11話目

 まだ。姉さんは帰ってこない。皆そわそわしながら待っていると車の音が聞こえてきた。姉さんの愛車の音だ。僕は玄関に急いだ。

 車の扉が閉まる音が聞こえて、カツカツとヒールの音がした。

 ああ、姉さんが帰ってきたんだと肌身に感じた。

 玄関の扉の鍵を開ける音がして、僕が姉さんと言い切る前に抱きしめられた


「紗奈、大丈夫だった?寂しくなかった?」

「姉さん、うん。友達も来てくれてるから」

「友達?」

「夜玻と恋伽」

「そう、あの子達が。わかった、詳しい話はリビングで聞くから行きましょう」


 姉さんは僕の手を引いてリビングに入った。

「夜玻くんに恋伽ちゃんね。ありがとう、紗奈のそばに居てくれて」

「い、いえ。俺達はただ心配だったので」

「それでも、一緒にいてくれて感謝するわ。今日は泊まっていくのね?」

「はい、夜一人だと怖いだろうから泊まっていきます。綾音さんお世話になります」

「こちらこそよろしくね。寝る場所はもう決めてるの?」

「私は紗奈の部屋に」

「俺はそこのソファーに」

「夏だから大丈夫だと思うけど、夜玻君は体冷やさないようにね」

「お気遣い、ありがとうございます」

「そこまで堅苦しくなくていいわ。2人共紗奈の友達なんだから」

「はい!」

「分かりました」

「もう寝るところだったでしょ?話は明日聞くから、今日はもう寝ましょう」


 姉さんの言う通り、寝ようとしていた矢先だったから、姉さんを含めてこの日は寝ることにした。


 次の朝、起きて1階に降りると既に姉さんが起きてコーヒーを飲んでいた。

「おはよう、姉さん」

「おはよう、紗奈」

「時差大丈夫?」


 姉さんは外国から飛行機できたから、時差ボケとかあるんじゃないかなって思うんだけど。

「今日1日過ごせば時差は大丈夫」

「そっか」


 ソファーで寝てる夜玻はまだ起きる気配がなくて、グックリ眠ってる。ちょっとソファーから落ちそうだけど大丈夫かな。


「紗奈」

「どうしたの?」


 姉さんに呼ばれて振り返ると、手招きをして僕を読んでいた。

 近くまで行くと膝の上をコーヒーカップを待っていない方の手でポンポンと叩いていたので、首を傾けた。

 するとコーヒーを飲むのを止めて、僕を指さしてからまた膝をポンポンと叩いた。

 これは、膝の上に座ればいいのかな?

僕が膝の上に座るとぬいぐるみを抱くように前に手を回して、僕の首の横に姉さんの顔が来た。

「よく頑張ったわね」

「うん」

僕は静かに涙を流した。昨日あんなに泣いたのにまだ涙が出てくる。

「姉さんには紗奈の気持ちが分からないから、その怖さはわからないけどでも怖かったよね」

「うん」

「これから、色々大変になると思うけど全部姉さんがどうにかするから。だから大丈夫」

「ん」

「紗奈もう少しこのままいてもいい?」

「いいよ」


そのまま僕は姉さんの膝の上で姉さんに甘えていた。


「おはようございま…す」


2階から恋伽が降りてきて、僕と姉さんを見て止まった。


「恋伽おはよう」

「おはよう恋伽ちゃん」

「えっとおはようございます。それよりこの状況は一体」

「紗奈に抱きついてるの」

「姉さんに甘えてるの」

「えっとえ?」

「おはよう…ございます」


ソファーに寝ていた夜玻も起きたみたい。


「夜玻おはよう」

「夜玻くん、おはよう」

「おはようございます。ん?」

「恋伽ちょっとこれ」

「やっぱり夜玻も思うわよね」

「「どうしてそんなことに?」」

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