アロヒ 'alohi【キラキラ光る】

母が家を出てから、私と父親での生活が始まった。

幸い、父親の母が私たちの家から徒歩10分くらいのところで、一人ひっそりと暮らしていて、その祖母との交流が活発になった。


私は学校帰りに祖母の家に寄り、夜ご飯を祖母と食べ、祖母の作った料理を父親の分、家に持って帰ることが多くなった。


父親は大手企業のサラリーマンで、その頃ちょうど働き盛りで夜遅くなることも多かった。


私は夜は眠たければ先に眠っていたし、何となくテレビを見て起きているときもあった。

入浴も私はまだひとりでは不安な頃だったので、祖母に世話をしてもらったりしていた。


それまで続いていた生活が急に終わりを告げることもあるのだと、私は小さな身体で悟り、全身寂しさで身が傷む思いがした。寂しさ、というものを私は少しふつうの子どもより早くに知ることになった。


中学へ進学する頃には、私のうちに秘められた寂しさは抑えが効かないほどになった。

学校から帰ってからの寂しさを祖母の存在では埋めきれなくなっていた。


そんなふうに家庭環境により寂しさを感じている子は、見ていて大抵わかるもので、自然と私はその子たちとつるむ中で、夜の孤独に対抗していた。


そんな私を父はわかっていたようだが、口をはさむことはなかった。祖母は心配ばかりしていたが、やはり、私を止める力はなかった。


そんな時期も、高校受験となると自然と消滅し、私は自分の未来を見すえて、遅いながら、猛烈に勉強をした。とりあえず、暗記力が問われていると感じ、私は暗記に集中した。


高校に合格した頃から、私は料理を始め、父親と夕飯を共にすることが増えた。


そんな私の心をしっかり受けとめて、父は私と暮らしていた。


私の心には、ふつうの家庭では得られなかったものより、ふつうじゃないから体験できたことに充足感をもつように変わっていった。


寂しさはおおいにあったが、生活するのが父親で良かったと感じていた。女同士だと、例え実の母親でも、安定感というものが薄くなったのではないか、私はそう考えていた。父親には、男の人特有の落ち着きがあったからだ。










































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