかった」
帰りの車の中で話をしながら帰路に着く。
こんなにも、楽しかったのはいつ以来だろう。幼稚園で遠足した時かな、それとも中学校の修学旅行?
まず、少人数でどこかに行くことなんてなかったからこれが初めてなのかな。
僕が人混みを苦手になったのは、両親が目の前で死んでしまったのが原因。小さい時にね。
僕の両親は僕の目の前で死んでしまった。僕と姉さんを守って。
誰かから恨まれた訳でもなくて、ただ通り魔にそこに居たから。
そんな理由だけで刺された。お父さんは僕を、お母さんは姉さんを庇ってくれた。
その時周りの人は皆助けてくれるわけでもなく、遠巻きに僕らを見ていただけだった。
しばらくして誰かが呼んだ救急車が来てお父さんとお母さんを乗せて僕達も乗せて病院に行ったけど。
誰がどう見ても手遅れだった。刺されたところから血が出てて。
当時は分からなかったけど今ならわかる。あの出血じゃどの道助からなかったことが。
普通なら血が怖くなるものだと思うけど違った。もちろん怖かったけど、それよりも怖いものがあった。
周りが怖かった、続々と集まってくる人々が。助けるわけでも、救急車を呼ぶわけでもなく。興味本位で、ただ集まってくる人達。
感情の篭っていない、慰めの言葉。多くの視線が怖かった。
それからというもの、人が多いとパニックになるようになった。中学校に入る頃には大分落ち着いたけど。
今でも初めて合う人は苦手。人間不信がまだ残っているから。
でも今こうしていられるのは、全部姉さんのおかげ。僕が人混みでパニックにならないようになったのも。こうして、一人暮らししながら学校に通えるのも。
本当に姉さんには感謝してもしきれないんだ。
家に帰ったら、夜玻や恋伽と別れた。
夕暮れ時だったので夜玻が恋伽を家まで送っていくみたいで、僕も送って行けたらよかったけど、気持ちだけでいいと言われた。
よく考えたら、僕も女の子だから夜道は危ないよね。
「紗奈、どうだった?海は楽しかった?」
「うん、初めて行ったけど楽しかったよ」
「良かった、日焼けとかはしてない?」
「多分大丈夫だと思うけど」
日焼け止めは塗ったから日焼けしてないと思うけどどうなんだろ。
「前の方が無いのは分かるけど、背中とかはわからない見てちょうだい」
今、姉さんしかいなしいいいよね。服をめくって背中を姉さんに見せる。
「どうかな?」
「綺麗よ、あとも無いし大丈夫ね。でもあとから痛み出したら言うのよ?ちゃんと手当するから」
「うん」
夜は夏らしくそうめんだった。
ベットに横になると、すぐに眠気が襲ってきて、今日は楽しかったなと思いながら微睡みの中に溶け込んでいった。
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