6話目


「危うく止められる所だったぜ、泊まるの」

「だろうと思ったけど。どんな嘘ついてきたわけ?」

「嘘はついてないぜ。泊りがけで夏休みの宿題してくるって言ったからな。ちゃんと宿題持ってきたんだ。教えてくれ」

「なるほどね。それじゃ今日は勉強会ね。私も持ってきてるし、早めに終わらせれば夏休み遊べるしね」


 夜玻に勉強を教えるのは今に始まった事ではなくて、小学校の頃からの夏の風物詩と化している。

 昔から僕が算数と国語、恋伽が社会と理科、中学校に入ってからは英語も教えている。


「紗奈これどこ探せばいいんだ?」

「どれ?」

「この問題の[それが指していることとは何でしょうか。問題文から探しなさい]のやつ」

「これは、この[それ]って書いてる文章の直ぐ前の文を見ればいいんだよ」

「直ぐ前の文となると、[それ]が指していることってのはこれか」

「うん」

「さっきから、これとかそれとか指示語しか聞こえないけど会話できてるの?」

「実際に会話できてるからな」

「夜玻は会話でそれとかこれとか出ても問題ないのに文章として出ると弱いよね」

「会話だとほら、指でこれってやったり直前に話してたことの話だったりするからさ」

「それその問題と全く同じじゃない。話してることの直前って」

「あ」

「もしかして今まで気づいてなかったの?」

「夜玻あなた、馬鹿だ馬鹿だとは思っていたけどここまで馬鹿だとは思って無かったわ。他のでもこういうことあるんじゃないの?」

「馬鹿馬鹿と連呼しなくてもいいだろ?!たった今気づいた俺が一番よく分かってんだからよ……」

「ほら、今気づけたんだから良かったと思おうよ、ね?」

「紗奈の優しさが身に染みるぜ」

「あら、こうやって勉強に付き合ってあげて教えている私の優しさは感じないわけ?」

「感じてるよ、恋伽が居ないと俺の英語は壊滅的だからな。だけど今の俺の心には紗奈の優しさが染みるんだよ」

「調子いいんだから」


 こうして、僕の性別が変わっても今まで通りに接してくれる恋伽と夜玻には感謝しかないよ。

 普通に考えても性別が急に変わったら距離を置いてもおかしくはないし。

 もちろん恋伽や夜玻の性別が変わったとしても僕は親友でい続けると言い切るしそばにいるつもりだし。

 僕は本当に良い幼馴染み達を持ったよ。

「あっ」

「ん?どうした紗奈」

「ちょっとトイレに」

「来てしまったのね、紗奈行きましょ、あなた何もしらないでしょ?」

「うん」

「夜玻、そこに居なさいよ。もし着いてきたらおばさんに告げ口するから」

「んな事する訳ないだろ!とりあえずこれからは色々大変なこともあるだろうけど頑張れよ紗奈。俺も恋伽も助けてやるから。そら急いでいけ、男みたいに我慢聞かないって聞いたからな」


 えっと、とりあえず女の子の体の神秘を垣間見た気がするよ。

 こんなにも大変だとは思わなかった。

 それしても本当に僕、女の子になっちゃったんだ……

 お父さん、お母さん、僕女の子になっちゃいました。どうか見守っていてください。


「とりあえず紗奈は休んでな。色々精神的に負担かかってるだろうから。整理が着いたらまた勉強教えてくれよな」

「うん……ありがとう」

「気にするな。こういう時は頼って良いんだからよ」

「そうね、こういう時くらいは頼りなさい。そうね、こういう時は気分転換でもしましょ。ゲームでもしてれば楽になるわ」

「ちょうどよくゲーム中断したままだから、それやるか」

「いいわよ、さっきのはたまたまだってことを見せてあげるわ」

「俺はそのさっきのを知らないんだが、紗奈知ってるか?」

「え?うん、恋伽がそのレースゲームで」

「ストーップ!紗奈それ以上はダメよ、言っちゃダメ!」

「偉い止めるじゃねぇの。さては」

「さぁ、やりましょ。もちろん紗奈もやるでしょ?」

「うん!」


 僕は2人と出会えて良かったよ。

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