アオ ao【夜明け】

目が覚めると、暗闇の中で窓から入る夜だけが、まだ明るい光を発しているように感じた。


今、何時なんだろう。

手元の携帯を見ると、20:01と表示されていた。そして、メールが入っていることに気づいた。開くと、岸本さんからで、


【そろそろ帰りますね。君は、寝息すらたてないんですね。明日は遅番だね。朝はゆっくりするんだよ。いつでも連絡くれたらいいから。岸本】


メールは、15:16と時間が出ていた。


立ち上がり、部屋の電気をつけた。テーブルを見ると、洗ったいちごが皿にのせてあり、ラップがかかっていた。横には果物のジュースがあった。

熱っぽさは引いていた。せきが出ているが、しんどさは朝よりかなり楽になった。

明日の為に、お風呂に入った。


お風呂から上がり、暖房をつけた。そして、テレビを見ながらいちごを食べ、ジュースを飲み、風邪薬も飲んだ。

私の心は無心だった。


岸本さんは、善良なひとかもしれないという思いで、私の心は満ちていて、他に何も考えられなかった。


彼が生きている、いつでもつながれる、それは、今の私の最大の救いとなっていた。

彼に声をかけてもらっていなければ、私はどうなっていたかわからない。


私は、

【色々ありがとう。また眠ります。 小川】

岸本さんにメールを送って、また横になり眠りに入っていった。


翌朝、目が覚めると岸本さんからメールが入っていた。


【僕は明日は休みで、昼から盆踊りの会に出て、ちょっと踊ってきます。盆踊りは2年ほど前から習っています。また、この話は今度します。】


と、いう文章だった。

盆踊り?

と、私は少し驚き意外な気がした。2年前ということは奥さんを亡くして10年たったころだろうか。彼の亡くなった奥さんについて、私はいずれ話を聞くことになるだろう、そんな予感がしていた。


私は、自分の父の一周忌が近づいているのを感じていた。祖母の家で、おじさんと私と祖母で行うのだろう。もう少ししたら祖母から連絡があるはずだ。


私は父が亡くなったことが幻のように感じている自分に気がついていた。

意識を失った父の顔は鮮明に覚えているのに、そこから先の記憶が余りはっきりしない。思い出すことを心が拒否している感じだった。


私は冷蔵庫から残りのいちごを洗ってしまい、ヨーグルトやプリンも一緒に食べた。それしか冷蔵庫にはなかったので、私は夕飯のためにお米をしかけておいた。


私のお腹はまだあまり活発ではないようで、少ない量で満たされていた。

風邪の症状は少しせきが残っている程度で、かなりよくなっていたので、もう風邪薬も必要なかった。


今日は曇り空で空気は冷たく感じたので、洗濯を迷ってやめた。洗濯は室内干ししかできないので、この南の出窓から思いきり太陽の光が入る日が良かった。


布団は一応、折りたたみスノコに広げて室内に干した。

そうじ機も久しぶりにかけた。


紅茶をその後飲んでテレビを見ていたら、あっという間に昼過ぎになり仕事の時間となった。

私の仕事の時間は朝8時から昼14時までと、昼14時から夜20時までと二つのパターンがあった。休憩は1時間あった。私たち受付は全員女性で、私は週5日働いているけど、私以外は、30代と40代の主婦で週3日から4日働いていた 。受付の休みは水曜の午後のみとなっていた。一人体制でする仕事なので、私たちは会う時間は交代の5分から10分の間だけだ。でも仲間は仲間なので、少しの時間でも仕事でわからない点などを話し合えると私は安心する。


そんなことを思いながら、私はバスに揺られ仕事先へたどり着いた。



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