第15話 幸せ測定器



 Cさんは独自の研究によって「幸せ測定器」なるものを発明した。精神安定を促すセロトニンなどの神経伝達物質の量を、ボタン一発で測ることができる。この幸せ測定器を人間に向けてボタンを押すと、測定器の針が動き文字盤の数字を示し、個人の幸せ度が測定できるのだ。


 Cさんは様々な人間にこの測定器を試して結果を記録していった。そして分かったことは、必ずしも見た目では幸せ度は分からないということだ。人生の伴侶と子供を連れて歩く人が必ずしも幸せ度が高いわけでもない。彷徨うように歩くホームレスが必ずしも幸せ度が低いわけでもない。結局のところその人の幸せ度を決めるのはその人自身の価値観なのだ。


 そこでCさんは自分自身にこの幸せ測定器を試してみることにした。自分自身では自分の幸せ度は高いと思っている。研究も成功してプライベートも充実しているからだ。


 Cさんは幸せ測定器を自分に向けて押してみた。その結果は予想に反して高いものではなかった。


「何故なんだろう?」Cさんにはその理由が全然分からなかった。






♦  ♦  ♦





とある研究所。研究室にはガラスの水槽に入った「脳」そのものがプカプカと浮いて並んでいる。研究材料に利用されているのだ。


「この検体C、セロトニンの量があまり高くないんですよね。強制的に出るように操作してるのに」研究者の一人は上司に話しかける。


「そうだな。なんでなんだろう。もしかしたら今の頭の中が空想の現実であることに気付いているのかもな」









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