10話目

 お風呂を上がると、リビングでは夜玻がくつろいでいた。


「あがった、か……」


 夜玻が振り向くとこっちを向いて固まってた。


「どうしたの?」

「紗奈に見惚れてるのよ。湯上りで顔も赤みがかってて、女のわたしでも可愛いって思うのよ。男の夜玻なら見惚れて固まりもするでしょ。ね?」

「ば!そんなことあるわけ……」

「あるわけ?」

「……ある。可愛かった。すまん、こんなこと言っちゃいけないんだろうけど」

「夜玻にならいいよ。恋伽も。僕が女の子だって知ってるのは2人だし。僕も慣れないといけないから」

「だって、夜玻。良かったわね」

「いや。慣れるって言ってもまだ1日も経ってないし複雑だろ?」

「多分、体に心が引っ張られてるんだと思う。少し恋伽と入る時恥ずかしかったけどそこまでだったから」

「そうか」

「なーにー、羨ましいわけ?」

「そんなことあるか!」

「あら。私が可愛くないとでも言うの?」

「お前は可愛いよ。それは昔からわかってるつの。告白ブレイカーだったしな」


 そう、恋伽はそれこそ小学校の頃から告白されててその度にお断りしてきた。付いたあだ名が告白ブレイカー。既に高校に入って1回お断りしてるみたい。

 なんで知ってるかと言うと、断る度に相手のことを愚痴ってくるからなんだけど。

 ただ単にこんな相手だったで終わることもあるし、手紙で告白されて直接いえばいいのになんて言ったり。

 とりあえずそれくらい恋伽は可愛い。


「それを言うならあなたもでしょ?」


 そして夜玻も同じくらい女子を振っては告白されてを繰り返して。そしてその理由が好きな人がいるからと言うんだけど誰なんだろ。恋伽も僕も夜玻が特定の女子と仲がいいのは見たことがないし。

 僕はもしかしたら夜玻は恋伽のことが好きなんじゃないかな、って思ってるけど1回も聞いたことは無い。

 こういうことを聞くのは野暮ったいことだから。

「そうだったな」

「まるで他人事みたいに言っちゃって。とりあえず勉強再開しましょ。少ししか進んでないんだから」

「そうだな、輝かしい夏休みのために頑張りますかね」

「暖かい飲み物用意してくる。湯冷めしたら嫌だからね」

「「ありがと紗奈」」


 とりあえずココアでいいよね。カフェインとると眠れなくなっちゃうし。


「疲れたー、夜玻今何時?」

「10時過ぎだな」

「んーいい時間ね」

「寝る?」

「そうね、寝てもいい時間よね?夜遅くまで起きててもすることないし。勉強にも疲れかれたでしょ?」

「そうだな」

「じゃあ寝ましょう。確か布団出さないと行けないんだっけ?」

「うん」

「じゃあ、準備しましょうか。夜玻はタオルケットあればいいわよね」

「ソファーに寝るつもりだしな」

「それじゃ取りに行きましょ」


 予備の布団は僕の部屋にあるから部屋に入るとパソコンの電源が付いていた。お昼につけたままだったのかな。

 パソコンの画面にはメールが届いていると表示が着いていたので恋伽にタオルケットを下に持って行って貰う間にメールを確認した。

 メールの相手はお姉さんでお昼を食べている間に来たみたい。

 内容はこれから飛行機に乗ること、そして11時頃には家に着くって事だった。

 パソコンの時刻表示を見るともう少しで11時30分になる所だった。

 あと30分で着いちゃう、急いで夜玻達に教えないと。


「紗奈、どうしたの慌てて?」

「お姉さんが帰ってくるってメールが来てて」

「いつ?」

「今」

「「今!?」」

「11時には家に着くって」

「あと30分ねぇな。俺たちのこと話してるのか?」

「言ってないけど夜玻と恋伽のことは知ってるはずだから多分大丈夫だとは思うけど」

「まあ、小さい頃会ってるからな。お姉さんと」

「見た目は、あんまり変わってないわよね」

「とりあえず、寝るの待って帰ってくるの待とうよ」

「心配だな色々と」

「うん、僕も」


 お姉さんが今の僕を見てどう思うのか考えると心配で嫌な想像して。大丈夫だよね……

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