第9話 転職の加護【堕】の話

あれから、アイリスを暗い部屋を連れ出して、自分の拠点となる場所に戻る。

何も変わらず、草木が茂って、森を抜けると見た事ある人工物がある。

それは自分で作った、ドーム状の釜土だった。


「ヨウイチ・・・ここは?」

「ここは俺が作った拠点だ」


アイリスは一人で先に歩き出し物珍し気に周りと釜土を見る。

そんな様子を見ていると何時間も歩いていたのか、再び空腹と腹の虫がなる。

今日はあの"封印"のこともあり、身体中の疲労がたまっていた。

薬草を食べても、火傷の後は治らなかった。


「万能ではないんだな・・・」


薬草はあくまでも薬草でしかなかったことを確認する。

傷や骨が治っても、皮膚は治らないってのもなんともおかしい話だが、今は腕が無くならなかっただけでも喜ぶべきだった。

池の方で眺めているアイリスに近づき、肩に触れ話しかける。


「アイリス、お腹すいていないか?」

「私は平気・・・」


それもそうか、何年も飲まず食わずに、あそこに閉じ込められたんだ。

少なくともアイリスは人間じゃないってのは分かる。

しかし、人間じゃなければ、なんだろうか、見た目は普通の少女。

牙があるわけでもないから、吸血鬼でもなさそうだ。


「じゃぁ、ご飯は俺のだけでいっか」

「うん」


食材を用意しつつ、釜土に火を点けようとするが、火打ち石がうまく点けられない。

その様子を見た、アイリスは後ろで「何してるの?」と聞いてくる。


「ああ、火を点けようとしてるけど、うまくつかないんだ」

「魔法は・・・?」

「言っただろ?俺は村人なんだ、魔法何て使えないさ」

「そっか・・・なら・・・」


すると、アイリスは釜土に腕を向け、人差し指で文字をなぞる。

すると、それに連動するように赤い線が浮かび上がる。

文字だ。なぞられた文字から、"見えない"何か集まっている。

そして、ゆっくりと呟く。


「"蛍火(ルティラ)"」


その瞬間、薪から火がッボと音鳴り、揺らめくように燃える。

初めて見る、魔法の詠唱だった。


普段、使われている【魔法詠唱】は体内の魔力を消費して、魔法を発動する。

しかし、魔法詠唱中は魔力を消耗してる感じがしなかった。

その際、手に何かが集まっていた。


「今のはどうやって・・・」

「【魔術執印(まじゅつしついん)】」

「魔術執印?」


【魔術執印】、自然から出来た【魔素】を使った。

例えば、草や木、水などから湧き出てくる、生命エネルギーを利用した、魔術の事。

指に魔力を込めて、文字をを書く行為、この事を【術式】と呼ぶ。

正しい【術式】を組み立てることで、殆ど魔力を消耗せずに魔法を発動する事ができる。

メリットは村人でも指に魔力を込めて【術式】を組み立てることで使える。

デメリットは魔法の規模がデカいほど【術式】が複雑化し、魔力と魔素の消費量も増える。


「なるほど・・・つまり魔法を覚えていない俺でも使えるんだな?」

「うん・・・その分、正しい術式を覚えないとめんどくさい」

「なら、今度教えてくれないか?」

「・・・!うん!」


そう言うと、アイリスは嬉しそうに笑みで頷く。

そんなに嬉しい事なのかって思うが、感じ方は人それぞれだから、気にしないでおくことにした。

火が点いたので、黒杉は料理を始める。

先ほど、同じように木の実のお肉炒めを作る。

肉の香ばしい匂いとに木のみの香りが胃を刺激させる。

匂いを嗅ぎつけたのか、いつの間にかアイリスが興味津々に見ている。


「アイリス・・・」

「ッハ・・・!?」


我に返るアイリス、ちょっと恥ずかしそうだ。

その口元が少し輝いているのは見ない事にしよう。


「ご、ごめんなさい・・・美味しそうな匂いがしてたので・・・」

「そうか、じゃあ・・・」


そう言って、焼いた肉と木の実の大きい葉っぱに乗せ渡す。

アイリスはキョトンと表情で葉っぱに乗せた料理を見て、再び顔を上げて言う。


「いいの?」

「ああ、食いたいんだろ?」

「・・・!いただきます・・・!」


短刀で小さく切ってそのまま刺し、そのまま口の中に入れる。

意外とワイルドな食べ方する、アイリスに少しおかしく思えてしまう。

その瞬間、表情の固まる。やはり、口に合わなかっただろうか?


「ア、アイリス?」

「・・・お、美味しい!!」


アイリスは子供みたいに夢中に食べた。

その様子をみて、微笑ましくなる。


「ヨウイチ!これ美味しい!!これウルフの肉なのに硬くない!それどころか肉を刺した時のこの柔らかさ・・・」

「ハハ、そうかそうか、お口に合ってよかった。というか、よく食べただけで何の食材か分かるな」

「うん、何となくだけど・・・身体が覚えているのかな?」


思わず、笑ってしまった。

なんというか、愛らしく感じる。

自分の料理を食べてもらって、ここまで喜んでもらうのはこんなにも嬉しいとは、悪い気分ではなかった


「ん!!んーん!!」

「こらこら、そんな急いで食べるな」


アイリスはご飯を喉に詰まらせた。

そう言って、葉っぱで作ったカップで水をすくって渡す。

それを勢いよく飲み干す。

見た目とは裏腹に食いしん坊なアイリスであった。


「コホッ・・・コホッ・・・あいがとう、ヨウイチ。」


苦しかったのかちょっと涙目である。

アイリスは黒杉の元の世界はどういう所を話しながらとご飯を食べる


「この世界ほどの綺麗な空気ではないけど、平和な世界だよ」

「平和・・・」

「ああ、魔法とかそういうのは無いけど、その代わりに生活を豊か科学という物が発展してるんだ」


平和という言葉を聞くと、何故か俯くがそれは一瞬だけだった。

そして、「素敵ね」と一言を言う。

そんな他愛のない会話をしながら、しばらくしてご飯は食べ終わった。


「ごちそうさまでした」

「あぁ」

「ヨウイチの料理おいしかった・・・」

「また作ってやるさ」

「ほんと?」


アイリスは喜ぶ姿をみると、なんだか犬っぽく見えてきたぞ。

言ったら、怒りそうだから言わないでおこう。

そう考えるとアイリスが声を掛けてくる。


「ヨウイチ!」

「ん、なんだ?アイリス?」

「ヨウイチ、水辺ってどこ?」

「あぁ、それならあっちにあるぞ」


そう言って、水辺の方に指を指す。


「わかったわ、ありがとう」


そういうと、ローブを脱ごうとする。

黒杉は驚いて、脱ごうとするアイリスを止める。


「バカバカ、ここで脱ぐな!」

「なんで?」


この子は常識と言う物はないのか?いや元々異世界だし普通の常識とは違うかもしれないけど、取り合えず止めようそうしよう。俺だって男なんだ。


「なんでって、俺は男だぞ女性がここで脱ぐもんじゃない」

「別にヨウイチなら見られて良い」

「俺がダメなんだ!!!」

「フーン・・・」


アイリスは目を細くして、少し不満げな顔をする。

駄目なものは駄目です!!そんな顔しても駄目!

その後、ちゃんと場所を指定して、水辺に向かわせた。


「はぁ、ちょっと疲れたな・・・」


俺だって、思春期なんだ、変に惑わさないでほしい。

それに、今はそういう事している場合じゃない。

やらなければならない事が沢山ある。


黒杉は自分を抑える為に、精神方面が削れ一人悶える。


しばらくして、1時間後・・・

アイリスはローブに羽織って帰ってくる。

髪の毛が濡れている、なんというかとても妖艶な姿だった。

どうやら、水浴びをしてきたそうだ。


「お帰り、アイリス、冷たくなかったか?」

「ただいま、大丈夫・・・それに水はとても綺麗だった」


先ほどまでの不満げな顔は無く、むしろスッキリしてきました。という顔だった。

時間が分からないが、身体が気だるく、眠気が襲って来る。

あくびをして、アイリスに寝る事を伝える。


「そうか、じゃあ寝るぞ。」

「うん」


アイリスは頷いて、互いにちょっと、離れた位置で寝始める。



―――――――


その日の就寝中

何かが、近づいてくる、気配を感じる。

黒杉は起き上がり、気配を感じる方に顔を向ける。

そこにはアイリスがいた。


「アイリス、どうしたんだ。」

「ヨウイチ・・・」


アイリスは言いずらそうだった。


「なんだ、言いたいことがあるなら、ハッキリ言ってくれ。」

「ごめんなさい・・・怖い夢を見て、寝れなくて・・・」

「・・・そうか」


アイリスは言った。


「だから少しだけで良いから、一緒に寝てほしい・・・」

「アイリス、いいか俺は男だぞ?何をしでかすか分からないんだ、もう少し自分の身には気を付けた方が・・・」

「ヨウイチなら別に良い、それにヨウイチは絶対にそんなことしない」


全て、話す前にアイリスが大丈夫だと言う。

何故か自身満々に言う、それとも何か根拠があっていったことであろうか?

いやまあ、手出しはしないけどさ。

俺はアイリスが立っている、逆方向に身体を向けて寝る。


「勝手にしてくれ・・・」

「ありがとう、ヨウイチ・・・」


そう言って、アイリスは黒杉のすぐ後ろに同じ向きで横になる。

そのまま、抱きしめながら、手を握る。

小さな身体の体温が背中にじんわりと伝わるが、華奢な手は冷たかった。

きっと、長くの間ずっと閉じ込められて寂しかったんだろうか、手が少し震えていた。


「ヨウイチ?もう寝た?」

「・・・」

「あのね、私ね、嬉しかったの」


アイリスは寝ているか思って話し始める。


「多分だけど、私は何百年も閉じ込められてたと思うの」


何百年・・・それは普通の人間では気が遠くなるような数字だった。

一人であの場所にいたのか?それもずっと?

普通の人なら、発狂してそのまま舌か千切ってもおかしくない状況。


「何も覚えていないけど、きっと遠い昔から閉じ込められた気がする・・・自我を取り戻した時には、鎖につなげられてて、動けない状態だった」

「そして、何年も何年も経った、きっと誰も来ないだろうって、きっと誰も助けに来てくれないだろうと思っていた、だけど、それが正しい事だと思っていた」

「だけど、私は・・・わがまま・・・だから祈ったの・・・一度だけでもいい、誰かに会いたい、孤独のまま死にたくないって」


アイリスは淡々と語る

彼女はただ生きたかっただけ、誰かに会いたかっただけ。

しかし、それは許されることはなかった。

一人暗闇の中で、過去の記憶が抜け落ちるほどの時を過ごして、死ぬこともできずにずっと、ただ待ち続けた。

残酷で、実に哀れだ・・・。

次第に声は震え、黒杉の手を少し強く握る


「だから、ヨウイチは来た時に嬉しかったの、まだ見捨てられてなかったって」


見捨てられなかったか・・・。


目を瞑ると、あの出来事を思い出す。

不気味に笑う"板野"の姿を、そして、何も躊躇いも無く、自分の胸に剣を突き刺したこと、あの時の事をフラッシュバックをするように、映像が流れる。


今の俺はアイツに復讐する為に生きてる。

でも・・・アイリスの言葉を聞いていると、不思議と黒い部分が少し収まった気がする。


「だから、ヨウイチが私を守ってくれる様に、ヨウイチは私が守る。裏切らないよ。」


そう言って、話が止まりしばらくすると、寝息が聞こえる。

安心したのであろうか、握っていた手は少し弱くなった。

黒杉は小さく冷たい手を優しく握り返し、眠りに落ちる。



―――――【それから2週間後】



俺たちはご飯を食べ、この拠点から旅立とうしていた。


「アイリス行くぞ」

「うん・・・!」


この二週間の間に分かったことが、村人の低ステータスでも魔物が倒せること。

あくまでも、下級魔物限定になるが、喉元を的確に掻き斬れば魔物は息が出来ずに死ぬ。

そこらへんは、人間と変わらないようだ。


そして、微妙に器用さが高い理由が分かった。

それは魔物の急所を的確に当てる事で上がったのだった。


今思えば、王国出てから生き残りのゴブリンがいないか確認する為に

確実に殺すために、喉元で短刀を突き刺してた。

その時から素早さと器用さが上がっていった。

本来は、職業や経験など基づいてレベルが上がった時にステータスが反映されるものが、それを無視してる。

なぜ上がったのかは、理由は一つしかないだろう。


「成長・Ⅰ」


1ってことはその次の段階があるのか?

そして、本来は覚えられない筈のスキルが増えた。


パッシブ「自動回復・Ⅰ」


これには理由があり、器用さが上がるまでに魔物の攻撃を受け、殺し、そして薬草を食べる

それを繰り返しやっていたら、ある時、かすり傷を受けたとき、いつの間に回復していた。

なんか、おかしいなって思ってステータスを見ていたら。

レベルが上がるスキルが覚えられなくても、繰り返しやる事でスキルが覚えられることが分かった


─────────

【黒杉 陽一】

職業 村人

LV18

HP1000

MP478

SP200


攻撃 107

防御 346

魔力 333

精神 500

素早さ 100

器用さ 679

運  15


スキル

・石投げ


パッシブ

・成長・Ⅰ

・転職の加護【堕】

・自動回復・Ⅰ


「な、んだと・・・!?」


自分のステースがありえないぐらい上がっていた。

器用さに至っては、もう少しで700になりそうだった。

近くに魔物がいたので、急所を突いて倒すと・・・


~~~~~~~

素早さ 100

器用さ 691

~~~~~~~


上がってる・・・ちゃんと上がってる。

今まで何かできないか、ずっと考えてた。

そして、俺は強くなれる方法を一つ見つけた。

成長スキルの真の力であった。

他のステータスもなぜ上がったのかはわからないが。

条件を満たしたからステータスが上がったのだろう。

そして、もう一つ気になる点があった。


「転職の・・・加護?」


そして、パッシブの方に今まで何の加護か分からなかったのが、転職の加護だと書かれていた。

いつの間に、隠れていたステータスが出てきたのかは、ある程度は予想はついていた。


黒杉はの火傷の後を見る。


見えるようになったのは、あの時に起きた、紅い電撃。

あれに当てられてから、少し身体が変な感じがした。

それよりも、この【堕】とは何だろうか?文字を見る限り、嫌な予感しかない。


軌光石から出てくる、ホログラム映像を触れる。

職業の辺りを触ると、画面が移動して、項目が現れる。

文字には、剣士、魔法使いなど様々な職業が書かれていた。


「まさか・・・」


剣士の文字を触れると、新たな文字を現れる。


『剣士に転職しますか?』


その文字を見て、思わず笑みが零れてしまう。

迷わず、表示された『はい』を選択した。

すると、ステータスの職業には剣士と書かれていた。


「ハハ・・・ハハハハハ!!!」

「よ、ヨウイチ?」


声が出てしまう程、笑ってしまった。

他にも、魔法使い、剣士、騎士など初級職と呼ばれるものに次々と転職する。

その後、転職の加護で何ができるのかをアイリスと一緒に模索しながら軌光石使い試した。

それで分かったことが。


1、ユニーク職に転職する事はできない。

それは、その人の理想を具現化したもので、その人の今までの人生の歩み、その人の生れついた職業である。


2、条件を満たせば上位までクラスの転職は可能、ただし、元々の職業は英雄職まで転職可能

クラスには【初級職】【中級職】【上位職】【最上位職】【極致職】【英雄職】と6段階に分けられている。


村人はもちろんの事、初級職である。

しかも、元々の職業が村人だから、英雄職に転職できないという罠。

さらに、追い打ちをするように、この【堕】と書かれているせいなのか、初級スキルしか覚えられない為、結局の所、上級職の条件を満たす事ができず、下級職しか転職出来なかった。


3、転職した職業スキルは引き継ぐ事ができる。

これは、一度転職した職業は村人の状態でも扱えるという事

これはありがたい、毎回、転職しながら戦うのがめんどくさいから統一化されるのはうれしい所。

試し切りを兼ねて、繰り返し転職した結果。


【黒杉 陽一】

職業 村人

LV20

HP1090

MP478

SP200


攻撃 117

防御 346

魔力 333

精神 500

素早さ 150

器用さ 800

運  15


スキル

・「石投げ」、「十文字切り」、「スラッシュ」、「収納」、「錬成」、「跳躍」、「鍛冶」、「鑑定」、「解析」、「改竄」、「釣り」、「料理」、「木こり」、「盗む」、「スロイーング・ダガー」、「連打撃」、「乱舞」、「ヒール」、「サキュア」、「ショット」、「ピンポイント」、「アタック・アップ」、「ガード・アップ」、「 密迹」、「金剛」、「加速」、「一刀両断」、「残影」、「魔力感知」


初級魔法・炎、水、火、雷、土、風、闇、光

初級呪術「呪」「恨」「影」


パッシブ

・成長・Ⅱ

・転職の加護【堕】

・自動回復・Ⅰ

・千手(せんじゅ)


スキルのオンパレードになってしまった。

今まで、石投げしかなかったのが、こんなにも増えると、返ってめんどくさくなってしまった。


パッシブにも変化が起きた。

軌光石で調べると、こう書かれていた。


成長・Ⅱ

様々な職種を経験した事によって、以下の効果を与える。

・更なる急成長ができるようになった。


千手(せんじゅ)

様々な職種経験をした事によって、以下の効果を与える。

・あらゆる武器を使いこなす事ができるようになる。

・武器の威力上昇

・魔法の威力上昇

・物の威力上昇

・素手の威力上昇


「まさか・・・」


思わず、息を吞んだ。

あらゆる武器を使えることに、俺は興奮した。

今まで、投げるか、まともに使ったことない武器のみしか攻撃方法しかなかったので、縛りプレイに開放された感がすごかった。


そんな、上機嫌にしている顔を見たアイリスは頬を突く、アイリスの方を見ると。


「ヨウイチ良かったね。」


そう言って、自分の事のようにアイリスも嬉しそうにしてた。


「あぁ、これでまともに戦える」

「まともに戦えなくても私が守るよ?」


アイリスは首を傾げてそう言う。

男としてのプライドがあるし、普通逆じゃないか?って事をアイリスに言えば、ややこしくなるから、言わないでおこう。


そう、なぜ、アイリスがその様な事をいうと、三日前の出来事。


それは最大戦力であり、問題でもあるのが・・・アイリスだった。

魔法が使えると分かれば、アイリスも戦えることになる。

戦いのサポートしてもらう為に、どんな魔法が使えるか聞く。

快く了承してもらい、軌光石でステータスを一緒に見る。



【アイリス(仮)】

職業 ■■■■■

LV50

HP20000

MP50000

SP10000


攻撃 20000

防御 14000

魔力 78000

精神 80000

素早さ 30000

器用さ 20000

運  15


スキル

最上級魔法・火、水、風、土、雷、光、闇

上級・火、水、風、土、雷、光、闇

中級・火、水、風、土、雷、光、闇

初級・火、水、風、土、雷、光、闇

古代魔法・創成

起源魔法・創成


パッシブ

・覇気

・超再生EX

・自動回復EX

・自動魔力回復EX

・■■


初めて見た時、目を疑った。

所々、消えて見えなくなったり、見えなくなったりとかしてけど、そのステータスは破格だった。

スキル見ても、【古代魔法】【起源魔法】やら何か凄そうな物がズラズラと並んでいた。

使えるかどうかを聞くと、本人は使えると応答。

だけど、消耗が激しいから、あまり使わないと言う。


「あの、アイリス・・・」

「だ、大丈夫・・・ヨウイチは私が守るから・・・!」


そう、意気揚々と言うアイリス。

しかし、見た事のないスキルばっかりだ。

このステータスを見るだけで、只者ではないという事が分かる。

自分はとんでもない物を呼び起こしたかもしれない。


だけど、それは今更だ。

どんなやつであれ、アイリスはアイリスだ。

一緒に旅する、頼もしい仲間であると変わらなかった。


そして、出口を目指して2週間。

素のステータスは相変わらずだが、その分はスキルで補うようにしている。

安定して戦えるようになった、自分のレベル上げを兼ねて、一人で魔物を倒していた。

アイリスは不意打ちをされないように背中を守っていた。


洞窟を彷徨っていると、遠くに光が見えてくる。


「ヨウイチ・・・」

「ああ、分かってる」


しかし、簡単にださせていただけないようだ。

あの時、戦ったケロベロス以上のプレッシャーと魔力が襲って来る。


俺たちはそれを臆せずに突き進むと。

あの時と同じ、円状の領域にでる。

そして、そこにはいたのは・・・。


「SYURURURURU・・・」


蛇のような頭が八本の頭、硬い鱗で覆われた八本の尾、身体は一つに合体してた。

背中には草木が生え、本体はケロベロスの3倍はある。

黒く大きな鱗が一枚一枚が凶悪に尖っていて、かすり傷でも致命傷は免れないだろう。

目は危険信号を知らせるような爬虫類の赤い眼がギロリと一斉に黒杉たちを睨みつける。


「SYAAAAAAAAAAAA!!!」


それ日本に出てくる伝説の生き物「八岐大蛇」ような見た目をした、化け物だった。

蛇の化け物は、ここを通すわけには行かないと言わんばかりに立ちふさがる。

赤い瞳は自分たちの餌が来たかと言わんばかりと見つめる。

ここの洞窟の魔物はハラペコの奴が多いようだ。


「そりゃあねえぜ・・・出口前だというのによ、というかデカすぎないか!?」

「ヨウイチ・・・大丈夫、生きて・・・ここから出よう!」


そう言って、アイリスは黒杉の手を強く握る。

黒杉はまったくと呆れた様子で握り返した。

不思議と心が安らぐ。


黒杉は剣と短刀を構える。


「だけど、俺は諦めるつもりないからな・・・だから、潔く死ね!!」


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