私のライバル

 私はヤブノウサギ。


「はい、これでおしまい!時間作ってもらってすまなかったね?もう遊びに行っても構わないよ?」


 こちらは飼育員さん、今日は担当フレンズの定期検診とかいうので私に具合が悪いだとか気になることはあるか?だとかいろいろ質問をしに来ている。


 尤も、特にこれと言って体調が悪いってことも悩みがあるというわけではない。


「今日もユキウサギさんのとこかな?」


「ふふふ、ユキウサギちゃん… 今はケーキ屋さんでキャロットケーキを買いに向かってる頃かな?」


「相変わらず詳しいね?仲が良くて羨ましいよ?」


 用事って程のことはない、退屈しのぎに可愛いユキウサギちゃんに会う。

 いつもと同じ、今日はどんな勝負を持ち掛けてくるのかな?


 飼育員さんは私と彼女が仲良しと言う、私はあの子が好きだけど… ユキウサギちゃんはどうなのかな?なんて、実はあまり拘ってはいない。


 ユキウサギちゃんは可愛い。


 それで全て成り立つ。←成り立たない


「君に悩みなんてなさそうだけど… 何かあったら言ってくれよ?俺で良ければ力になるから?じゃ、いってらっしゃい?」


「うん、ありがとう飼育員さん?じゃあまたね?ふふふ」


 ユキウサギちゃんは可愛くて好き。


 でも飼育員さんは優しくって私をいつも気に掛けてくれる。



 だから私はそんな彼も好き。





「げげっ!ヤブノウサギ…!」


「ユキウサギちゃん?これからおやつ?」


「なぜ知っているの!?ライバルの情報収集は欠かさないと言うわけですか?さすがですね!これからそこのお店でキャロットケーキを買うところです!」


 可愛い…。


 そう来ると思って私は既に用意しておいたよ?私が先にユキウサギちゃんの分も買っておいたと知ったらどんな顔するかな?


 もう片方は… ニンジンが苦手な飼育員さんと食べようかな?これならきっと彼でも大丈夫。


「ここのケーキは人気なの!勝負はお預けですよ!先に買わせてもらいます!」


「あ、ユキウサギちゃん実は…」


「一つくださーい!」


 大変言いそびれちゃった…。


 目の前にケーキがあるとも知らずにケーキを買おうとするなんて、一直線で本当に可愛い。


「えぇ~!?売り切れ!?そ、そんなぁ…」


 まぁ私が二人分買ったのが最後だったからもう無いんだけどね、ふふ。


「くぅッッッ… 今日は1日ハッピーだって占いで言ってたのに!」


「はい、これあげる?良かったら食べて?」


「え…?」


 私は予定通り買っておいたケーキを彼女に渡した、占いに裏切られて落胆としてるところで私にケーキを差し出されたのが意外だったらしく、とても驚いた顔をしている。


「ライバルである私に塩を贈るの?」


「…?ケーキには砂糖じゃない?」


「ジュルリ… しかし!屈服するわけにはいきません!勝負よ!私が勝ったらそれをありがたく頂く!」


「ふふふ、いいよ?今日は何?」


 別に競い合う必要もないのだけど、ユキウサギちゃん本人がこういうのだから仕方ない、私はその勝負受けて立つよ?


「かけっこよ!先にあの木にタッチしたほうが勝ち!」


「わかった、ところで今日はお洒落してるね?とっても可愛い…」


「え?いや… そぉ?」


 どこかお出掛け?誰かとお約束?


 最近よくお洒落してるけど、今日は特別気合いが入っている気がする。


 あ… わざわざお洒落なんてするくらいだから、もしかするとデートでは?


 ほんのチョッピリ寂しいけれど、こんなに可愛いユキウサギちゃんだもの… 男の人が放っておく方が逆に不自然なのかもしれない。


「彼氏でもできた?」


「んな!?そんな訳が…!はっ!?動揺させようったってそうはいきません!やるじゃないですか!油断も隙もない!」


 あれれ?彼氏ではない、それとも照れ隠し?じゃあまだ進展がないってことかな?頑張ってねユキウサギちゃん?遊んでもらえなくなるのは寂しいけれど… わざわざお洒落するくらいだからね、きっと凄く楽しいし幸せなんだよね?私応援してるよ?


「そんなことよりさっさと始めましょう!そこの人!合図をお願いします!」


「はわわー?合図?わかりましたー」


 ユキウサギちゃんがたまたま通り掛かったフレンズに声を掛け合図を頼んだ、私達は横に並び広場に佇む一本の木を見る。


「位置についてー?よーい… どんっ!」


 合図と共に地面を蹴り抜き前へ前へと走り出す、ユキウサギちゃんも今日は転んでいない、調子いいね?可愛い…。



 それにしても。



 お洒落なんてするくらいだしあの反応だからこれから会うのは本当に憧れの人なんだろーなぁー?


 それはどんな人?


 フレンズなのかもしれないし飼育員さんとかガイドさんのことなのかもしれない。


 なんだか気になるなぁ…。


 ヒトにしてもフレンズにしても気の多いそういうのが上手な子って必ずいるし、ユキウサギちゃんみたいに単純で可愛いフレンズはそういう言葉にすぐ酔ってしまう。


 なんだか心配になってきちゃった… ふふふ、後をつけちゃおうかな?


 

 なんて考え事をしていたものだから。



「ゴール!やった!私の勝ちぃ!」


 負けちゃった… ユキウサギちゃんったら嬉しそう?ふふふ。


「さすがだね?はいこれキャロットケーキ」


「やっぱり今日はツイてる!今回は勝たせてもらいました!そして次も勝ーつ!それじゃありがたくもらっていきます!」


 嬉しそうに耳を揺らしながら去っていく彼女を見送り、私は一人そこに佇んだ。



 気になるなぁ?


 気になるなぁ?


 誰と会うのかなぁ?








 結局こっそりついていく私を許してね?だって凄く面白そうなんだもん。


 ユキウサギちゃんが恋を?ふふふ… そんな素敵な人はだあれ?妬いちゃうなぁ~?



 どれ一つ顔でも拝んでやろう。



 その程度の気持ちで彼女をつけていた、本当にただの興味本意。


 だってユキウサギちゃんのことだから悪い人に騙されてるかもしれないし、いざという時は友達としてビシッと言わなくてはならないとも思った。




 でもやめておけばよかったね。




 目に映る光景、長い耳の捉える会話。


 私には信じられないものだったから。



「お待たせしました!おやつを買ってたら少し遅くなってしまって…」


 少し息を切らしながら頭を下げる彼女、私と顔を合わせた時と少し違い何だか汐らしい感じがする。


 待ち合わせ場所にいた相手は言った。


「気にしないで?あの子と会っただろう?バレなかった?」


「はい!実はこのケーキもヤブノウサギから勝ち取ったのです!でもその後すぐに立ち去りましたから、ここに来るのはバレていません!」


 ううんバレてるよユキウサギちゃん?


 それと…。


「さっき彼女の定期検診をしてね?君のとこに行くと言ってたから少し心配してたんだ?でも、大丈夫そうだね?」


 ううん、大丈夫じゃないよ?


 飼育員さん?



 そうあれは私の担当飼育員さん。


 さっきまで私と一緒にいたの、でも今はユキウサギちゃんと楽しそうにおしゃべりしながら街の中へ並んで歩いて消えていく。


 

 私に内緒で、二人が並んで街の中へ消えていく。



 混乱していた。


 なぜ二人が?飼育員さんは私の飼育員さんでしょう?なぜユキウサギちゃんと?


 それにユキウサギちゃんだって彼が私の担当飼育員だって知っているはずなのに…。



 二人は明らかに私を避けて内緒でデートに行った。

  


 なんだか胸にモヤモヤとしたものを感じる、これは何?



 ついさっき自分で思ったばかりだ、可愛いユキウサギちゃんなのだから男の人が放ってはおかないと。


 なのに相手が私の飼育員さんとわかると…。




 なんでなんで?なんでユキウサギちゃんなの?なんで飼育員さんなの?私に内緒でどこ行くの?私に言えないようなとこで言えないようなことを二人でするの?二人は私を置いていくの?友達でしょう?担当でしょう?なんで私はノケモノなの?




 真っ黒でドロドロとした感覚が心を掻き乱している、聞きたくないし見たくないので建物の影に隠れて小さく踞ってしまった。


 とても気になる、どこへ行くのか。


 ついていって知りたいのに受け止めるのが怖い。


 違う違う… まだ決まっていない。


 そうだよまだ二人がそうだと決まったわけではない、ただ私に黙って二人で並んで歩いてるだけ、お互いに何か用事があったのかもしれない。


 例えば、ユキウサギちゃんは私に勝つために弱点が知りたくて飼育員さんに聞きたいのかもしれない。


 飼育員さんは定期検診の一環で周りから見た私のことをユキウサギちゃんに聞きたいのかもしれない。



 そうだそうに決まってる。



 私は勇気を出して立ち上がり再び二人の後をつけることにした。






 追い付いたとき、二人は仲良く噴水のある公園のベンチに座っていた。



「はいどーぞ?」


「それが例のキャロットケーキ?俺実はニンジンが苦手でさ?」


「ダメダメ!そんなんじゃウサギフレンズの相手は勤まりませんよ!美味しいから騙されたと思って食べて?」



 それは私があなたに買ったんだよユキウサギちゃん?二人で食べたら美味しいかなー?なんて思ってたし、あの場で別れるなら別れるで帰って私の分を飼育員さんと分けようかとも考えていたの。


 今二人がやっているみたいに。



「おぉ本当だ!これ美味しいね?これなら俺でも食べれる」


「でしょー?ヤブノウサギから勝ち取った勝利の味です、格別に美味しい!」



 とても楽しそうに… 二人とも…。



 でもまだ、まだハッキリと二人の関係が決まったわけでは…。


 ユキウサギちゃんは優しいから、飼育員さんの前で一人でケーキを食べるのが申し訳なかったんだよね?

 飼育員さんならそういうの気にしないと思うけど、好意を踏みにじるような人じゃないし。


 まだ、わからないよね?



 でも正直もう見ていられなかった。



 ユキウサギちゃんが私の飼育員さんに馴れ馴れしくしているのも。


 飼育員さんが私に内緒にしてユキウサギちゃんを構っているのも。



 そうならそうで私の担当なんて変えてしまえばいいじゃない?


 ユキウサギちゃんが好きならユキウサギちゃんの担当になればいいし、ユキウサギちゃんだって素直にその方がいいと言えばいいのに。



 なのにわざわざ私に黙って…。



 それで私は今、何をしてるの?



 何がしたいの?



 二人のこと羨ましそうに遠くから眺めて、仲間外れにされて。


 一人でバカみたい…。




 やがて二人は雑貨屋さんに入っていった。


 なにやら可愛らしいアクセサリーを二人で眺めてあぁでもないこうでもないと見て回っている。


「これはどうかな?」


「イマイチ、やっぱりこっちでしょう」


 ユキウサギちゃんはニンジンの形をした可愛い髪止めを手にとってはそれを前髪の辺りに付けて飼育員さんを見つめている。


 最近、やけにお洒落だなって思ってはいた。


 今日に始まったことではない、ユキウサギちゃんは近頃お洒落に気を使っていた。


 今日までそれは彼女のマイブームか何かだと思っていたけど、なんだか特にお洒落をしてた今日の彼女を見て全て納得がいった。


「確かに可愛いね?」


「えへへ、照れますね?」


「じゃあそれにしようか?君が言うならまぁ間違いはないだろう」


 飼育員さんに見てもらう為だったんだね?


 恋って本当に人を変える。


 


 もうダメ、惨めすぎる。



 

 私は二人に気付かれぬまま背中をむけ、その場を後にした。







 翌日のこと。


 いつものように私はユキウサギちゃんの元へ向かった。



「で、でたなヤブノウサギ!」


「ユキウサギちゃん、今日も可愛いね?またお洒落して」


「え… なに急に?まぁありがとう」



 一晩眠れずに考えていて気付いたのだけど。



「ねぇ私達ってライバルなんだよね?」


「そうです!あなたに負けるわけにはいかない!ライバルだから!」


「じゃあ今日も勝負しよう?どちらが優れているか徹底的に」


「や、やけに好戦的ですね?どうかしたの?」



 私って嫌な女。


 それに気付いた。



 だからたくさんの方法で勝負を持ちかけた。


 普段はユキウサギちゃんから吹っ掛けてくるけど今日は私から何度も何度も勝負を望んだ。


 そして。


「ま、また負けた…」


「まだだよ、次はどうしようかな?」


「待って!今日のところはこれくらいに!」


「負けっぱなしで悔しくないの?次なら勝てるかもよ?」


 勝って勝ってまた勝って、私はユキウサギちゃんを負かせ続けていた。


「なんだか今日のヤブノウサギは変です!なんか怖い!?」


「逃げるの?ふふふ… あーそびーましょー?」


「ひぃ… 回り込まれた!?」


 最低だ、私はこんなこと望んでいない。


 でもまるで憂さ晴らしするみたいにユキウサギちゃんを負かせて優位に立とうとしている。


 私の方が凄い、あなたより凄い。


 そうやって彼女の心をへし折ろうとしている自分がいる… 確かに怖い。


 やめないと、ユキウサギちゃんは大事なお友達、ヤキモチなんかでこんなことして最低だ。


 飼育員さんと付き合っているからってなんなの?なんでこんなことをしているの?可愛いユキウサギちゃんに彼氏ができたんだからお祝いしてあげようよ?


 たまたま相手が私の飼育員さんだっただけじゃない?


 そう、私の飼育員さん…。


「逃がさないよ?」


「いやぁ!?よくわからないけどお願いもう許して!?」


 涙を浮かべるユキウサギちゃんを壁に追いやり、逃がさぬように退路を塞いだ。


「どうしたの可愛いユキウサギちゃん?私に勝ちたくないの?ふふふ…」


「いやぁぁぁ!?!?なんでえ!?」←号泣



 これから彼女に何をするの私?乱暴しちゃダメだよ?



 でも真っ黒でドロドロの気持ちは私を支配していく。



 最早本心では自分が何を思っているのかわからなくなってしまった。




 これから間違いを犯すだろう。




 それを自分の中で確信したその時だった。



「ちょっとちょっと!?何してるの?ケンカはダメだ、ほら離して!」


 現れたのは彼。


「飼育員さん…」


「やった!助かりました!」


「ダメじゃないか?君達友達だろう?なんでこんなことを?」


 なんで?何でって…。


「ふふふ… ユキウサギちゃんを助けにきたの?」


「君を止めに来たんだ」


「素敵だね、絵本の王子様みたい」


「どうかしたの?何かあったの?悩みがあるなら俺に言ってくれと言ったじゃないか?」


 心配してくれるの?そうだね、飼育員さんは私の担当だものね?


 でもそんなの建前、本当はユキウサギちゃんを守りにきたんでしょう?


 恋人なんだから。


「なんでこんなことになっちゃったかなぁ」


「だって…」


「うん?」


 言いたくない。


 でも口が自然と動き出す、溜まってた黒いものを吐き出せと突き動かしている。


 燻っていた気持ちを一息で、とても早口に答えた。


「だって飼育員さんは私の飼育員さんなのにユキウサギちゃんとデートなんかして、しかも二人して私のこと避けてこっそり二人っきりで会ってるなんてひどい、言ってくれてもいいじゃない?私はそんなにバカじゃない、気付かれないとでも思ったの?昨日二人が仲良く歩いてるところを私が後ろからつけてたこと知ってた?知らないよね?とっても楽しくって私のことなんか忘れてたでしょ?飼育員さんは私の飼育員さんでしょ?ユキウサギちゃんの飼育員さんじゃない!力になるってなに?なんでそんなこと言ったの?そういうの私じゃなくてユキウサギちゃんに言いなよ、黙ってたってことは私に後ろめたいことを二人で感じていたからでしょ? …もういや、私最低だね?サヨナラ…」


 自分で言ってておかしな行動や言動なのを理解していくとどんどん惨めさが増していった。


 ユキウサギちゃんに八つ当たりして、飼育員さんに自分勝手なこと言って。


 これではもう二人に合わせる顔がない。



 だからサヨナラ。



「待て!」



 溜まってたこと全部吐き捨ててその場を去ろうとしていた私の腕を掴み、彼は私を引き止めた。


「離して」


「離さない、君昨日見てたの?誤解だよそれ?ちょっと聞きなよ?」


 誤解?誤解ってなに?


 あんなに楽しそうにしてたのに。


 もう… こんなの普段の私じゃない。


 あぁもう。


 なんで涙なんか…。


「こっちを見て?俺の目を!」


「いや… やめて」


「いいからほら!前髪で隠してないで?これ!」



 パチッ

 その時、腕を引かれ向かい合わせにされた私の前髪が何かで止められた音がした。


 普段より開けた視界で目の前の彼を見た。


「ユキウサギさん鏡ある?」


「あ… はいどーぞ!」


「ありがとう… ほらこれ?見て?」



 嘘これ…。

 

 髪飾り…?ニンジンの。


「君今日なんの日か知らないでしょ?」


「今日?」


「俺が君の担当について丁度一年、それはその記念にプレゼントだよ?さっきからずっと君のこと探してたんだ」


 一年?記念日?


 今日が?


 状況が把握できずに私は目を丸くして黙りこんだ。


 黙ることしかできなかった。


「昨日のはさ?ほら、俺あんまりセンスとかないからさ?君のことよく知ってるユキウサギさんなら色々好みとかわかるかな?ってちょっと付き合ってもらっただけなんだよ?デートとかじゃなく」


「ヤブノウサギが早とちりとはらしくないですね?はぁ怖かった…」


 全部誤解?

 早とちり?


 そう、二人はそういう関係ではなかった。


 私は二人が好き、そんな大好きな二人だったからつい冷静さ欠いてこんな行動にでてしまった。


 飼育員さんは私のプレゼント探しにユキウサギちゃんを呼び出し、ユキウサギちゃんは私の為にそれを一生懸命選んでくれたのである。


 なのに私ときたらこんな…。


「ユキウサギさん、やっぱり仲がいいんだね?相談したら君のことでキツめの指導をいただいたよ?ニンジン嫌いは直せとか好みくらい把握しておけとか」


「べ、別にヤブノウサギの為にやったわけでは!同じウサギとしては見過ごせなかっただけ!」


 ユキウサギちゃんが私の為に…?うれしい。

 それなのに私ひどいことして… 謝らないと、ちゃんと二人に。


「ごめんなさい… ユキウサギちゃん本当にごめんなさい」


「別に謝ってもらうようなことはされてないです、今日のところは完膚無きままに完敗、さすがライバル!」


「飼育員さんもごめんなさい、私なんてことを…」


「いや、なんかこちらこそ… そろでそれどうかな?気に入ってくれるといいのだけど」


 ニンジンの髪飾り。

 ユキウサギちゃんと飼育員さんが選んでくれた素敵な髪飾り。


 いつもは前髪に隠れる片目も、これを使えば両目でしっかりと二人を見ることができる。


「ありがとう二人とも… 私嬉しい!」


 伝えると二人はにこりと笑いかけてくれた。


 私なんてこんなに最低なのに。


「ところであの?君さっきのってつまり… ヤキモチを妬いてたってことだよね?ユキウサギさんに」


 そう、私はヤキモチを妬いてた。


 思い出すととても恥ずかしくなってきた、だってそれって告白してるようなものだもの。


 私… 飼育員さんが…。


「それって君も俺のこと…」


 「も」って… つまり?





「「好き」」




 声が重なった。






 


 じゃあユキウサギちゃんが最近お洒落なのは?


 これについてはさすがに私でもわからず、聞くとこんな真実が隠されていた。


「ヤブノウサギの飼育員さんから恋愛相談を受けて自分にはそういう話がないことが悔しくなったから少し気を使っていたの」


 可愛い…。

 私に負けたくなくて頑張ってたんだね?すごくお洒落してて本当に可愛い。


 今度一緒にショッピング教えてもらおーかなー?ふふふ…。


 だって。


「ごめんね?先に彼氏つくっちゃった、ふふふ…」


「あぁぁぁ!うわぁぁぁん!?!?!?」


 また悔しくって湖で泣いてるのかな?


 とっても可愛いんだよ?一緒に行こう?

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