リナ lina【傷跡】
私はマンション内の受付の仕事をしている。
仕事を始めてから、今年の春で7年が過ぎた。私は、高校卒業と同時にこの仕事にアルバイトとして就くことになった。
進学校とはけして言えない私の高校であっても、大学や短大、専門学校へ進学する生徒が大半を占めていた。高卒で正社員として働く人は数人と聞いていた。また、私のようにアルバイトを始める生徒はもっと少なかったように思う。
私は高校に入学した時から、もう勉強はこの3年で終わりにしたいと感じていた。小、中、高、合わせて12年も、じっと座り授業を受けたのだ。
「もう、充分。」
そう強く心に決めていた。
私の両親は、私が小学校に入学した年の秋に離婚している。
原因は、母親の不倫である。
母は私が通う小学校で、自分の幼なじみに再会して、恋に落ちてしまったようだ。
その男性も結婚していて、私と同じ小学校に通う男の子がいたので、相手方も不倫していたことになる。
どうして不倫が発覚したかというと、恋に落ちた二人が夜逃げをしかけ落ちし、行方がわからなくなったからだ。
ある日突然に。
でも、事件にはならなかった。誰も騒ぎ立てる者がいなかった。
あの日から17年、母親はどこへ行ったか今も元気なのか、わからないままになっている。
夜逃げして、数日後に、どこから送られたか、わからない手紙が届いた。母親の字で手紙は書かれており、幼なじみを本当に好きになってしまったこと、離婚したいこと、私の親権は父親にしてほしいことなどが書かれていたようだ。
離婚届けが手紙と一緒に入っていた。
私は母親に見捨てられたと頭をなぐられた思いがした。父親はその時、表に騒ぎたてるということは一切しなかったが、随分、自分の心の内側と闘っている印象を、子どもながらに私は受けた。
私も父も、信じられなかったのだと思う。
夜逃げする前日まで母は、不倫のにおいを家の中でも外でも発することが、一切なかったからだ。
1ヶ月後、正式に父親は母との離婚を済ませた。
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