第26話 女の子は誰でも
私はリオンで浴衣を探していた。
ヒナ兄と祭りに行くつもりだ。
あの時から4日経った。
まだあれからヒナ兄と会話を交わしていない。
ヒナ兄はあれからそこそこ忙しく過ごしている。
午前はうちの果樹園のバイト。
午後は分からない。
楓ちゃんの家に行ってるんだと思う。
佑輝…兄ちゃん…。
あの後、リオンで起きたことをもう1度じっくり考えた。
結局、理解は出来ない。
しかし、理解を捨てて考えた結果。
たぶんヒナ兄は楓ちゃんの為に佑輝兄ちゃんの代わりとして過ごしている、という狂った結果に行き着いた。
そうだとは思いたくはないが、そう考え無くては色々納得がいかなかった。
ヒナ兄は楓ちゃんに良いように使われているんだ…。
そんな妄想が私の頭を占領していた。
しかし、実際のところ私にとって問題はヒナ兄と楓ちゃんの狂った関係では無かった。
問題はあのボディーソープの香りだ。
私は子どもだった。
だから楓ちゃんの家に行って、まさか男女の関係になってるなんて思ってなかった。
これにしようかな…
頭では色々考えながらある浴衣を手に取った。
その浴衣は白地で淡い水玉模様があしらってあった。
帯はえんじ色。
価格は2万。
たぶん、ヒナ兄ならこんな感じの浴衣が好きだ。
少し悩む素振りをしてはみたが、もう心では決まっていた。
これにしよう。
レジに持って行き、お姉ちゃんのくれた5万のうち2万を払う。
紙袋に入った浴衣を持って、しばらく用はないがリオンを回っていた。
ヒナ兄はどんな感情で楓ちゃんとリオンを歩いていたんだろう…。
ふと、そんな思いが頭に浮かんだ。
ヒナ兄の気持ちになって考える。
分からない。
私はまだ子どもなんだなぁ、と少し切なくなった。
きっと、私は五年前に比べれば少しは大人になっているはずだ。
でも、それだけヒナ兄も大人になっていて、距離は変わらなかった。
だからヒナ兄は私に厳しいことは言わない。
色々対等では無い私に対してそれを言うのはひどい事だとヒナ兄は感じているんだ。
どれか1つでも大人だったら…
きっと…もしかしたら…私はヒナ兄と対等になれる?
たぶん無理だけど。
リオンに入っているドラッグストアの前を通った。
何となく中に入る。
今、家に足らない物は無かったかな。
洗面用品、化粧品、生理用品。
軽く見て回る。
ある物がぱっと目に入った。
店内BGMが切り替わる。
女の子は誰でも。
色気のある声の女性がそう歌った。
たぶんその歌に心を背中を突き動かされた。
それを持ってレジに行く。
今思うと大胆な買い方をした。
買った物は分かりやすく大きな文字で箱に書いてあった。
0.02。
女性は続けて、
女の子は砂糖とスパイスで出来ている。
って、歌った。
頭の中がピリッと痛んだ。
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